進学や就職を機に大都市へ住む若者が増えていることから、地方都市の過疎化や高齢化が深刻な問題になっています。

高齢化が進むということは、子どもがあまりいない環境とも言えるわけで、中には町で唯一の学校が廃校になり、遠方の学校へ通学せざるを得なくなる場合もあるのです。

今回は、そんな廃校寸前の母校を守りたいという思いを持った中学生・鈴木智也くんの取り組みをTED×kids@Chiyodaでのスピーチを中心に紹介します。

鈴木くんが住まう左鐙(さぶみ)という町

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鈴木くんは、2013年に茨城県から左鐙に引っ越してきました。

彼が住む左鐙という町がどこにあるのかというと…

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島根県の中で栄えている松江市や出雲市から遠く離れた、県西部にある…

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津和野町という町から、さらに山へ入っていった場所なのです。鈴木くん本人も話していましたが、まさに「ど田舎」という場所。そして、過疎化と高齢化が進んでいるため住人の約半分が65歳以上となっています。

清流日本一と言われる高津川が流れ、山々に囲まれた豊かな自然の中で鈴木くんは過ごしていたわけですが、ある日こんな発表がありました。

2014年度の生徒数は6人。2014年9月、教育委員会は「2015年4月までに全校生徒数が16名に満たない場合、小学校の統廃合案を議会に提出する」と発表しました。

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鈴木くんが卒業した左鐙小学校が、廃校になるかもしれないと発表されたのです。

誰しも自分の母校が無くなってしまうのは寂しいこと…鈴木くんも例外ではありませんでした。そして、「何としてでも母校を守ろう!」と立ち上がったのです。

鈴木くんが語る「左鐙小学校の良いところ」

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この木造平屋建ての校舎が、左鐙小学校です。校庭は、都会では有り得ない天然の芝生で、地域の方が自分達で植えて管理をして下さっています。羨ましいなぁ…。

鈴木くんは、単に感情論だけで母校を残したいと言っているわけではなく、卒業生として左鐙小学校での教育の良さについて語っていました。

左鐙小学校では、生徒と先生がほぼマンツーマンです。そのため、とても密な指導が受けられます。

例えば僕だったら、僕は先生とマンツーマンで理科の授業を受けていたんですけど、モノを溶かす単元のときに、教科書には図でレモンの汁が酸性ってことが書かれていました。

それで僕が先生に「先生、僕、昨日隣の人に『これ、ゆず風呂に使いんしゃい』って言われてもらったゆずがたくさんあるんですけど、それを使って鉄を溶かしたらどうなりますかね?」なんて言ってみました。

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先生は、鈴木くんの提案を採用してくれ、実際に二人でゆずで鉄を溶かす実験をしたそうです。

やってみたいことを提案できる、そして実際にやれる、このような環境は大規模校にはないものだと鈴木くんは言っています。

また、教科書に書いていないことも地域ぐるみで教えてもらえるのです。これもこの土地ならではのメリット。

どんなことが学べるのかを、鈴木くんが紹介してくれました。

これは年末にお餅を作る、餅つき会みたいなものなんですけど、見てもらったらわかるように、地域の人達と小学生が一緒になって餅を作っています。この後僕達はこのお餅をみんなで食べました。

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都会では、お餅はスーパーなどで売っているものを食べることが多く、実際に作る機会は稀です。学校でこういったことを体験できるのは、貴重ではないでしょうか。

他にも、地域の川名人が川での遊び方や、接し方をレクチャーすることもあり、鈴木くんはとても新鮮な教育だったと語っています。

田舎だけど最先端の教育がそこにある

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所謂「アクティブラーニング」と呼ばれる、生徒自らが感じたりする中で学ぶ授業が、左鐙小学校では特別なことではないのです。

この左鐙小学校は、そういうことを本当に昔からやっていて。事実上、日本の片隅にある地域が、実は最先端の教育を行っていたなんて、ちょっとおもしろい気もしました。

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多くの保護者が「アクティブラーニング」に注目し始めたのは、最近のこと。しかし、左鐙小学校は昔からこうした授業をしているわけで、俄に始めたわけではありません。

都会の学校にはない魅力的な授業だということが、鈴木くんのスピーチからよく伝わります。

さて、こんなに魅力的な左鐙小学校が廃校の危機に瀕しているということから、鈴木くんは母校を守りたいという思いで教育委員会に自分の意見を伝えたのです。誰にでも出来ることではありませんよね…。

