日本でドラマでも話題の“エイジハラスメント”。今ではたくさんの“ハラスメント”という言葉がありすぎて、また略称になっていることが多く、イタリア在11年の筆者は日本社会に存在するハラスメントについてついていけてないところがありますが…。

しかし、この“エイジハラスメント”は日本独特のハラスメントような部分があるのではないかと海外在住者として思うのです。今回はその日本のエイジハラスメントについて、イタリアに住む30代半ばの筆者から見たことを書きたいと思います。

日本では20代後半でもうおばさん!?若くないと女性ではないのか?

会社で起こる年齢による差別、エイジハラスメント。特に女性に起こる場合が多いようですね。経験や実力が評価されず、若くて綺麗なことが評価される…「そんな馬鹿な…」と思ってしまいそうですが、確かに、日本では女性に対してそういった考えを持っている人が多いような気もします。

驚きなのは20代後半の女性でさえ“おばさん”の部類に日本では入ってしまっていることです。そして、さらに驚きなのはその評価は日本人男性のだけの評価ではなく、日本人女性の評価でもあるということです。

イタリアでも確かに20代前半の綺麗な女性はちやほやされます。しかし、だからといってイタリア人男性が20代後半以上の女性を女性として見ないかというとそうではありません。イタリアでは20代でも30代でも、40代でも…ずっと女性は女性として見られています。「○○歳を過ぎたら女じゃない。」なんて言葉、イタリアでは聞いたことがありません。

20代前半からイタリアに住み始めた筆者。11年経った今、日本社会ではもう“いい年”ですし、“おばさん”ですが、イタリアでは“いい年”とも“おばさん”と言われたことも、感じたことはありません。それはイタリア社会が30代の女性でも年を感じさせない環境にあるからではないでしょうか。

日本では30代女性は“いい年”?イタリアでは30代女性は“まだ若い”

30代半ばの筆者が日本に里帰りしたときによく耳にするのは「もういい年なんだから」という言葉。筆者自身に対しても、他の人に対してもよく耳にする言葉です。その言葉は30歳以上の人に言われることが多いように思います。

確かに、日本では30歳と言えば新卒で就職していれば社会人経験も7年ほど。経済的にも少し余裕が出てきて、結婚や子供を持つことを男性も女性も当たり前と考え始める(日本社会に考えられ始める)頃なのかもしれませんね。30歳になる頃には仕事もそれなりにこなし、結婚して家族を持っている…というのが多くの日本人の理想ではないでしょうか。

日本人は責任感が強く、社会的責任も、新しい家族を築くという責任も早い段階(20代)で持ち始めるような気がします。筆者はそれは日本人の美徳だと思います。

しかし、そのことが、30代以上の日本人の可能性を狭めてはいないでしょうか?
「30代になってからではもう遅い。」
「もう“いい年”なんだから、そんなことは言ってられない。」
と思っている30代は多くありませんか?


イタリアでは大学卒業が日本より遅いのが普通です。(大学のシステム上、よっぽど優秀で無い限り22-23歳で大学卒業というのは難しく、20代半ばから後半に大学を卒業し社会人になる人がほとんどです。)よって、社会人になる年齢も遅く、30歳はまだ若い!いろいろなことにチャレンジできる!という考えが強いです。

何も30代に限らず、40代でも、50代でも、いいアイディアがあればそのときがチャンスと思っているイタリア人が多いように思います。要は、イタリア人もイタリア社会も日本ほど年齢を気にしていないのだと思います。

暗黙の年齢制限のある日本社会

「あの年で生足はムリ。」「あの年であの化粧はイタイ。」「あの年で独身はヤバイ。」など…服や化粧、生活にまで日本では女性に対する暗黙の年齢制限がたくさんあるように思います。しかもその年齢制限の上限がかなり低い。

でも、それらのことは本当に無理なことなんでしょうか?痛いことなんでしょうか?ヤバイことなんでしょうか?

「大きなお世話」というのではないでしょうか?

確かに、TPOに合った装いをするのは大切だと思いますが、自分の好きな格好をして、しかもそれが似合っているなら、いいのではないでしょうか?仕事だって趣味だって、他人に迷惑をかけない範囲でやっている分には何がいけないのでしょうか?

