「もし誰かが、将来どんな生活をしたい?って聞いてきたら、40代半ばまでは、素敵なカントリーサイドのコテージで、人生について考えを巡らせたり、ソファに座って雑誌をのんびりと見たりしたいわね、って答えたわね。」

満員の通勤電車、ビルやお店ばかりが並ぶ通り、仕事に明け暮れ疲れる毎日を都会で過ごす人々にとっては、自然が広がるカントリーサイド暮らしに憧れることだってあるだろう。サラとデイヴィッドも例外ではなかった。

イギリスのブリストルに住んでいたサラ・ルイス(53歳)は、夫ディヴィッド(40歳)と子供二人と共に、多忙な都会生活からのんびりしたカントリーサイド暮らしへと「夢のような生活」を現実にする為、2007年、カンブリアのカーライルという田舎町に引っ越した。

現在は3人の子供のシングルマザー

出典 http://www.dailymail.co.uk

愛する家族と共にカントリーサイドへ引っ越しーそれは理想的で完璧な生活に思えた。カーライルに引っ越したのはサラが45歳の時だった。

しかし、完璧だと思った田舎暮らしは徐々にサラから全てを奪っていったのである。今、サラは3人の子供のシングルマザーだ。「家の窓から見る景色は最高なんだけど、時間を巻き戻せたら、って思ってしまうの。」そう語るサラ。

いったい、サラに何があったのか。

サラは、ロンドンから北西に位置するハートフォードシャー州のワトフォードという街に住んでいた。2002年、そこで夫となるディヴィッドと出会った。一緒に暮らし始めて二人は幸せな生活をしていた。2年後の2004年に息子のアレックスも生まれた。

「42歳で妊娠で高齢出産だったけど、産むことを決めていたから嬉しかった。」その後、家族はサラの両親が住んでいるブリストルに引っ越した。

両親の近くに住むことで、両親も孫の顔が見やすくなるし、またサラにとっても両親が孫の面倒を見てくれることで、仕事に復帰しやすくなった。サラはアレックスを出産して5カ月後に職場復帰した。

職場でもママ友として多くの友達がいた

出典 http://www.levo.com

サラは職場でのキャリアがあった。また、サラ自身もキャリアは大切だと思っていた。だから母が少なくとも週に一度訪ねてきてくれて、子供の面倒を見てくれることが非常に有難かった。

周りにはサラと同じように子育て中のママもいた。「子供のトイレトレーニングが上手くいかないの。」そういう愚痴でさえ、ワインを飲みながら一緒に吐き出した。

2004年8月に、サラはディヴィッドと結婚した。そして翌年、娘のイザベラが誕生した。二人の育児に、仕事に、家事にと忙しかったが、サラは充実していた。

そんな時、夫のディヴィッドが「都会での生活はうんざりだ」と言ってきたのである。

「どうして!?あなたもここで幸せだったんじゃないの?」

出典 http://www.utahaddictioncenters.com

「どこか静かなカントリーサイドに引っ越したい。」サラはそう言いだした夫が理解できなかった。

ブリストルでの社交生活も充実していた。たくさんの友人たちのホームパーティーにも子供連れで行った。また、サラもホームパーティーをすることが好きだったので、よく友人達を呼んで楽しく過ごしていた。

そして近くに住む両親のサポートがあったからこそ、サラは仕事に復帰できたし、以前と変わらずに友達付き合いもできていたのだ。

更に、サラとディヴィッドにはトライアスロンという趣味があった。これも、時々子供を預かってくれる両親やベビーシッターがいたからこそ、できたことだった。

しかし、次第にサラも疲れるように

出典 http://careerintuitive.info

高齢出産で、職場復帰。43歳で幼児二人を抱えるサラが疲れるのも無理はなかった。娘のイザベラは、あまりよく寝てくれる子供ではなかった。だからサラも睡眠不足になった。そして職場までの短いとはいえない通勤距離。

