「毎日、万引き。多い時で20回~30回。店から店に移動するの。必要なもの、どうでもいいもの、何でも盗むの。何か店から持ち出せば、それでOKなの。1度、服、ジュエリー、化粧品、食品なんかを数万円相当も盗んだわ。万引きすればするほど、快感を得たわ。」

ここに万引き依存症の女性がいる。彼女は小さい頃から母親が万引きするのを見て育った。しかし、両親は共働きで女性はごく普通の収入の家庭で育った。万引きをしなければいけないほど生活に困窮していなかったという。

小さかった自分と妹の目の前で万引きしていた母

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「私と妹はいつも母が万引きするのを見ていたわ。母のしていることが悪いことだとその時はわからなかったほど私達は幼かったの。」

ところがある日、両親で買い物に出た時に、スーパーで母が上等のラム肉を手にした。そして母はいつものように隠そうとしなかった。父も同じだった。二人は万引きする必要がなかったのだ。

「両親は働き者だったわ。万引きは単にリスクを楽しんでいただけなんだと後になってわかったわ。」万引き以外の他のことに関しては、両親は道徳的で、家族団結をいつも言うような人たちだったという。

「でも万引きするっていう両親の一番の欠点は、私に受け継がれたっていうわけ。」

両親が離婚し、万引きはエスカレート

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働き者の両親だったが、喧嘩が絶えなかった。自分の目の前でいつも喧嘩する両親を見ていなければならなかったので、家の中では惨めな生活をした。でも、学校では勉強もできて、人気者で、面白く、常に誰かを笑わせていた。

子供の時からの2重の人生。妹とは年が離れていたために、孤独感を感じた。お小遣いがあまりもらえなかった為に万引きを思いついた。「子供でも当然万引きは犯罪でしょ。でも、母の万引きを日常的に見ていたから、ごく普通のことのように思えたわ。」そして両親が離婚して、万引きがますますエスカレートするようになったという。

万引きするほとんどのものは、必要がないもの

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大学に入り、更に万引きの常習犯になった女性。「でも、万引きしてもほとんどのものは使わないものばかりだったわ。日焼け用スプレーとか。今までに250本も盗んだわ。でも1本も使ってない。全部未使用で家に並べてあるわ。」

カジュアルジュエリーも相当万引きしたという。「なんでするのかわからない。中毒だったから。自分でもこんな依存症、大嫌いなのに止められないの。気分が下がったり、不安に感じたり、誰かと喧嘩をしたら万引きに走ったわ。」

「万引きをしている時には、いいようのない多幸感があるの。でもその一方で、何かから絶ち切られたような気分にもなるわ。その感情は暫く続いて、その後に激しい自己嫌悪が襲ってくるの。」

「境界性パーソナリティ障害」と診断された

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パートナーが浮気をして女性から去った時にも、万引きはエスカレートした。これまでに何千回と万引きした。「今までに捕まったのはたったの3回よ。でも自慢にもならないわ。悪いことをしているのはわかっているし、犯罪を犯しているのは最低よ。」

しかし、ストレスが溜まれば引き金を引くように店に走り、万引きしてしまう。そしたら幾分か気分がマシになる。「パートナーと別れた時も万引きばかりしたわ。」

自分が万引きしていることを知った友人たちはショックを受けた。「私はお酒も飲まないし、薬もしないわ。大学も卒業してるし、ちゃんとした服装もしてる。見た目とやってることが正反対だから、ショックよね。」そんな女性は、境界性パーソナリティ障害と診断された。

境界性パーソナリティ障害(きょうかいせいパーソナリティしょうがい、英: Borderline personality disorder; BPD)は、境界型パーソナリティ障害、情緒不安定パーソナリティ障害(じょうちょうふあんてい-、Emotionally unstable personality disorder)とも呼ばれ、不安定な自己 - 他者のイメージ、感情・思考の制御不全、衝動的な自己破壊行為などを特徴とする障害である。

症状は青年期または成人初期から多く生じ、30代頃には軽減してくる傾向がある。自傷行動、自殺、薬物乱用リスクの高いグループである。治療は精神療法(心理療法)を主とし、薬物療法は補助的に位置づけられ副作用と薬物乱用に注意し慎重に用いられる必要がある。

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医師から診断を受けた女性は、少なくとも、自分の万引き依存症の行動の裏付けがされたことで安心感を得た。

次に捕まれば実刑判決は免れない

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前回の裁判で裁判官に「あともう一度だけチャンスを与える」と言われた女性。今度、万引きで逮捕されれば、刑務所行きは確実だという。それだけは絶対に避けたいと思った女性は、カウンセリングを受けるようになった。

社会福祉スタッフと指導者のもとで、この障がいへの治療を試みている。「初めて万引きを止めようって思えたわ。この依存症はきっと治るって信じたいの。」女性の治療は今も順調に進んでいるそうだ。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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