日本でも、病院へ搬送する救急車の問題は後を絶たない。いくつもの病院に電話をして、ようやく受け入れ先が決まる。搬送まで、余裕で1時間かかってしまうことも多いと聞く。筆者の父が倒れた時も、そうだった。

日本では県によって、救急車の搬送時間が違うらしいが、ここイギリスでも、ロンドンは最悪と言われている。そして事件は北ロンドンで起こった。

妊娠していると気付いてなかった

出典 http://www.dailymail.co.uk

2012年の12月16日。クリスマス前の最後の週末ということもあって、例によって救急隊員は多忙であった。ちょうどその頃、北ロンドンのアパートで、女性が999コールをしていた。時刻は夜6時半だった。

サブリナ・スティーブンソン(28歳)は、自分が妊娠していることに気付いていなかった。継父ギャリー(47歳)によると「前日に飲みに行ってたようです。でも数杯飲んだだけだと言っていました。翌日、具合悪そうにしてるのに気付きました。」

サブリナは酷い腹痛を訴え、下痢、嘔吐を始めた。なんとか自分で999へ電話。しかし、救急隊員が到着したのはなんと4時間後の10時半だった。

出典 http://www.dailymail.co.uk

救急隊員が到着した時には、既にサブリナは心臓麻痺を起していた。搬送するのにも時間がかかり、病院の緊急外来に到着したのは10時40分。しかし、サブリナは11時24分に帰らぬ人となってしまった。

サブリナの直接の死因は心臓麻痺だったが、彼女は妊娠していた。子宮外妊娠だった。

子宮外妊娠は通常とは違う場所(子宮の外)に受精卵が着床して、発育を始めることです。子宮外とは「正常な子宮内腔以外」の意味で、子宮頚部や子宮から卵管に移行するぎりぎりのところに着床をしたものも子宮外妊娠とよんでいます。

子宮外に着床しても胎盤の形成がうまくいかないのでたいていが流産という結果になります。流産してそのまま吸収されていくような軽症の場合もありますが、卵管が細いので胎嚢が発育する過程で(妊娠5〜6週あたり)で卵管破裂を起こすとおなかの中に大出血をおこして、ショックとなり死亡することもあり得る疾患です。

出典 http://www.san-kiso.com

なんで4時間もかかったのか

出典 http://motherlove.me

彼女の検死解剖に立ち会った検死官は、ロンドンの救急隊員の対応の悪さを批判した。明らかに4時間はかかり過ぎだ。もっと早くにサブリナを病院へ搬送していれば、命は助かったであろう、と述べる。

母ドーン(50歳)も、「電話した時、酔っ払いか、ドラッグ使用者だと思ったんじゃないですか。クリスマス前だったし。最後の4時間を娘がどんなに苦しい思いで過ごしたかと思うと、やりきれません。」

娘の死を知った母は錯乱状態に陥った。「妊娠していたなんて誰も知りませんでした。私達には何も言わなかったし。娘自身も気付いてなかったんじゃないかと思います。」

サブリナが必死の思いで、電話をした時には、救急車は出払っていた。電話を受けたスタッフが、緊急性を要しないと判断したことにより、外に出ている救急車への連絡も遅れた。

あまりの対応の悪さが明るみになった今回の事件。4時間も遅れて到着しているのでは、もはやそれは救急ではない。ロンドンは常に道路の混雑が予想されるものの、999に電話をしてから、救急車が出るまでに時間がかかり過ぎていること、病院への搬送時にも手間取っていたことなどが、今後裁判で厳しく注目されるだろうということだ。

サブリナとお腹の子供を一気に失ってしまったサブリナのパートナーは、深い悲しみにくれているという。すぐに搬送されて手術を受けて入れは助かったであろう命。人の命を救うのも人間ならば、ミスはある。しかし、緊急性を察知できるかできないかは、スタッフの勘と患者の生死が問われる最も大切な瞬間だ。

サブリナとお腹の子供の冥福を祈りたい。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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