ブリストルに引っ越したので、サラは前に住んでいたワトフォードの職場までなんと2時間もかけて通っていたのだ。

最初こそ、夫の「田舎暮らし願望」が理解できなかったサラだが、彼女自身も、ブリストルでの生活に次第にストレスを感じていった。そして「やっぱり私たちには田舎暮らしが合ってるのかも。」と考えるようになったのだ。

サラの実家はブリストル。夫の実家はスコットランドのアバディーンにある。双方の実家から遠く離れたカンブリアでの生活をすると決心した。「自然の美しい湖水地方で第二の人生を家族で築いていくのだ。」そう思うようにした。

しかし、そのことを母に話すと当然悲しんだ。娘と離れるだけでなく、可愛い孫にも頻繁に会えなくなってしまうのだ。そしてサラの友人たちはショックを受けた。

仲のいい友達何人かは、こう言った。「それはディヴィッドが望んでることであって、貴方の本心はどうなの!?本当に本当にそんな田舎暮らしがしたいの!?」

それでも、もう決めたのだ。サラはそう思った。そして、ブリストルのアパートを売るのに2年かかり、2007年に家族はカンブリアのカーライルという小さなカントリーサイドの町に引っ越した。

カーライルでの理想的な家を購入

出典 http://www.dailymail.co.uk

狭かったブリストルのアパートから4ベッドルームの一軒家を購入することができた。夫は税理士だったために、割とすぐにこのエリアで仕事が見つかった。

暫くの間、サラたちは幸せだった。通勤時間に悩まされることももうない。家族で空気の美味しいカントリーサイドを散歩したりと穏やかな時間を過ごしていた。そして何より、二人の子供達は、自然に囲まれた生活がとても嬉しそうだった。

しかしやっぱり両親や友達が恋しかった

出典 http://www.grieffree.org

忙しかった、そして充実していると思っていた都会生活に疲れを感じ、田舎暮らしを決心したサラだったが、やはり両親や友人たちが恋しくなる時が多かった。

カーライルでも友達を見つけようと、子供を学校に送って行った時に出会うママたちに話しかけたりした。しかし、共通の話題を見つけるのに苦労した。カーライルでは、ほとんどが仕事を持たない専業主婦だったのだ。

サラのように、キャリアを大事に生きて来た女性とはまた違う女性たちがそこにはいた。そして子供を送り迎えする以外は、家でのんびり過ごしているママ達とは趣味の話も全く合わなかったのである。

仕事も辞め、4歳と5歳の子供のママ。決して若くはない。田舎暮らしを始めても、サラは精神的に疲れがたまっていった。そんな頃、3人目を妊娠したのだ。48歳の時だった。

「48歳でまだ妊娠、って驚いたけど、子供ができた、ってわかった時は素直に嬉しかったの。産みたい、って自然に思ったわ。」しかし、現実は厳しかった。カーライルには、ベビーシッターも、孫の面倒を見てくれる両親もいないのだ。

しかし産もうと決心したサラ。2011年に、無事、エドワードが誕生した。

48歳にして3人の小さな子供の母になったサラ。3人ともまだまだ手がかかる年齢なだけに、今までしていたディヴィッドとの夜のデートも、昼間のトライアスロンも全くしなくなった。サラは、精神的に子育てでいっぱいいっぱいだったのだ。

ディヴィッドは兄にホリデーに誘われた

出典 http://www.boatbookings.com

何年も何年もホリデーに行ってなかったサラとディヴィッド。2013年に、ディヴィッドの兄が一緒にカリブにホリデーに行かないかと弟に話を持ちかけた。

ホリデー代を出すから、と。これまで余裕がなかっただけに、旅行代金を兄が出してくれるのなら、と弟は行くことにした。11月に兄弟二人でホリデーに出かけた。

ホリデーからディヴィッドが戻ってきてからも、サラとディヴィッドの夫婦の関係は冷えたままだった。カップルというよりも、父と母としての「家族の生活」になってしまっていたのだ。

