中学校2年生の山田倫太郎くん。彼は、心臓の左心室と右心室が分かれていない「フォンタン術後症候群(房室交差)」という1万4千人に1人の難病を抱えています。

腸からたんぱくが漏れる合併症もあり、点滴が欠かせない状態ではあるようですが、酸素吸入器を付けて学校にも通っている、明るくておしゃべりが大好きな男の子です。

こどもたちの検査への不安を軽減させる絵本を作成

出典 http://iryou.chunichi.co.jp

倫太郎くんは、心臓の病気で長く入院してきた自身の体験を絵本にしています。

これは、「小さな子たちが心臓カテーテル検査に感じる恐怖を軽くできれば」と制作した『リンリンマン カテーテルってなんだのまき』。

足の血管から心臓へカテーテルを通す検査の手順をQ&A形式で解説する。アンパンマンに似た主人公は、倫太郎君と同じく酸素吸入器の鼻チューブを着けている。絵本の主人公は鼻チューブを着けている。

この検査は、小児科では全身麻酔で行われるが、終わってしばらくは出血を防ぐため、体を固定される。10回以上受けている倫太郎君も「ガリバー旅行記で小人に縛られるガリバーになったような気分」という。

5月に入院した際、検査後の幼児の泣き声を聞いた。検査の意味を理解すれば、不安が和らぐのではと絵本を思い立った。

出典 http://iryou.chunichi.co.jp

倫太郎くんが作成したこの絵本は、長野県立こども病院(同県安曇野市)の病棟に実際に置かれているそうです。小さい子たちへの彼のやさしさが生んだこの作品は、検査で不安にかられるこどもたちの強い味方になっていることでしょう。

彼は小学校入学前からこのような絵本などの創作に意欲を燃やしてきたようで、長い病院生活の中で感じた様々なことを、文章にしたりイラストにして伝えることで、また別の病気で苦しんでいる子達に勇気を与えているのです。

「自分の命を大切にして下さい。他の人の命も大切にする事が出来ます」

出典 https://books.google.co.jp

これは倫太郎くんが中学1年生のときに、「命の尊さ」について書いた作文です。内容を以下に書き起こします。

皆さんは命の尊さについて考えた事がありますか?

命はとても尊い物です。しかし最近、自殺のニュースをよく耳にします。僕はその度に怒っています。僕がこんな命の尊さについて考える理由は、四つあります。

第一に、僕は半分死んだ状態で生まれて来ました。けれど、主治医の安河内先生をはじめ、多くの人々に支えられて今まで生きる事が出来たからです。

例を挙げると、二才の頃、家で心肺停止状態になりました。

近くに居た母は人工呼吸、祖父は心臓マッサージ、祖母は救急車を呼んでくれました。救急車が来た時に、僕は息を吹き返しました。その後は近くの病院に運ばれて蘇生してもらい、子ども病院に運ばれ、元気になりました。小さい頃の事なので、はっきり覚えていないけど、家族はこの事を話す度に「大変だった」と言います。それほど人に支えられているのです。

第二に、僕も生きる為に頑張って来たからです。手術、リハビリ、水分制限、体重のコントロール等です。水分飲んでいい量が1リットル未満だった時もありました。その時は、氷や果物を食べて喉を潤していました。小さい頃は飲めないのが辛かったです。飲んで良い量が増えた時の喜びを今でも覚えています。

第三に、小学一年の冬に入院した時に、病棟の子が亡くなり、その時のその子の母親の声がとても悲しそうだったからです。

真夜中に急に遠くの病室からその子の母親の「もう少しでお父さんが来るからしっかりして」と言う声がしました。けれど、お父さんが来る前にその子は亡くなってしまいました。僕は、その後退院しましたが、今でもその出来事を覚えています。このように、自分が死ぬと、家族や周りの人が悲しみます。

第四に、母親が弟を身籠っている時、母親がとても大変だったからです。お腹が大きいので、靴下を履く事、ボタンを買う事が自分で出来ませんでした。僕は、母親に靴下を履かせてあげたり、ボタンを買ってあげたりとお手伝いをしました。母親のお手伝いを通して、僕を身籠っている時も、こんなに苦しいのに、これに耐えてくれたんだと思い、命を大切にしなければいけないんだと感じました。

皆さんのお母さんも、10ヶ月間こんなに苦しい思いをしても、皆さんに会いたいと思う一心で頑張ってくれたのです。そして、生まれてからも多くの人々に支えられて、今の自分があるのです。

けれど中には、「自分の命だから、自殺なんて自分の勝手」と考える人もいるでしょう。しかし、人間は一人一人が互いに支え合って生きています。自殺は周りの人を悲しませるのでいけません。以上の事から、自分の命を大切にして下さい。他の人の命も大切にする事が出来ます。

出典 https://books.google.co.jp

自分の体験をもとに皆に問う命の尊さ…。

「皆さんのお母さんも、10ヶ月間こんなに苦しい思いをしても、皆さんに会いたいと思う一心で頑張ってくれたのです。そして、生まれてからも多くの人々に支えられて、今の自分があるのです。自分の命を大切にして下さい。他の人の命も大切にする事が出来ます

日々の生活で忘れてしまっていた大切なことに気づかされたような気がしました。

倫太郎くんの「理想の医者」8カ条

出典 http://ameblo.jp

倫太郎くんには10歳ほど年の離れた恵次郎くんというがいます。

恵次郎くんが4歳になったある日、「医者になってお兄ちゃんを治す」と言い出したそうです。それを聞いた倫太郎くんは、将来医者になるであろう弟や、将来医療を志すであろう若者たちに向けて8カ条からなる『理想の医者』を綴りました。

① 患者さんの家族、趣味など、患者さんの生活全体を見て接しよう

② 患者さんは、誰もが自分の受ける治療や検査などに、不安を抱いている。しっかり、分かりやすく説明してあげよう

③ 患者さんは、いつ苦しみだすか分からない。大事なのは、その時に、君が患者さんのために、とっさに体を動かせるかだ

④ 入院している患者さんにも、自分の生活がある。検査や治療は出来る限り患者さんの生活に合わせてやるべきだ

⑤ 入院している患者さんにとって、ベッドは我が家のようなものだ。採血や問診に行く時は、人の家に行くような感じで行こう

⑥ 患者や患者の家族は、手術や検査の結果を心待ちにしている。終わったらすぐに知らせてあげよう

⑦ 患者さんとの関係は、治療が終わればおしまいという訳ではない

⑧ 医師はどんな状況でも諦めてはならない。思わぬ治療法があるかもしれないし、悪い状態は一時的なものかもしれないからだ。医師が絶望的と思っても、患者さんや家族にとっては違うかもしれない

出典 http://ameblo.jp

これら8カ条は全て、倫太郎くんが入院生活で自らが感じた事。

例えば、④の「検査や治療は出来る限り患者さんの生活に合わせてやるべきだ」については、「H先生にエコー検査に呼ばれた。だが、その時H先生は『もうすぐお昼ごはんだね。メニューはうどんだし、のびると美味(おい)しくないから倫ちゃんがうどんを食べ終えたらエコーをするよ』と言ってくれた」ことから生まれた一つだそうです。

出典 http://www.amazon.co.jp

倫太郎くんの観察力と洞察力に裏付けされた、説得力のある言葉の数々…。患者の目線から考えられたこの8カ条は、全ての医者が志すべき「理想の姿」だと思いました。

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