私は高校教師として数多くの生徒を見てきた。

まだ39歳だが、卒業担任は合計5回やっており、1回あたり40人だとすると、私が進路に関わった生徒達が単純計算で200人いることになる。今でも月に数人は夕食を一緒に食べに行っており、昔話やこれからの夢、職場やプライベートの話で盛り上がっているところである。

さて、今回は、私が一緒に青春時代を過ごしてきた生徒達を思い出しながら、良くある「子供との接し方」について、1つヒントになるかもしれないことを書きたいと思う。

基本的な生徒への姿勢

私が心がけていることは「良いところを見つけて褒める」ということである。簡単なようで難しいが、これが上手にできるようになれば、家庭でも自分の子供に対して良い関係が築けるはずである。悩み、相談しに来る生徒、保護者の多くは「うまく思いを伝えられない」というモノがほとんどで、お互いに良い関係を築きたいとは思っているのだが、なかなかうまくいかず、ケンカや言い争いになってしまい、後悔しているというのが多い。

では、何に気をつければ、日頃、親子関係がうまくいくのか、少し自分の経験を元に考えてみた。

90%の悪いところと、10%の良いところがあるとき、多くの大人は10%の良いところを見てあげない

これが全てだと思う。

100%全て良い子供なんていない。必ず「欠点」というモノが誰にでもある。特に高校生であれば、自分のやりたいこと、進みたい道、色々な欲望が渦巻く毎日であり、宿題や授業、キツい部活、そして、大人とのやり取りなど、うまくやっていきたいが、思うようにいかないことも多いと感じている。

そうすると、例えば「遅刻が多い」「忘れ物が多い」「授業中よく寝る」「課題を出せない」「連絡を親にちゃんと伝えられない」といった、「マイナスの部分」がクローズアップされがちになり、つい、教員も保護者も「責める」ことが増えてくる。これが普通だと思う

でも、ここで少し考え方を変えて欲しいのだ。人間誰しも「もっといい自分になりたい」と思っているはずである。そこをうまくとらえて、認めてあげると、生徒というのは、子供というのは劇的に変わるモノである

10%の良いところを徹底的に褒める

もし、10回中9回「叱責に値する」行動を取っていたとしても、「たった1回の褒められるべきこと」を見逃さずに、「こんなに素晴らしいことができるんだから、もっと自分を認めてみようよ。やれるさ!」なんていってあげるとしよう。生徒の多くは「どうせ自分なんて、良いことをしても、普段が悪いからダメって言われるに決まっている」と思っているようである(少なくとも私が担任した生徒はみんなそう言う)。

しかし、違う。10%の良いところを認め、徹底的に褒めるのである。そうすることで「アレ?自分って、認められてるの?」と生徒は思い始める。これが「きっかけ」となり、次の良い行動につながるのである。

10回中9回褒められない行動していたのが「また褒めて欲しい」と思うことで、10回中2回、良い行動が取れるようになり、それをまた褒めてやると、10回中3回、4回と良い行動が増える。これが子供の心理をうまくとらえた「褒めて伸ばす」という方法であると思うし、実際私がこの方法で数多くの生徒の行動を変えてきている。

生徒は私に「先生が自分のことを生まれて初めて認めてくれた人だ」と言うが、私はそう言う生徒に「同じことを言っても伝わる生徒と伝わらない生徒がいる。こうやって褒めるということは、君が本来持っている「本当の心」の部分が褒めるに値する素晴らしいモノだからだ」と言うことにしている。そうすることで、生徒は私に褒められようとますます頑張るようになり、私はそれを見逃さずに褒め、クラス全体で紹介し、その生徒を目指すように言う。

そうすることで、他の生徒も「自分も褒められたい、紹介されたい」と思うようになり、連鎖反応で黙っていてもクラスが勝手によくなるのだ。ちょっと褒め方を変えるだけで効果抜群である。

家庭でもすぐできる「親が褒める」ということ

家では特に、小さい頃から良いところ、ダメなところを見てきている保護者は「ダメなところを直さなければならない」といういわば「呪縛」のようなモノにとらわれがちだと思う。厳しくすることは大切だが、それ以上に大切なのは「頑張った瞬間をちゃんと認めて褒める」ということである。生徒にとって一番身近な大人は親である。親に褒められることによって、自分の居場所、頑張ったという実感が得られる。

そういうことが毎日続いたら、「家に帰りたい」「親と話がしたい」と子供は思うだろう。

「家は帰るところ」であるのだ。「帰りたくなる」場所を作るのは保護者の責任でもあると思う。もちろん、叱ることも大切だが、思いっきり褒めてやることが高校生でも大切なことであるのだ。

