仮にあなたが、スーパーで勤めているとしよう。そこには、スタッフのみ使用可能のトイレがある。しかし、客と思われる一人が「トイレを貸して欲しい!」と涙声でスーパーに入って来たら、あなたならどうする?

困っていそうな人の為に規則を破ってトイレを貸す?それとも、拒否する?イギリスのプリマスで人としての思慮分別を問われるような事件が起きた。この事件では、女性は完全にスタッフに無視されたのである。

クローン病を抱えるアニー

出典 http://www.dailymail.co.uk

24歳で、5歳の子供の母でもあるアニー・リチャーズ(24歳)は、6年前にクローン病と診断された。

クローン病は主に、小腸や大腸などの腸管壁に炎症や潰瘍などができる慢性の炎症性疾患です。また、消化管だけでなく全身にさまざまな合併症が発生することもあります。緩解(症状が落ち着いている状態)と、再発・再燃を繰り返し、長い経過のなかで徐々に病気が進行します。

免疫や炎症を抑えるために薬剤を投与する、内科的な治療ではコントロールできないひどい病変や狭窄部位を手術により切除する、食事制限などで一時的に腸管を休ませる、などの治療が講じられますが、現在のところ病気を完治させる治療法はありません。

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炎症により、激しい腹痛と下痢が主な症状だ。体重減少や、発熱などが起こる場合もある。日本では、特定疾患に指定されている難病である。

アニーは、症状をおさえるために毎日30錠もの薬を飲まなければいけない。しかし、完治のための薬ではないので、痛みは突然やってくるのだ。

「いつ、腹痛に襲われるかわからないから仕事もできないんです。ベッドから起きられない時だってあるのよ。この2年間で体重だって25キロも落ちたわ。」とアニーは言う。

そして事件は起こった

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今年の3月、ミッドランドにある自宅から、プリマスにいる友人を訪ねた。クローン病を患ってるために、滅多に外出しないというアニー。しかし、その滅多にしない外出先で、不幸な出来事に出会ってしまったのだ。

プリマスの友人の家から自宅まで車で約4時間。その間、腹痛がアニーを襲った。慌ててプリマスのコープスーパーに駐車し、店内に駆け込んだ。

「お願い!トイレを貸して下さい!緊急なんです!!」しかし、店の女性スタッフは「スタッフ用のトイレを一般客に貸すことはできません。」と拒否。

「お腹があまりにも痛くて、泣きながら頼んだのよ。なのに冷たく拒否されてその上、まるで私がそこにいないかのように、棚の整理をし出したのよ!」

メディカルカードを車内に取りに行くも…

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いつもなら、バッグに「I can't wait!」(もう待てない!)というメディカルカードを入れていて持ち歩いているアニーだが、今回は、あまりの腹痛のため、とりあえずトイレに行かなければ、という焦りから車内にバッグを置き忘れてしまったのだ。

そのため、店員に拒否されたアニーは、カードを取りに駐車場へ走った。しかし、間に合わず、下着の中に粗相してしまった。

「滅多に外出しない先で、あんな屈辱を味わったことはないわ。」と怒るアニー。以来、もう家から外に出ることが怖くて仕方ないという。更に外出しなくなってしまったのだ。

「スーパーで働いたことがあるけど、あんな応対したことないわ。スーパー側の規則っていうのも理解できる。でも、誰かがトイレ貸して!って涙流して訴えてたら、本当にトイレが必要だってことなのよ。決して大げさに言ってるんじゃないわ!」

アニーはその後、コープスーパーのfacebookのページにコメントした。しかし返信はなかった。「本当にがっかりしたわ。誰も何も返信しないなんて。」

去年4月に小腸の大部分を切除

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小腸の一部を切除するという大手術を行ったために、今ではアニーは固形物を口にすることができないという。一口でも口にすると、急激な腹痛に襲われるからだ。

「スープとかの液状のものか、ゼリー状のものだったら大丈夫なの。」見えない病気ゆえに、周りはアニーを元気な女性と思ってしまう人が多いという。

今後、スーパーではクローン病患者に関する知識も増やすべきだとアニーは語る。「そういう特定疾患を抱える人にはトイレは貸すべきだわ。社内教育をきちんとすべきよ。」

「たまの外出で、友人と会い楽しい週末を過ごしたのに、あのトイレ事件で一気に台無しにされたわ。」

「クローン病だからって人生諦めたくないわ」

出典 http://www.dailymail.co.uk

アニーは難病を抱えながらも、しっかり子育てをしている。そして今、クローン病をサポートするチャリティ団体に参加し、チャリティでスカイダイビングにチャレンジする計画をしているという。

「クローン病だからって、人生を諦めたくないの。この病気のことをもっと世間に知ってほしいし、私と同じようにこの病気で苦しんでいる人にも、あなたは一人じゃないよって伝えたいの。」

コープ側のコメントは

出典 http://www.telegraph.co.uk

「安全・防犯上の理由により、普段は一般客にはトイレを貸さない規則。しかし、スタッフには客の使用を慎重に判断させるように教育したい。」とコメントした。

また、今回のアニーの件で「大変申し訳なかった。ついては、100ポンド(約2万円)をクローン病をサポートするチャリティ組織に寄付したい。」と申し出ているという。

もし、雇用規則が厳しいと規則に反すれば、クビになる可能性もあるだろう。店員側からしたら単に規則を守っただけ、と思うだろう。悪いことは何もしていない、と。しかし、人としての思慮分別は大切だと筆者は思う。

人間は機械ではないのだ。心がある限り、困っている人を助けるのは当たり前ではないだろうか。今回はただ、「トイレを貸すだけ」のことで大問題にはならなかったはずだ。

アニーのいうように、外見からは判断が難しい病気があるのだ。もし、あなたが同じような目にあったら?トイレを貸してもらえなかったら?そして、もしあなたが店のスタッフだったら?

「会社の従業員」として、ではなく「人」として必要なことは何だろうか。それを問われる出来事である。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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