■我が国初、第3軌条車両の冷房車

1973年、大阪市営地下鉄(大阪市交通局)は谷町線用の新型車両として、初代20系4両編成を投入しました。営業運転に向けて試運転を行なっていましたが、計画変更により、1974年に御堂筋線の転属が決まりました。

出典 http://railway583.blog.so-net.ne.jp

10系試作車。残念ながら、この顔は現存していません。

御堂筋線で試運転を行なったのち、1975年に「10系」と改称。併せて中間車4両の増結により、8両編成化されました。再び試運転を行ない、営業運転に就いたのは1976年2月です。

1977年、8両編成のうち、1両だけ試験的に冷房装置の搭載を開始しました。

今までの地下鉄車両は、トンネル内における熱の排出が課題となっており、冷房を搭載すると余計熱くなることを懸念したため、見送られてきました。特に地下鉄の一部は建設費を安くするため、トンネル断面を若干小さくしており、線路脇から流れる高圧電流を集電して走る第3軌条方式を採用。冷房装置の設置が難しい状況でした。

10系は「電機子チョッパ制御」という、当時としては画期的な省エネルギー車両で、ムダな排熱を抑えることができました。東京の営団地下鉄(現・東京メトロ)千代田線、有楽町線、半蔵門線でも採用されています(10系が登場した当時、半蔵門線は開業していない)。ところが架線から集電する電車で、冷房装置の搭載ができたにもかかわらず、様々な理由で見送られていました。

10系の冷房装置は薄型で、車両の両端に設置。トンネル断面の影響で、冷房装置のある部分は車内の天井が低くなっています。

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10系量産車。

試験的に搭載された冷房は好評を博し、1979年に量産車が登場。10系は大阪市営地下鉄のエースとして君臨。1987年のあびこ―なかもず間延伸を機に1両増結し、9両編成としました。同じ第3軌条路線を持つ名古屋市営地下鉄(名古屋市交通局)、横浜市営地下鉄(横浜市交通局)も冷房を搭載した車両が登場。さらに架線の地下鉄にも徐々に普及していきます。営団地下鉄が車両の冷房化に踏み切ったのは、1988年でした。

■車種統一せず

大阪市営地下鉄は、御堂筋線の車種を10系に統一せず、1989年で増備を打ち切り。1991年に後継車両の21系へバトンタッチして、1993年に全車冷房化を達成しました(大阪市営地下鉄自体は1995年に車両の完全冷房化を達成)。

1995・1996年に1両増結し、10両編成化する際、10系は3編成を分解して、先頭車4両を廃車しました。

■車両リニューアル

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10系リニューアル車。

10系量産車の登場から20年近くたった1998年より、車両リニューアルを開始。車体はピッカピカに洗浄され、新製時のういういしさを再現。先頭車のアルミの地肌部分をブラックフェイス化し、白と赤の帯をより鮮やかな色調に変えました。右上のフロントガラスにロゴマークをつけています。警笛も最終増備の第25・26編成に導入した「電子警報音」に更新されました(第25・26編成は、リニューアル後も警笛を更新されていません)。

車内はシートモケットを御堂筋線のラインカラーである赤、優先座席は青に更新。車内数か所に旅客情報案内装置を設け、乗降用ドア用の開閉チャイムも装備しました。ドアチャイムは開けるときと閉めるときでは音が違います。内装もより明るくなった印象があります。

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10A系。フロントガラスのロゴマークと、2本の赤い細線が目印。

2006年から2011年まで、走行機器を現代の省エネ車両、VVVFインバータ制御に一新されており、より一掃の長寿命化を図りました。併せて車両も「10A系」に改めています。

■10系(電機子チョッパ制御車)の廃車が進む

出典 https://ja.wikipedia.org

30000系。前面デザインは、10系リニューアル車に似ています。

10系の10両編成化後、第4編成が最古参編成となりました。しかし、リニューアル車の対象から外れており、2011年3月に廃車されました。同年12月に御堂筋線仕様の30000系がデビューすると、リニューアルされた第5・7・8編成が順次廃車されました。今後も30000系の増備と10系リニューアル車の廃車が進められます。

我が国初の第3軌条車両冷房車10系。薄型の冷房装置が開発されなければ、夏はきっと暑苦しい思いをしていたでしょうし、鉄道車両全体の冷房車普及が遅れていたかもしれません。それだけに、功績の大きい車両なのです。

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岸田法眼 このユーザーの他の記事を見る

レイルウェイ・ライター。旅、鉄道、小説、時事問題、プロ野球、大相撲などをテーマに執筆。2007年1月にライターデビュー。以降、『TRAIN MODELING MANUAL』(ホビージャパン刊)、『鉄道のテクノロジー』(三栄書房刊)、『鉄道ファン』(交友社刊)、『エキサイティングマックス!』(ぶんか社刊)、ハフィントンポスト(ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン刊)などに寄稿している。

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