日本の薬局では今は「おくすり手帳」なる便利なものもあり、しかも、薬を渡してもらう時にはちゃんと薬の詳細が書かれた紙を印刷してもらうので、受け取る方もまた渡す方も確認に確認の上の作業となる為、恐らく誰かの薬と間違えて渡してしまう、ということはないだろう。

しかしイギリスはそんなに細かい国ではない。処方箋を薬局に渡し、確認のないまま患者に渡されるのである。ちょっと前までは必ず住所を患者に聞いて、袋に貼られた印刷してある住所と照らし合わせの確認作業があったが、今では名前を呼んで渡すだけだ。

もちろん日本のように患者の前で薬の説明もない。今回、そういうイギリスの適当さがまさに表に出た事件が起こった。

毎月1回処方箋を受け取りに

出典 http://www.dailymail.co.uk

ケント州のドーバーに住むアデ―ル・リッジウェイ(25歳)は、5カ月になる息子が逆流性食道炎を患っているために、月に一度、GP(クリニック)から飲み薬を処方してもらうようにしている。

逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)とは、胃酸や十二指腸液が、食道に逆流することで、食道の粘膜を刺激し粘膜にびらん・炎症を引きおこす疾患名。

出典 https://ja.wikipedia.org

いつものようにローカルの薬局で処方箋を渡した。そして薬をもらい家に帰り袋を開けたら、大きな瓶が。

「いつもより量が多いなって思ったんです。あれ?余分にくれたのかな?って。でもラベルを見てみたらメサドンって書いてあったので驚愕しました。」

メサドンとはいったいどんな薬か?

出典 http://www.dailymail.co.uk

メサドンとは、主にヘロイン常習者の治療の代用として用いられる薬である。ヘロインを絶つために、中毒患者にはこのメサドンが処方されることが多いが、メサドン自体も依存症を招く危険があると言われている。

メタドンまたはメサドン (methadone) はの合成鎮痛薬である。メタドンは代謝されるのが遅く非常に高い脂溶性を持つため、モルヒネ系の薬剤よりも持続時間が長い。ヘロインの解毒や維持療法の際は1日に1度のみの投与で済む。

適正な使用量においては、ヘロインへの欲求を減少させる効果がある。しかしながら、ヘロイン中毒者の中には、ヘロインよりもメタドンから抜け出すことのほうが難しいと感じる者もいる。メタドン維持療法では投薬によって症状が快方に向かうとは限らないため、投与は定期的に行われないように計画される。

日本では未販売である。

出典 https://ja.wikipedia.org

このようないわばヘロインの代用薬として危険な薬を、5ケ月の子供の薬と間違えて差し出すことに恐怖と怒りを感じたアデ―ルは、薬局に電話をした。すると薬局側は低姿勢で謝り「すぐに持ってきてください。」と言ったがアデ―ルは断った。

「父に相談したら、とにかく中身を捨てなさいって言われて捨てたの。小さい子供がいるし、そんな危ない代用薬すぐに処理した方がいいと思って。空っぽの瓶だけになったけど、この件は医薬品学会に報告しますって薬局に伝えたわ。」

「もし、私がラベルを確認しなかったら…」

出典 http://www.theguardian.com

この出来事を、子育てしている親たちに知ってもらった方がいいと判断したアデ―ル。「多分ほとんどの親は薬のラベルを自分で確認するだろうけど、今度から絶対そうしなきゃいけないってことがこれでわかったわ。」

「もし、私がいつもの薬だと思って確認せずに息子にあげていたらと考えたら恐怖だわ。」今まで同じ薬局を利用しているが、こんなミスはなかったという。

医薬品学会に苦情を申し立てたアデ―ルに「調査を行う」とコメントしたようだが、単に薬局のスタッフの確認ミスと思われる。

「稀なミス」でもミスはミス

出典 http://www.siskiyouhealthcenter.com

薬局側は今回のミスを「非常に稀なミス」とコメントしたが、それは十分注意しなければならないことだ。薬は患者の口に入るものであるために、やはり日本のように薬の内容をカウンター越しに確認することが大切ではないだろうか。

イギリスでは、薬物中毒の患者が定期的に処方箋を受け取りに薬局に来る。たまたまその日もそうであったのだろうと想像できる。

筆者ならレベルを見て薬局のミスだとわかれば、薬をそのまま捨てずに返すだろう。しかしアデ―ルは、薬の内容を知り恐怖のためにとにかくこの場から除去しなければという気持ちでいっぱいになり、捨ててしまった。

医薬品学会に報告した後、空のボトルを返しに行ったアデ―ル。薬局側から「空の瓶なので健康に害はありません。」と断言されたらしいが、「中身は最初から入ってない」などと言われたらややこしいことになるので、やはり手をつけずにそのまま返すべきだったと思う。

いずれにせよ大事なことは、イギリスに住んでいればこういうことは起こり得るので必ず薬のレベルの確認をしなければならないということだ。そして日本ででも、カウンター越しで説明を受ける時に、しっかりプリントと薬を照らし合わせて確認することが大切ということだ。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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