しかし、そこで言われた廃校にする理由と、浮かび上がってきた問題点には、鈴木くん一人ではどうにもならない“大人の事情”が存在しました…。

何で左鐙小学校を統廃合するのか?理由は1つだけ。そう、人数が少ないから。

僕はそこがとても理解に苦しむところであって、人数が少ないところをどうしてデメリットと捉えてしまうのか。

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人数が少ないからといって、教育の質が悪いわけではない。現役の小学生(当時)として鈴木くんは懸命に意見を伝えましたが、教育委員会は首を縦には振らなかったのです…。

結局、左鐙小学校を存続させるには全校生徒の人数を16名にするしかありませんでした。

子育て世帯を誘致するために鈴木くんがしたこと

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小学校に通う子どもを増やすためには、子育て世帯に左鐙に住んでもらうしかありません。しかし、当時の左鐙には移住者が暮らすための家屋がありませんでした。

そこで集落にある空き家を改修して、移住者の方が住めるようにしようと考えたのです。

改修をしようにもお金が必要になるため、鈴木くんとFounding Baseという民間企業の方が協力し、クラウドファンディングで資金を募ることにしました。(現在は終了しています)

鈴木くんは、クラウドファンディングのページにこんなメッセージを書いています。

廃校が決定されればどうしようもないですが、決まるまでは卒業生としてできる限りのことはやりたいと思っています。

もしも小学校がなくなれば、小学生は左鐙地域をバスで通り過ぎて中心部の小学校へ通います。

今まで川の学習や、ふるさと体験で左鐙地域の事を教わって、そのたびに地域の大人の方々が教えに来てくれて見守ってもらっていたけれど、そんなつながりの中で育つ機会が減ると思います。

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藁をもつかむ思いでクラウドファンディングに懸けていたのです。

結果、当初の目標金額を上回る700万円を集めることができました!

空き家の改修の様子

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一戸建て、一階部分に四部屋、続き納屋の二階に二部屋という申し分ない物件が改修されています。

そして、改修が完了した一軒には小学生がいるご家族の入居も決定しました!嬉しいですよね。

しかし、つい先日悲しい知らせが届きました…。

平成27年度で…

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本日6月25日、津和野町議会において左鐙小学校の廃校条例案がだされ、議会で可決されました。

これをもって、平成27年度での左鐙小学校、廃校と決定いたしました。

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移住者の方も決まり、小学校に通う子どもも増えるのに廃校が決定されたのです。この取り組みがあったからこそ、移住する家族もいたのに…。

そして、一番大切なことですが在籍しているお子さんの保護者は、全員廃校にNOを突きつけていました。保護者の声すら無視された結果となったのです。

廃校が決定してからの鈴木くんのコメントはありませんが、TEDでのスピーチの最後にこのように話していました。

ど田舎の学校を潰すのは日本のためになるのか?

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僕は左鐙、そして左鐙小が大好きです。

ここはど田舎ですけど、僕を変えてくれたし、これからも日本の将来を担っていく人材だって、育てられる場所だと思っています。

今、こういう日本の田舎の小学校は姿を消しつつあります。田舎の、田舎でしかできない、そういう魅力的な教育。それが今、日本から姿を消しつつあります。田舎の教育の強みが今、日本から失われつつあります。

この左鐙小学校の魅力を皆さんにお伝えした上で、僕は聞きたいと思います。

この小学校、こういう小学校、魅力的など田舎の小学校、こういうところを潰すことって果たして日本の未来にとって正しい道なんでしょうか?

僕はそれは違うと思う。

だから、僕は左鐙でこれからも頑張り続けます。そしてこの小学校で育った人材っていうのが、いずれ僕とか僕達が東京のど真ん中で活躍する日がくるでしょう。だから、これからも僕を見ていてください。

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鈴木くんのスピーチはこちらから。

中学生の男の子が、母校を守りたいという気持ち一つで、ここまで動いたことに驚くと共に地域の方の思いも強く感じました。

左鐙に限らず、人口が減りつつある地方では同様のことが増えてくることが考えられます。

果たして生徒数だけで学校を廃校にすることが正しいことなのか、我々も考えていきたいですね。

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