思っている以上に自分を低く見ている生徒は多い。「自己肯定感が低い」という言い方をすることもあるが、もっと自信を持っても良いのに、自分に自信が持てない。褒められた経験が無いからだ。「もっと頑張って欲しい」という意味を込めて、叱咤激励をする大人が多いが、褒めないことで、生徒は「ああ、これはダメなんだ」と「自分の行動を否定」してしまう。

これでは伸びる才能も伸びないのである。上手に褒めることで生徒をもっと喜ばせて、さらに「頑張りたい」と思える心を育てて欲しい。

具体的に何を見るのか

これを教員が読むことは少ないと思うので、実際に親の立場でどういった褒め方をすればいいかというのは、私のクラスではよく聞かれることである。具体的には次のようなことを見れば良いと思う(私が気をつけてみていること)。

・10回遅刻していたのが、8回の遅刻になった(2回改善された)
・朝、ボソッとであるが、あいさつをするようになった(たった一回でも)
・靴を揃えておくようになった(たった一回でも)
・「ありがとう」と言えるようになった
・ご飯を食べた後、「ごちそうさま」と言ってくれた

こういう「何でも無い普通のこと」がちゃんとできない生徒も多い。こういう所が「できていない」のが「できた」からと言って「当然だ」と褒めない大人が非常に多い。でも、生徒にとっては大きな一歩であるのだ。こういう所を細かく見て、ダイレクトに、リアルタイムで褒める。これが重要なのである。

点数にならないこういう「生活」の部分こそが、生徒の「心」を育てる唯一の道である。

いくら点数が取れても、こういうことがちゃんとできない生徒を私は評価しないし、進学校にいても、普通校にいても、実業高校にいても、生徒に言うことは同じ「心を育てて、人が集まってくれるような、人のことを思いやれる人間になりなさい」である。そのためには、普段から大人が、子供のことをよく見て、良いことをしたら、それをしっかり褒めて、認めてやることである。

今の子供達は、非常に心の優しい、気を使える子が多い。しかし、かわいそうなくらい「怒られて」生きてきているのだ。ぜひ、これを読んだ保護者の方は、今日からすぐできることである。大げさじゃ無くて良い。ちょっとで良いので、毎日1つ、子供を褒めて欲しい。

10のうち、たった1の良いことを見逃さない。それだけで、生徒の行動は劇的に変わる。

私にとっては毎年のことだが、90%の悪いところを我慢する心が大人にも必要である。人を「育てる」ということは、難しく、私も毎年新たな出会いの中で日々勉強であるが、生徒を褒めることは欠かさず毎日やっている。

今、高校3年生の担任をやっているが、ウチのクラスは、掃除となれば自分が休みでも他の班を手伝い、整列は全校で一番早く並び座って待っている。もちろん、全員番号順である。成績も優秀だし、欠席、遅刻、早退も少ない。他に誇れる素晴らしいクラスである。

生徒達は「頑張ると先生が認めて、褒めてくれる」ことを知っているから、最初は大げさに私にアピールしながら頑張っているところを見せるのだが、もちろん、それも褒めてやるが、段々心が育ってくると、さりげない「良い行動」を取れるようになる。手伝ってもサッといなくなる、私が重そうに荷物を持っていると、何も言わずにモノを持つのを手伝ってくれる。教室で配布物を渡そうとすると、数人集まってきて、配るのを手伝ってくれる。こういう生徒を育てることこそ「教育」なのではないかと感じているのだ。

教員ができることは限られている。

生徒は多くの時間を「保護者」と過ごす。だからこそ、保護者が「認め」「褒める」ことが大切なのだ。

今日から、自分の子供の「良いところ、良い行動」を探すクセを付けて欲しい。それを実践することで子供は行動が少しずつ変わり、数年後には、立派な大人になっているはずだ。実際に私が担当した生徒の多くが、立派な大人として私の元へ挨拶に来る。嬉しい一瞬であるし、自分の指導が間違っていなかったことを卒業生達が証明してくれている。

この記事が、一人でも多くの生徒の「自己肯定感の向上」につながることを祈っている。全ては大人の言葉1つなのだ。子供は「褒められたい、認められたい。けど、うまくいかない」といつも悩んでいる。

褒められたくない子供なんて一人もいないのだ。

大人だってそうだ。

「認めてあげること」これが人の成長において最も効果的なものであるのだ。

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