イタリアに住むこと11年の筆者。私に子供はいませんが、イタリアに住んでいて感じるのは、イタリア人が子供にとても優しいこと、寛容なことです。

生まれたばかりの子供のいる友達とベビーカーを押しながらお店に入ると、お店の人、店内にいたお客さんまでもが「かわいいわねー!」「今、何ヶ月なの?」「いい子だな~!ご褒美にこれをあげるよ!」などと、親や子供に声をかけてきます。

レストランなどでも、子供が自分の親のテーブルを離れて、他の人のテーブルに行ってしまったとしても…「チャオ!お名前は?」「いくつなの?」「お父さんとお母さんは?」と嫌な顔一つせず、子供にやさしく話しかけるイタリア人がほとんどです。

もちろん、他人に迷惑をかけたりする行為は子供といえど許される場合と許されない場合がありますが、ここイタリアでは日本ほど子供に対して厳しくなく、公共の場に子供がいることが当たり前、子供がいることでその場が和むというような風潮が強いように思います。

日本では近年、“妊婦様”“子連れ様”といった言葉が生まれましたが、正直、イタリアでは考えられないことです。イタリアでは何も言わなくても妊婦さんには席を譲る人がほとんどです。小さな子供をベビーカーに乗せて移動中でも、階段や段差があるところは通りがかりの人が率先して手伝ってくれるくらいです。



イタリア屈指の小児病院Meyer移転の日

そんな子供に優しいイタリア人を象徴するようなエピソードがあります。これは少し前の話になるのですが…私が感動したイタリアはフィレンツェで起こった小児病院の移転についてお話したいと思います。

フィレンツェにイタリア屈指の小児病院Meyerがあります。この病院にはフィレンツェやその近郊だけでなく、イタリア中から病気と闘うために多くの子供たちやその親たちがやって来ます。

そのMeyerが2007年12月、それまでの施設から新しく建設された施設へと移転することになったのです。

病院の移転となるとそう簡単なことではありません。そこで治療を受けている入院中の子供たちを安全に新しい施設へと移動させなければなりません。

ここはイタリア。何かを計画したとしても、なかなか計画通りに行かないお国柄。しかし、今回のMeyerの移転は小さな子供たちの命がかかっています。計画通りに行かないことは許されませんし、失敗も許されません。


Meyerに入院中の子供たちを新しい施設に移動させる日のことを私は今でも鮮明に覚えています。寒い寒い日でした。

入院中の子供たちの移動は、交通量の少ない夜に行われました。旧施設から新施設までの搬送ルートの交通や駐車は規制され、入院中の子供たちは救急車で順に新施設に運ばれたのでした。

当時私たち夫婦が住んでいたアパルタメントの前の道もその搬送ルートになっていました。交差点のところには2人の交通課の警察官が寒い中救急車が通って行くのを見守っていました。時々、誰かが下に下りて、寒空の下立っている警察官たちに温かいコーヒーを差し入れしたりしていました。また、私たち夫婦も近所の人たちも、誰が言い出したわけでもなく、みんな警察官たちに「もし、トイレや温かい飲み物が必要だったら、遠慮なくインターホンを押してください。夜中でもかまいませんから。本当にお疲れ様。」と、声をかけたのでした。

普段、日常に何かしらの変化があると何かと文句を言うフィレンツェの住人たち。でも、小さい体で一生懸命病気と闘っている子供たちのためならと、このときは市民全体が積極的に協力していました。誰もがMeyerで病気と戦っている子供たちの無事と安全を願っていた夜だったと思います。


翌朝、フィレンツェのテレビニュースでは、フィレンツェ市民の協力のもと、滞りなく
Meyerの移転が完了したというニュースが流れました。


子供を大切にする社会

イタリアも日本に続く少子化問題を抱える国ではあります。しかし、日本の子供を取り巻く社会とイタリアの子供を取り巻く社会は私から見て大きく違うように思います。

イタリアでは子供を見て迷惑だと思うよりも、子供を見てかわいい、愛おしいと思う人のほうが多いように思います。たとえ、他人の子供でも。だから、子供がいる環境というのはイタリア人にとって自然なことであり、子供は決して迷惑な存在ではないのではないでしょうか。

日本人の私からすると「ちょっと甘やかしすぎでは?」とイタリア人の親を見て思うことも多々あります。しかし、日本に帰国したときに、子供たちがしたいこともしないで、大人の顔色を伺っているのを見たとき、“いい子”でいようとする子供を見たとき、それもなんだか異様に感じたのです。

他人に迷惑をかけてはいけないこと、我慢することを子供に教えるのは大切なことだと思います。でも、社会が子供の存在自体を迷惑だと思ってしまっては、子供も親もかわいそうではないでしょうか。

子供を大切にする社会というのはすばらしいと思いますし、そうした大人たちを見ているとこちらも心が和みます。

日本社会も、もう少し子供に寛容になればいいのに…と思ってしまいます。



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2004年よりイタリアはフィレンツェに住んでいます。
イタリア人の夫と黒猫1匹との生活。
日本語講師としてイタリア人に日本語を教えています。
魅力的なイタリア、不思議なイタリア、海外から見た魅力的な日本、不思議な日本を中心にお伝えしていきます。

普段のイタリア生活についてはアメブロに書いています。
http://ameblo.jp/firenzefungo/

トスカーナ、フィレンツェ観光に関してFirenze in Tascaというトスカーナ、フィレンツェ個人旅行サポート会社のサイトにて記事を執筆中。
http://firenzeintasca.com/

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