犯罪が起こった時、世の中は不公平だと思うのは、被害者側のプライバシーはメディアにさらされるが、加害者、またその家族のプライバシーは守られる。これは被害者側にとって最も辛いことだと思う。

去年、イギリスで、娘を轢き殺された父が加害者家族に接触を計ったとして、ハラスメント容疑で裁判にかけられたのだ。今週月曜にその裁判が終結したが、その判決はー。

学校に行く途中で事故に

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去年6月30日、イギリスのオックスフォードシャー州、ウィットニーに住むポール・ベイカー(47歳)と妻モーリーン(45歳)は、長女のリバティを交通事故で失くした。リバティが学校に行く途中で、ドラッグを使用していた運転手に轢き殺されたのだ。

犯人は19歳の男

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ロバート・ブラックウェル(19歳)は、運転中に携帯電話でガールフレンドにメッセージを送っていた。そのため運転のコントロールに誤り、歩いていたリバティともう一人を撥ねた。

一人は重傷を負ったが、リバティは帰らぬ人となってしまったのである。逮捕後の尿検査で、犯人がカナビス(ドラッグ)を使用していたこと、スピード違反だったことが判明した。

被害者家族にとっては最悪の出来事

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娘の死を知り、家族は悲しみに包まれた。娘の死の3日後、なんと父ポールは犯人家族の居場所を知ることになってしまう。犯人一家は、ポールがエンジニアとして働いていた職場と同じ通りに住んでいたのだ。

ポールは犯人の母親ジュリア(49歳)に近づいた。そして道を聞くふりをした。その後、偶然マーケットで犯人の父親アンドリュー(56歳)にも会った。その時、ポールは彼を睨みつけた。このことが後々、ポール一家を更に苦しめることになった。

犯人への判決が決定したわずか6日後

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今年4月、ロバート被告の判決が決定した。裁判所に傍聴のため出向いたポールとモーリーン。実刑判決はたったの4年だった。愛する娘を、ドラッグ運転手に轢き殺されて一家の人生をめちゃくちゃにした殺人犯が、たった4年の実刑判決とは。

被害者家族の気持ちを思うと、やりきれない。そしてその6日後、悲しみに暮れる間もなく、ポールは裁判所から召集命令を受けた。

驚きとショックで裁判所に出向いたポール。裁判では、被害者家族であるはずのポールが、加害者家族によって訴えられていたのだ。ポールには「ハラスメント」容疑がかけられていた。

警察の厳密な調査によると、犯人側の家族に故意に接触することは犯罪であり、被告人の父親に偶然会った時も、不必要に睨みをきかせたり、狭い道路を行き来するために被告が無理やり道を譲らねばならないような状況を作った、としてこれがハラスメントと認められたのである。

ポールへの判決は「無罪」

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結果、無罪が決定したのはほんの2日前のことであった。先月に警察側から「このケースに関してはもう取り扱わない。」と言われていたが、裁判所へは最後の判決のために召集がかかっていたので、月曜にオックスフォードシャー州の裁判所へ出向いたポールとモーリーン。

最終的には「お咎めなし」の無罪となったポールだが、メディアに語る。「もし、私が有罪判決を受けていたら、5年間刑務所に行かなければならなかった。娘を殺した犯人はたった4年ですよ!?こんなバカなことがあってはならない、って思いました。」

今もまだ、ショックがあるというが安堵もしたというポール。妻のモーリーンは、最愛の娘を失ったことでうつ病になり、オックスフォード大学の事務の仕事も辞めざるを得ない状況になった。

何より辛いのは、ポールの職場が、犯人一家と同じ通りにあるということだ。「毎日仕事に行くのが辛くてなりません。今は犯人は保釈中なんです。家の周りでウロウロ自由にしてる姿を見ると、やりきれなくなります。」

「妻も、私も、リバティの弟フィンリー(11歳)も、娘を失ってから毎日がとても辛いんです。今回、加害者側から訴えられたことで、私は被害者側なのに、まるで加害者の気分にさせられました。」

日本でもイギリスでも同じだ。被害者側は加害者家族に接触してはいけない。しかし、ポールの気持ちは痛いほどわかる。加害者一家が、すぐ近くに住んでいて、しかも場所もわかっている。

何をどう言えばいいかわからないが、会って何か、何か伝えてやりたい。直接会うまで、自分がどういう態度に出るかわからないが、とにかく向うの反応を見てやりたいーそういう気持ちだったのではないだろうか。

だから、犯人の母に接触した時も、ポールは道を尋ねるふりをしただけだった。心の中では犯人一家を罵倒したい気持ちでいっぱいだったはずだ。しかし、それをしても最愛の娘は帰って来ない。そういう虚しさもあったのだろうと思う。

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言いようのない被害者家族の怒り、悲しみ、虚しさ、寂しさ。一人の人間の命を奪うだけでなく、被害者家族全員の人生をも狂わせてしまうのだ。たった4年という判決は不公平でならない。

しかし、ポールのハラスメント疑惑の判決が無罪になって本当に良かったと思う。普通日本では、加害者家族は非難や中傷から逃れるために、みんなの知らないどこかへ引っ越していくが、イギリスではそういうことはないのだろうか。

だとしたら、今後も被害者家族は、ますます辛い思いをして生きて行かなければならない。近所に住んでいるとわかっているのなら、加害者側はせめて、被害者家族の目につかないような場所へ行くべきだ。

娘の命を奪われ、被害者家族が深い悲しみから立ち直るのは想像を絶する辛さと年月がかかるに違いない。加害者家族も被害者だ、と日本では言われるが、やはり家族を奪われた被害者の気持ちを思うと、やりきれない気持ちでいっぱいになる。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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