「いい年だから諦める。」「いい年だからこれはしない。」そうやってチャンスを逃している日本人は多いのではないかと思います。

日本とイタリアの間にある年齢の価値の差

日本では文化的に社会的に年齢が大変尊重されます。生まれた年が1年違うだけで差が生まれるのです。そのため、日本人は年齢に対して大変敏感な国民だと言えるでしょう。ところが、イタリア人はそれほど年齢にこだわりません。最初のうちは年上の人に対して敬語で話していても、慣れてくれば敬語を使わなくなり、年齢差があっても対等な立場での付き合いを築くのが普通です。

イタリアでも若さはもちろん評価の一つですが、日本のように10代半ばのアイドルたちに大人の男性たちが夢中になるということはありません。イタリアに限らず、欧米諸国では未成年に対して恋愛感情やセクシャル的な感情を抱くことは社会のタブーであり“異常なこと”という観念が強いからだというのも一つの理由かと思われます。

“寿退社”という言葉もイタリアでは聞いたことがありません。夫婦共働きが一般的なイタリア。結婚後も仕事を続けるのが普通です。また、「産休・育休を取りにくい」という声もほとんど聞きません。なぜなら産休も育休も取ることが当たり前であり、産休明け、育休明けにはもちろん元の仕事に戻れます。それが社会にとって“当然のこと”だからです。そうなると30歳を超えた女性社員というのは必然と多くなってきます。

イタリアでテレビニュースを見ていても、日本のようなお天気お姉さんや女子アナはほとんどいません。30~40代だろうと思われる女性キャスターが沢山います。ニュースを読むにはある程度経験を積み、貫禄があるほうがいいということでしょうか。

だからでしょうか、イタリアで“エイジハラスメント”ということを聞いたことがありません。実際にイタリア社会では日本社会ほどエイジハラスメントがないように思います。

“ハラスメント”という言葉が横行する社会もどうしたものか

初めにも書きましたが、イタリア在11年の筆者。ネットで見かける日本の“○○ハラスメント”という言葉、種類が多すぎて、しかも略称が多いので、全くついていけません。

ハラスメントというのはする人、される人によって捉え方が変わってくるので、大変デリケートで難しい問題です。

しかし、“ハラスメント”という言葉が日本社会を窮屈にしていると思う部分も確かにあると思います。人間関係にトラブルはつき物。でも、そのトラブルを恐れて当たらず触らずの付き合いでは本当の人間関係を築くこともできません。

今回、筆者が“エイジハラスメント”に関して書いてみたのは、ハラスメントの中でも特に日本的なハラスメントだと思ったからです。

20代前半を日本で過ごし、その後すぐにイタリアに渡った筆者は日本でエイジハラスメントを受けたことがありません。そして、イタリアで年を重ね、30代半ばになりましたが、この国で自分の年齢をそれほど気にしたことも、気になったこともありません。それが、日本に帰国したときには「自分は若くない」「いい年なんだ」と感じさせられるのです。私が日本に帰国するのは2週間、長くても1ヶ月という短い期間ですが、日本に住む筆者と同世代の人たちは化粧、服、態度、生活環境にまで毎日の生活で年齢制限を受け、他人の目を気にしてずっと我慢しないといけないのだなと思うと、自分の母国でありながら、大変窮屈に感じるのです。

筆者はイタリア在のため、記事の内容もイタリアと日本の比較になり、「イタリアは」「イタリアが」と書いてしまいましたが、イタリアでなくとも他の欧米諸国はイタリアと似たような価値観だと思われます。また、決してイタリア社会が日本社会より優れているということをこの記事で言いたいわけではありません。イタリア社会と日本社会の年齢に関する価値観を対比することによって、特に日本社会では年齢によって女性が制限を受けていると思ういうことを書きたかったのです。

筆者の個人的意見としては、日本社会のエイジハラスメントは無意味で、非生産的だと思います。

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2004年よりイタリアはフィレンツェに住んでいます。
イタリア人の夫と黒猫1匹との生活。
日本語講師としてイタリア人に日本語を教えています。
魅力的なイタリア、不思議なイタリア、海外から見た魅力的な日本、不思議な日本を中心にお伝えしていきます。

普段のイタリア生活についてはアメブロに書いています。
http://ameblo.jp/firenzefungo/

トスカーナ、フィレンツェ観光に関してFirenze in Tascaというトスカーナ、フィレンツェ個人旅行サポート会社のサイトにて記事を執筆中。
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