日本でも老老介護が問題になっている。とはいえ、老人ホームが満員な状態で、徘徊老人の世話もホーム側も受け入れ態勢が大変だろう。そのため、家族が介護をする以外に選択肢がないという家庭もある。

夫婦二人きり、どちらも年老いての介護は体力的に大変だ。周りに子供や孫らのサポートがあれば話は変わってくるが、たいていの場合は夫の面倒を妻が、またその逆も然りと、二人で支え合う夫婦が多い。

しかし、この夫婦の絆が、疲労困憊の果てに切れてしまう時がある。ここ、イギリスでも悲しい事件が起こった。介護の果てに疲れた夫が、施設に妻を入れたものの、施設から返されてしまい、最後には妻を殺害、そして自分も自殺という悲惨な最期を遂げたのである。

2012年に認知症を発症

出典 http://www.dailymail.co.uk

妻のメリル(80歳)は3年間認知症を患っていた。進行具合は早く、紅茶を自分で入れること、夫の名前も忘れ、窓をよじ登り外に徘徊に出るという生活になった。介護に疲れ果てた夫は、去年9月に、やむなくメリルをカンブリアの介護施設に入れることにした。

施設の経営者兼マネジャーは、メリルを放り出した

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ところが、施設でも同じように徘徊。その度に家族である夫ジョンに連絡が行った。そしてあてもなく歩き回るメリルを探し回る日々。時にはジョンは、山岳救急隊に助けを求めなければならなかったこともあった。

更に酷いことに、この施設の経営者はメリルを施設では手に負えないとして、メリルを無理やり自宅に送り返したのである。ゴミ袋に衣類などを入れ、玄関先にまるで、飼えなくなった動物を捨てるように、ジョンに突き返したのだ。

最後には「絶望」しか残っていなかった

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介護施設から「もう対処できない。」と連絡があった時、ジョン(81歳)は自分にも妻の介護は無理だと思い、何か所も何か所も介護施設に問い合わせた。しかし、空きはなかった。そしてその夜の9時頃に、ゴミ袋と共に妻が戻ってきたのである。

「このままでは二人に未来はない」そう悟ったジョン。メリルのココアに睡眠薬を入れ、飲ませて窒息死させた。その後、オーストラリアにいる弟オーウェンに電話し、自分がしたことを告白。

電話を終えた後、ジョンは自らの命も車内で絶とうと試みたが失敗に終わった。妻の殺人容疑で逮捕されたジョンに、弟と、アメリカ在住ジャーナリストのジョンの息子(52歳)が駆け付けた。

「ただただ、元気な妻が恋しかった。」

出典 http://www.theguardian.com

元哲学教授だったジョン。妻のメリルも元教師であった。結婚生活58年。ジョンは本当にメリルを愛していた。介護施設にメリルを入れた時も、自分の老体では介護に限界があると悟った上での、苦渋の決断だった。

ところが、介護施設からも匙を投げられ、襤褸雑巾のように突き返されたメリルを見て、絶望しか残らなかったというジョンの気持ちは、想像に難くない。近所の人達も「ジョンは、すごく絶望しているように見えた。」とコメントした。

妻に対する殺人罪で起訴されたジョンは、裁判で、さっさと有罪にしてほしがった。しかしジョンの弁護士は無罪を主張し、保釈金を払い、ジョンは保釈。しかしその3カ月後に川で命を絶ったのである。

「誤解があった。」と言い訳する経営者

出典 http://www.dailymail.co.uk

検察官に追及された介護施設の経営者クレア(写真右。左は夫のマイケル)は「メリルにとっては、自宅に帰る方が幸せだと思ったんです。」と言い訳がましいコメントをした。「もし、必要ならデイケアとか、いつでも施設に戻ってきてもいいとは申し出ました。」

そう言ったクレアに、検察官は厳しく「なぜ、せめてもう1日朝になるまでメリルを預かれなかったのか。なぜ、夜にわざわざ、捨てるように自宅の玄関先に放置したのか。福祉に相談するとか方法があったはずだ。」そう言い放った。

それについてはクレアは「本当にその通りだと思います。反省しています。」と答えたというが、恐らく言い訳でしかないのだろう。

両親の悲報を聞き、アメリカから駆け付けた息子ジョンは「父は、真面目で誠実な人でした。きっと父にとってのベストを尽くした結果がこれだったんだと思います。」とコメントした。

悲しい結末。日本でもイギリスでも、老老介護が増えているのが実情だ。孤独死や、こういった悲しい結果を招かないようにするためにも、やはり、福祉などの協力は必須だ。介護をするものにしか、その大変さ、辛さはわからない。

夫ジョンも、息子のいうように、きっとベストを尽くしたのだろう。しかし介護施設の虐待やいい加減な対応も明るみになっている。政府がせめてできることは、福祉の充実だ。少しでもこういう悲しい事件がなくなってくれることを願う筆者である。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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