記事提供:子ある日和

「ねえ、おかあさん」

三人兄妹のいちばん上の長男がある日言った。

「ぼくと、ゆうま(弟)とななえ(妹)と、誰がいちばん好き?ぼくだよね」

そうだよ、と言って欲しいんだろうな。と思ったけれど、そこは親としてゆずれない。

「誰がいちばんなんて決められないよ。お母さんにとってはみんな同じ、大好きだよ」

「同じなの?ぼくも、ゆうまも、ななえも、同じなの?ぜんぜんちがうじゃない」

不満そうに長男は言い募る。どう答えたらいいのだろう。どう答えれば、納得してくれるのだろう。一人一人ぜんぜん違うってことは、お母さんがいちばんよくわかってるよ。でも、そのちがうとお母さんの言う同じは、違うんだよ…。

ああ、ややこしい。

「ぜったい、同じじゃないでしょう。だれがいちばん好きって、お母さん本当はあるでしょう?」

どんどん食い下がりながら、長男の顔は少し不安そうだ。自分から聞いておいて、もしお母さんのいちばんが自分じゃなかったら…と思って、心配になってきたに違いない。

さあ、困った。これは、子供にも納得できる、わかりやすい答えを出さなくては。

私は夕食の下ごしらえをしながら頭を巡らせた。そして、ピンとひらめいた。

「ねえ、あすかは、ギョーザ好き?」

「うん、大好き!」

長男は目を輝かせた。我が家のギョーザは、いろいろなくず野菜を細かく切って仕込んだ入ったあんを、皮がはじけそうにたっぷり入れて包むから、家族にも好評だ。何より、私自身の大好物でもある。

「お母さんも、食べ物の中でいちばんギョーザが好き。でさ、あすかはお皿の上のギョーザのどれがいちばん好き?って聞かれたらどうする?」

長男はちょっと不満そうに首を傾げて私を見た。

「どれって、どれも同じ味じゃん」

そう、正解。

「でしょ?だから、お母さんにとってあすかもゆうまもななえも、いちばん好きなギョーザのどれがいちばんって決められないのと同じなの」

「う~ん…」

長男は神妙な顔をした。そして、言った。

「ぼくたちって、ギョーザと一緒なの?」

思わず私は吹き出した。我ながらうまいたとえだと思ったけど、それはそれでショックだよね。

私は二人兄妹の下なので、長男のようにある日新しい家族が増えて両親や祖父母の関心がそっちに言ってしまう、という経験をしたことがない。

だから、長男の不安や不満がわかっているようでやっぱりわかっていない。自分だけに向けられていた目が、ある日別の誰かに行ってしまう、という気持ちを…。

そして、兄妹みんな同じだけ好き、と言いながら、その時その時で、人間だからどうしても差は出てくる。

今はものすごく末っ子の長女がかわいい。

今は長男が心配でたまらない。

今は、次男といつまでもゆっくりしていたい気分…。

きっと長男は、私の心の内側を見抜いているのだろう。だから、時々不安になって、確かめたくなる。

「ねえ、ぼくがいちばんだよね?」

我が家のギョーザたちは、今やすっかり食えない生意気盛りになり、見た目も性格も好みも全く違うけれど、やっぱりいくつ食べても飽きることのない、私の大好物のギョーザなのである。

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