記事提供:子ある日和

次男が生まれた時、早生まれの長男はまだ2才になっていなかった。

おむつも取れていないし、買い物に行くときはまだベビーカー。住んでいた団地は、エレベーター無しの3階。

こちらの都合で、どんなに小さくても「もうお兄ちゃんなんだから」が口癖になってしまった。

夜は長男と次男に挟まれて川の字で横になる。夜中も次男がぐずればおっぱい。

立ち上がってミルクを作りに行くよりは楽だ、と思ってはいてもやっぱり夜中に起こされるのは辛い。

そんなある冬の夜、私が次男の方を向いておっぱいをあげていると、後ろから長男が眠そうな声で言った。

「おかあさん、おふとん…」

ついむっとして、

「自分でかけなさい」

と言った。

「もうお兄ちゃんなんだから」

自分のことは自分で、というつもりで。

すると、小さな手がそっと私の肩に置かれた。いつの間にかずり落ちていた掛け布団と一緒に。

そして、耳元で長男の声がした。

「はい、どーじょ」

じわっとした。

私ったら、長男が甘えて、自分に布団を掛けてくれ、とねだったのだと思っていた。次男におっぱいをあげているのを知って、やきもちをやいて。

でも、長男は私に布団がかかっていないことに気が付いてそう言ったのだった。

まだ春には遠い、しんしんと寒い冬の夜。

「お母さん、おふとんかかってないよ。寒いよ。大丈夫?」

3才そこそこの子が、そんなふうに私のことを気遣ってくれていたのだった。

「ありがとう」

そう言いながら、本当は抱きしめてあげたかったけど、次男は私のおっぱいにかじりついて放さない。

ごめんね。

いつも、甘えたいのに我慢させているね。そしていつも、一生懸命我慢して、がんばってくれているね。

「もうお兄ちゃんなんだから」

なんて、言われなくてもあなたがいちばんわかっていて、がんばってがんばって、そうなろうとしているんだね。

公園で遊んで買い物して帰ってきて、疲れて眠くて団地の階段をもう上れない長男は泣きながらだっこをせがんだけれど、私は両手に重い荷物、背中に次男をおぶって「自分で上ってきて!」と言うしかなかった。

くたくたになって家の鍵を開け、次男をベビーベッドにおろしても、長男は帰ってこない。

窓の外を見ると、階段に座ったまま。どうせまたぐずぐずごねてるんだ、と思って頭にきて放って置いたら、本当にいつまでたっても帰ってこない。

これはおかしい、と思って下まで見に行ってみたら、コンクリートの階段に座ったままぐっすり眠っていたこともあったっけ。

手が4本あればいいのに。

体が二つあればいいのに。

何度もそう思った。

子供にとっては、自分だけのお母さんが欲しい。私だって、長男と次男に一人ずつの、お母さんでいたい。

それでいて、夫と二人だけの時間も、自分一人の時間も欲しい。

ないものねだりをしながら、どうにかこうにか寄り添って日々を過ごしていく。

みんな、少しずつ我慢しながら、一生懸命がんばってる。

「おかあさん、おふとん…」のあの一言を思い出すだけで、おかあさんは、何があっても頑張れる。

大好きな、息子たちのために。

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