【ミヤの歴史散歩】短冊のかわりに梶の葉に字をかいてみました。

七夕の日、短冊に書く願い事は、むかしは木の葉に書いていたんですって。使う葉は決まっていて、梶の葉。京都の冷泉家の乞巧奠(きっこうでん)――つまり七夕ね――の行事の飾り付けにも、梶の葉は使われています。ほんとうに葉に字が書けるのかしら? 筆者が試してみましたよ。

これが梶です。この切れ込みで見分けがつきます。

まず、梶の木の葉はどこでみつければいいのか、といいますと。これ、都市部にも雑草としてあちこちに生えているのですよ。木を雑草というのはおかしいかもしれませんが、木になる前の背の低いのは草という感じなのです。これがちょっとした斜面などにわさわさしげっているわけです。公園と駐車場の間ですとか。東京都心にもあるくらですから、どこにでもある気がします。お家の近くで探してみてくださいね。
この葉は、採るとすぐに萎れてきます。そこで、押し花を作る要領で紙の間にはさんで少しおいてみました。こうすると葉が平らにのびて、いい具合です。墨で字を書いてみる。ちょっと墨をはじきますが、ちゃんと書けました。

少しみづらいですけれど、俳句が書いてあります。

願い事は、まあ私事でございますから、俳句を書いてみましたよ。書いたのは、与謝蕪村さんの俳句です。
「梶の葉を 朗詠集の* しをり哉*」
*「の」は、変体仮名という昔のひらがなで書いているので今の字と形が違います。
*哉は、「かな」と読みます。
蕪村さんが、――おそらく――七夕の日に、梶の葉を和漢朗詠集という本の栞にしました、という句です。和漢朗詠集は平安時代に藤原公任さんというかたが編んだ、漢詩と和歌のアンソロジー。

大きい本が平安時代の人が和漢朗詠集を筆で――平安時代ですから、筆で書くしかないですよね――書いたもの。小さい本が現代語訳です。

では、和漢朗詠集の「七夕」の項を見てみましょう。漢詩が5つ、和歌が3つ出ています。今度は、そのうちのひとつを、大きい本の毛筆書きをお手本にして書いてみました。

見えづらくて申し訳ありません。和歌が書いてあります。

これが、同じ歌を紙に書いたものです。

左のものが、葉に書いたのと同じ歌です。

これは、柿本人麻呂さんの歌です。
「あまのか*は とほき*わた*りに*  あらねと
 も き*みか*ふな*ては としに*こそ*まて」
(*は変体仮名なのでいまのひらがなと違う字です)
つまり、
「天の川 遠き渡りに あらねども 君が舟出は 年にこそ待て」
天の川はそれほど遠い渡りではないけれど、あなたの舟出は年に一度なので待っています、という意味だそうです。

和漢朗詠集に載っている七夕の詩のうち漢詩のひとつは、白楽天さんのもの。

「憶得少年長乞巧竹竿頭上願糸多」
日本語での読み方は、おもい得たり少年にして長く乞巧せしことを 竹竿(ちくかん)の頭上(とうじょう)に願糸(がんし)多し。
意味は、七夕の日に竹ざおに五色の願いの糸をたくさんかけて、技芸の上達を願うのを、自分も少年のころしたのを思い出すわ。といったところでしょうか。

人麻呂さんも、白楽天さんも、公任さんも七夕をして、それを蕪村さんが読んで、やっぱり七夕の行事をしたのですね。現代に生きる私たちも、未来の人に、楽しいしきたりを伝えていく中継点なのかもしれません。はるか昔に無くなった星の光が遠い地球に届く日に。

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東京芸術大学美術学部芸術学科卒業。西洋中世美術史専攻。呉服屋(実家の手伝い)、出版社、編集プロダクション勤務のあと、現在はフリーランス。夢は、生け花とフラワーアレンジメントの教室を開くこと。専心池坊流華道教授免許有り。その他の趣味は、茶の湯は表千家、煎茶道、仮名書道、太極拳など。http://ameblo.jp/thymusvulgaris/

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