「この病気になったことで、人間らしく生きられる全てのことを失ったわ。」悲しそうにそう語るのは、イギリスのドーセットに住む、ジャッキー・リンジー(50歳)。彼女は電磁波過敏症という電気アレルギーに苦しんでいる。

電磁波過敏症(でんじはかびんしょう、英: electromagnetic hypersensitivity-EHS )とは、「ある程度の電磁波(=電磁場)に曝露すると、身体にさまざまな不調が現れる」とする疾病概念、心気症の一つであるとされ、健康を害する電磁場に曝されてる(という観念)事によって引き起こされると称されている症状、疾病を記述する用語である。「特発性」(idiopathic)とは原因不明であることを意味する。現状、明確に疾病概念は定まっていない。

原因が何であれ電磁波過敏症の症状は現実に生じており、患者にとって日常生活に支障をきたすほどの問題となることがある。以下の症状が報告されている。

(皮膚)チクチクした感覚、灼熱感、皮疹、発赤、ヒリヒリとした痛み
(その他)頭痛、疲労、精神的ストレス、睡眠障害、筋肉痛、集中力の低下、めまい、吐き気、動悸、消化器の障害、その他多くの健康問題

アメリカ合衆国では、症状を持つ100人の人間がWi-Fiを避けて住処を引っ越している。

出典 https://ja.wikipedia.org

原っぱに「案山子」…ではない

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こんな姿をして歩いている人を見たら誰もがギョッとするだろう。全身の皮膚を覆い、帽子を被っている姿はまるで案山子のようだが、これがジャッキーの外出時の服装だ。

このスーツとベールは特殊な素材で作られており、電流を反射できるようになっている。外出は滅多にしないというジャッキーだが、調子が良い時には、このスーツを着れば近所の店で5分ぐらい買い物ができるという。

しかし、基本はスーパーのデリバリーに頼むか、離れて暮らす家族の誰かに、スーパーで買って来てもらうようにしている。

自宅では蝋燭とガスのみ使用

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ジャッキーの症状は重度になるため、家では電気の使用は一切禁止である。蝋燭とガスのみの生活だ。電気のない生活を余儀なくされたため、今は家族の元を離れ、田舎暮らしをしている。

携帯電話もない、テレビも、パソコンもない生活だ。そしてジャッキーはもう運転さえもできないのだ。

重度のアナフィラキシーショックに似た症状

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元々、ジャッキーは8年前までは大家家業を営み、ごく普通の生活をしていた。ところが、ある日を境に神経障害を患うようになった。目の痛みや眩暈、頭痛、手足のしびれなどが頻繁に起こるようになったのだ。

しかし、何度GPに行っても原因は不明だと言われ、自分でリサーチした結果、EHS(電磁波過敏症)と判明したのである。残念ながら、イギリスではこの病気は医学的にまだ認められていない。

スペインとスウェーデンのみが、電磁波過敏症を病気と認定しているが、テクノロジーが発達したイギリスでも今や4%の人がこの症状を患っているという。そして今後も恐らく人数は増えていくだろうと予測される。

家族や友人とも会えない毎日孤独な生活

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ジャッキーのケースは、かなり重症だ。離れたところで誰かが携帯電話で話していても、その電波をキャッチし、アレルギー反応を起こす。そのため、電磁波探知機を持ち歩くのは必須だ。

「公共の電波や、空気中の電磁波をこれが拾ってくれるの。前に住んでいた家は隣の家とくっついていたから、隣家の電気を体が拾ってアレルギー反応が出てたの。」

イギリスで認知度がかなり低い病気のため、GPの医者にも「被害妄想」とバカにされたという。「毎日こんな生活、本当に辛いわ。友達も家族も失ったわ。彼らにはこの病気が理解できないのよ。私の頭がおかしくなった、って思ってるみたい。」

「普通の生活が恋しいわ。」

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「電波を避けるためにこの特殊なスーツで体を覆うでしょう、そしたら周りは皆、私がものすごい接触伝染病を持ってるかのように扱うわ。」

「クリスマスに友達の家を訪ねたり、パブのガーデンでワインを飲んだりしたいわ。普通の生活が恋しい。すっごく孤独なの。でも仕方ないんだけどね。」と語るジャッキー。口で言うよりも遥かに辛い経験をしながら日々を過ごしているのだろう。

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医者にも認めてもらえず、自分でリサーチして認識した病気を持つジャッキー。「自分でEHSとわかって安心したわ。原因不明でずっと何年も苦しんできたから。」

テクノロジーが溢れる街を去り、パワーケーブルや街灯、携帯の電波が届かない場所へ引っ越して来なければならなかった。「もし、もう一度、人間らしい生活ができるなら、今どんなにジロジロ見られたって、避けられたって気にしないわ。」

今やテクノロジーは避けられない時代。しかしジャッキーにとっては、この世の中が地獄と同じだ。ジャッキーを家族から、友人から疎遠にさせ、街灯もない田舎暮らしの中で、誰にも理解してもらえない孤独。

スウェーデンは医学が進んでいると言われるが、イギリスはほぼ間逆だ。この国で生きて行くジャッキーのためにも1日も早く、EHSが病気と認定されて、少しでも治療法が見つかるといいのだが。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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