日本ではそれほど珍しくもないが、イギリスではやはり子供ができても夫婦はカップルのような関係なのだ。そしてこれが、サラの結婚生活を破たんさせることとなってしまったのだ。

去年5月に、夫から、家を出ようと思っていると離婚を切り出されたサラは、ショックを受けた。確かに夫婦間は冷え切ってはいたが、子供も生まれて家族として、これで幸せだと思っていた。

いや、そう思おうとしていただけなのかもしれない。夫が発したシグナルに気付いていても、育児や家事で疲れていて夫婦の時間をないがしろにしていたのだ。しかし、離婚だなんて。サラは急な別れの話に怒り、呆れた。

カウンセリングにも行ってはみたが…

出典 http://www.counseling-cove.com

子供だってまだ小さいのに離婚だけはしたくない!そう思い、必死な気持ちで結婚カウンセリングにも二人で行った。しかし、虚しいだけだった。

ディヴィッドの中ではもう決心が固かったのだ。今更、自分が気付くなんて。サラは自分の鈍感さにもショックを受けた。

以前、両親が新居に遊びに来てくれた時にも、二人の空気は険悪だった。それを察した両親だったが、何も言わずに帰った。訪ねて来てくれた友人たちも、サラとディヴィッドのぎくしゃくした関係を心配し、後日「大丈夫?上手く行ってるの?」と心配してメールしてきたほどだったのだ。

そして8月末、デイヴィッドは出て行った

出典 http://awordywoman.com

とはいえ、ディヴィッドは子供達の父親だ。夫婦間の関係はなくなってしまったが、子供の父親としては無責任なことはできない。

ディヴィッドは、サラ達が住む家のほんの近所にアパートを借りて引っ越したのだ。そうすれば、子供達はいつでも父親に会える。

しかし、ショックを隠しきれなかったサラ

出典 http://www.health.com

サラは暫く激しく落ち込んだ。いっそのこと、こんな田舎暮らし辞めて、さっさとこの家を売りに出し、また両親のいるブリストルに帰ろうか、そう思った。しかし、子供達は引っ越したくない、と言った。

子供達はこの田舎暮らしが気に入っていたのである。そして学校でも友達ができて、このままここにいたい、と母に訴えたのだ。

「数カ月、考えたわ。やっぱりブリストルに帰るのは無理だなって思ったの。私が仕事をするようになれば、子供達を両親に見てもらわなきゃいけない。また甘えるの!?って思ったの。」

「それに、何より子供達の気持ちを優先しないといけないって思ったわ。引っ越さない限り、子供達はいつでも父親に会えるんですもの。」

「このまま暫くはここで頑張って生きるわ」

出典 http://www.dailymail.co.uk

子供の気持ちを最優先し、このままカーライルに留まる事を決心したサラ。「ブリストルに住んでいた時、のんびり田舎暮らししたいって思ってたわ。」

「今は皮肉にも、離婚して、子供の父親が子供達と彼の家で過ごしてくれている時、私は一人の時間を楽しめるようになったから、これも悪くはないかな、って最近になって思えるようになったわ。」

高齢出産の母としての人生について、自身のことを本として書き始めたというサラ。都会生活も憧れの田舎暮らしも100%完璧にはいかなかったが、可愛い3人の子供に恵まれ、今、素晴らしい大自然の中で生活できることは、やっぱり狭苦しい都会に住む人達からしたら羨ましがられるのかも知れない。

今はパートで働きだしたというサラ。これからもまだまだ子育ては大変だろうが、美味しい空気をたくさん吸って、体に気をつけて頑張って生活してほしい。

この記事を書いたユーザー

Mayo このユーザーの他の記事を見る

公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

得意ジャンル
  • 話題
  • 社会問題
  • 動物
  • 海外旅行
  • 育児
  • テレビ
  • カルチャー
  • 美容、健康
  • ファッション
  • 感動
  • コラム
  • おもしろ

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス