記事提供:Entame Plex

“アクションだけは絶対に妥協したくない”

強い眼差しでそう話してくれたのは、現在公開中の映画『東京無国籍少女』で初主演を務めた清野菜名。

これまで『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、『イノセンス』といった世界に名だたる人気アニメ映画を手掛け、

実写でも『THE NEXT GENERATION -パトレイバー-』をはじめ数多くの作品でメガホンをとってきた押井守が監督をつとめる本作では、彼がこれまでに避けてきた凄惨な暴力や性的な描写を解禁。

女子校を舞台に、衝撃的なクライマックスに向けて静かに加速していくソリッドサスペンスとなっている。

押井監督にして「目が凄い。凄い殺気だ」と言わしめた清野がラスト15分で魅せる凄まじいアクションシーンは、観る者の想像を絶するに違いない。

海外でも本作の上演が続々と決定しており、今後さらなる注目の的となるであろう彼女に、初めて主演を務めた心境やアクションの話を中心にいろいろと話を聞いた。

――本作が長編映画初主演、しかも押井監督作品ということで、プレッシャーを感じたのでは?

「最初に監督とお会いした日に台本をいただいたんですが、その台本がかなり薄くて(苦笑)、内容が細かく書いていないプロット(物語の要約、構想)状態だったんです。

『今、台本は短いけど、現場に入って美術や照明などの空気を感じてから、いろいろ増やすと思うからよろしくね』って。

それで、『最終的にはこの映画を1時間25分の映画にしたいんだ。あとは現場で!』って仰られたのが、かなりプレッシャーになってしまって…。今までは、台本を読んでから頭の中でいろいろとイメージしていたんですけど、

それがほとんど出来ないまま撮影に入ったので、“現場でアドリブだったらどうしよう”といった不安はかなりありましたね。

でも、現場に入ってみたら監督が細かく指示してくださったり、わたしが分からないところを理解するまで何度も丁寧に説明してくださって。藍という役に対して、自分もしっかりと理解して撮影に臨めたのがすごくよかったです」

――主演を務めてみての感想は?

「初めての主演が自分の得意分野のアクション作品ということで“アクションだけは絶対に妥協したくない”って、お話をいただいた時から思っていました。ただ、いざ蓋を開けてみたらアクションシーンの練習期間が全部で3日間しかなくて。

最後の1日だけで立ち回りを全て詰め込むっていう、かなり大変な作業だったんですけど、監督に『もし、現場でできなかったらスタントがいるから』って言われて…

でも、それだけは絶対にイヤだったので、ムービーで何度も動きを見返してひとりで練習したり、今回初めてライフル銃を扱うシーンがあったので、モデルガンを家に持って帰ってマガジンチェンジの練習をしたりしました」

――共演したキャスト陣も錚々たる顔ぶれでしたね。

「金子(ノブアキ)さん、りりィさん、本田(博太郎)さんといったベテランの方々の中で、主演だからといって自分が引っ張るのは無理というか、どういう感じかもわからなくて…、とにかく足だけは引っ張りたくなかったです。

アクションのレベルを下げたくないっていう思いもあったので、毎日かなり自分を追い込みました」

――藍を演じる上で、意識したことなどはありましたか?

「今回泊まりがけでの撮影が多かったので、ずっと藍の感情でいたような…。藍のことをいじめる同級生役の女優さんたちとは、現場でほとんど会話しないようにしました。“おはようございます”と“お疲れ様でした”くらいしかしなかったです(笑)。

そのおかげで彼女達にいじめられるシーンでは、本当にいじめられているかのような気持ちになりましたし、結果的によかったです」

――本作では台詞が最小限に削ぎ落とされていましたが、表情のみで感情を表現するのは難しかったですか?

「わたし、ドライアイでまばたきが多いんですけど、『まばたきが多い、画面を通すと違った感情に見えちゃうから、ちょっとまばたき我慢しようか』って指摘されて、

“あっ!まばたきも意識しないといけないんだな”っていうのを学んでからは、意識するようになりました」

――そのほか、押井監督の指示で印象に残っていることはありました?

「撮影中に『藍は独りで生きていくんだよ』っていうことを監督がぽろっと仰ってて。それがとてもヒントになりました。

藍は独りで生きていくくらい芯は強いけど、その反面どこか悲しげで切ない2つの面を持っているってことに気付かされて、演じながらその言葉が頭の中で響いていました。

最後、教室に入って窓を見るシーンがあったんですけど、そこに自分の表情がすごく出ていたなって完成した作品を観て思いましたね」

――ラストの15分ですが、静から動へと振り切り方が予想を遥かに超え衝撃的でした。あの15分は、どのような心境で演じたのでしょうか?

「監督からも園村さん(アクション監督)からも、『とにかく“殺す”っていう気持ちで戦ってほしい』って言われました。その“殺す”っていうワードがあったのでその気持ちだけで臨みました。

発砲銃の音もすごくて、どんどんとテンションが上がって本物の兵士になったような気持ちでした。最後にナイフだけで立ち回るシーンがあるんですが、あそこはなかなかうまく出来なくて…。

足を出す方向を間違うと、そこから全部(動きが)崩れていってしまって。監督からはオッケーを出していただいたんですが、その声のトーンで“きっと監督の中でも最低ラインのオッケーなんだろうな”って気付いて。

本当に最後のアクションシーンだし、“もう一回撮り直したい”と思ったので、監督に直訴してもう一度やらせてもらったんです。

その最後のシーンでは、何も考えていないのに無意識に手と足が出て、自分じゃないみたいな今までにない感覚で“藍と一体化しているな”というのがいちばん感じられた瞬間でした」

――スイス、アメリカ、カナダ、韓国など本作の海外での上映が続々と決定しています。清野さんのアクションシーンがきっと海外でも話題になるんじゃないかと。

「なってほしい!!海外へも、どんどん繋がっていってほしいですね」

――今後もさまざまな作品への出演を控えていますが、撮影に入る前に必ずやっていることはありますか?

「自分が演じるキャラクターに合わせて、持ち物を変えてみたり、髪型を変えたり染めたりしますね。あとは、フットネイルで作品名や自分の役名を入れたり…、気持ちを切り替えることは徹底してますね」

――ということは、演じる役によって聴く音楽も変わったり?

「最近だと、『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』でロックな役を演じたので、THE VAMPSっていうイギリスのバンドの曲をよく聴いていますね。

あとは、マネージャーとカラオケに行くといつも歌ってくれるウルフルズの『バンザイ』が、自分の中ではお気に入りの曲なので、携帯でよく聴いたりしています(笑)」

――カラオケで気分転換や発散することが多い?

「大好きです!カラオケでは、ジャスティン・ビーバーの曲をよく歌っています」

――洋楽好きなんですね。夢である海外進出に向けて英語とかも勉強したり?

「以前は(英会話の)レッスンとか通ったりしていたんですけど最近はなかなか行けなくなったので、時間があるときに携帯のアプリを使って独学で(苦笑)」

――インスタグラムではアクロバットの動画とかアップされたりしていますが、トレーニングはどのような感じでやっているんでしょうか?

「アクロバットは、2~3ヶ月に1回くらいのペースで行ってます。月によって行ける日がバラバラなんですけど、休みと練習日さえ合えば、遊びの延長というか楽しむために行ってます」

――現在20歳と節目の年齢ですが、20歳の1年は何か変化はありました?

「お酒も飲める年齢になって、現場が終わったあととかに共演者の方達が誘ってくれる機会が多くなりました。この1年で、人との繋がりが増えたなというのはものすごく感じますね」

――本作でようやく主演の座に辿り着くまで、様々な苦労があったと思います。清野さん自身、そうした困難をどう乗り越えてきたのでしょうか?

「何度も辞めたいって思いました。何のために自分は東京にいるんだろう…って自問自答していた時期もあったんですけど、『TOKYO TRIBE』(2014年公開の園子温監督作)が自分を変えてくれたことが大きかったです。

どれだけ辞めたいと思っても、それでも諦めずに続けてきたことが、今に繋がっているんじゃないかなと思います」

映画『東京無国籍少女』は、新宿バルト9ほかにて全国公開中!

(C)2015 東映ビデオ

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