記事提供:まだ東京で消耗してるの?

これは素晴らしい作品!

時間を忘れて読みふけりました

ひきこもりから瞬く間に「IT長者」へ―驚愕のロングセラー『こんな僕でも社長になれた』を凌ぐ、その後の転落・逃亡・孤立を巡るどん底物語と、都知事選の裏側、そして“いま”を克明に描く衝撃作、満を持して刊行!!

出典 http://www.amazon.co.jp

ぼくは家入さんが大好きで、有料メルマガはもちろん、著書もすべて購入して読んでいます。

こちらの「我が逃走」は、「ファンである」というバイアスを抜きにしても、万人におすすめできる名著です。久しぶりに時間を忘れて読みふけりました。いやー、素晴らしい。

金づかいが荒すぎてヤバい

圧倒的に引き込まれるのは、上場して得た億単位のお金を、それはもうジャブジャブと浪費した話。「やめてー!!」と心の中で叫んでしまいます。たとえば「海の家」の散財。

いままでの常識をブチ壊すような海の家がやりたい。そう考えた僕は、内装にも外装にもドーンとお金をかけた。

(略)僕がつくった海の家の名前は、〈The Beach Cafe(ザ・ビーチカフェ)〉。白くまばゆいフロアからは七里ガ浜の海が一望でき、DJブースも完備していた。

江の島の花火大会のときは、真正面に花火が見えて、絶景が楽しめる。ラウンジスペースを用意し、さらに、足の角質を食べてくれるというドクターフィッシュの体験ゾーンもつくった。女の子たちのためのパウダールームも充実。

そして、極めつきが、海に面したジェットバス。水着のまま入ることができ、ライトアップすればパーティにうってつけのスポットになる。ひとことで言えばチャラい。海で遊ぶことを最大限に考えた、僕プロデュースの海の家だった。

昔の仲間はいないけれど、いまの仲間がたくさんいる。いつの間にか僕はこんなところに来ているけれど、僕は僕で、じつは何も変わらない。

「思えば遠くへ来たもんだ」という言葉がぴったりの、感傷的な気持ちだった。その日は日が沈むまで、とにかく飲んで飲んで、飲みまくった。

出典 http://www.amazon.co.jp

この海の家は、なんと1,000万円を超える大赤字。家入さんが設立したカフェ運営会社「パーティカンパニー」は、もちろん経営危機に陥ります。

家入さん!現実を見て!

しかしちっとも現実を見ない家入さん!秘書の内山さんを全力で応援したくなります。

内山さんはわかっていたのだ。僕が自信満々で進めている飲食事業は、客観的な数字から見ると不安材料があり余るほどあるということを。

事業単体では赤字で、僕の個人資金を使いながら運営している現状を、彼女は誰よりも問題視し、折を見ては忠告してくれていた。

「新しい店舗は、まだ出すべきではないと思います」「スタッフの人件費が高すぎます。売り上げの見込みが立ってから再設定すべきです」

だけど、何を言われても僕には響かなかった。

「大丈夫、大丈夫。お金ならいっぱいあるんだから」

そう、お金ならある。僕の揺るぎない自信は、その大きな一点にあった。

「いくらあっても、このペースでいけば、いつかなくなります。それにそのお金はあくまで社長個人のものであって、会社でつくったお金ではないんですよ」

「ハハハ、内山さんは心配性だなあ」

内山さんの真摯な言葉も、僕は母親の小言ぐらいに受け流していた。

出典 http://www.amazon.co.jp

受け流しちゃダメだよ!と全力でツッコミを入れること請け合い。

まだ逃げる!

さすが「我が逃走」だけあって、家入さんの逃げっぷりが只者じゃありません。

「社長、もう、来月の給料の支払いすら厳しいです」

「えっ、そんなに…。僕、いますぐ株を売るよ!」

「前にも言いましたが、株はすぐには売れません。もう、解雇するしかありません。みんなと話し合いをして、給料を下げてもらえればと思いましたが、こうなってしまっては、強制的に解雇するほかありません。仕方がないんです…」

永岡くんは、つらそうに言い切った。

「解雇はしたくない…」

僕はひたすら首を振った。永岡くんが語気を荒げる。

「来月、再来月、売り上げのない本部経費の三百万円をどう捻出するんですか。僕だって、必死に資金を回してきたんです。

でも、残念ながらもう無理です。少しでも早く会社を正常化させなければ、本部どころか店舗のスタッフまで路頭に迷わせてしまいます」

僕はイエスもノーも言えなかった。ただ黙って、永岡くんの声を聞いていた。

出典 http://www.amazon.co.jp

会社の危機です。経営者として、家入さんはなんとかしなければいけません。…はい、次の段落が、この時期の家入さんのクレイジーさを象徴します。

このつらい毎日から僕を救ってくれたのは、夜な夜な繰り返していた六本木でのバカ騒ぎだった。

(中略)この頃、「家入といえばテキーラ」という常識が生まれつつあった。あの、コーラばかり飲んでいた僕が、その頃にはテキーラを愛飲する飲んべえになっていた。

店に着いたらまず景気づけにテキーラ。誰かが着いたら、一緒にテキーラ。さらにはスピリタスと呼ばれる、アルコール度数九十六度のウォッカでつくられたゼリーを食べて昇天し、ドロドロの状態で朝を迎えることも多かった。

僕は、何もかもから逃げたかった。

出典 http://www.amazon.co.jp

いや、逃げすぎだろ!とやはり全力でツッコミたくなりますよね。

最後の袋小路

「騙されてるんじゃないと?」

電話口で、アキコさん(注:妻)が強い口調で言ったことがあった。

「今回の件、全部あなたが悪いの?あれだけあったお金が、こんなに急速になくなるものなの?私、ちょっと信じられないよ」

「うん…」

「どうも怪しいと思う。ちゃんと調べたほうがいいんじゃない?」

「うん…、ごめん」

アキコさんの言うことはもっともだった。でも、僕には誰かを疑うなんて、そしてちゃんと調べてみるなんて、そんな余力はもうどこにも残っていなかった。いい人ぶるわけではなく、単純に、思考停止状態に陥っていたのだ。

あれだけあったお金が、どうしてたった二年ぽっちでなくなるん?おかしいよ、絶対に

会社の資産は、イコール僕の個人資産でもあった。妻である彼女の立場からしたら、どれもまっとうな意見だった。

「でも、店舗もたくさんつくったし、人件費だってわりとかかってた。それぐらいなくなるよ」

「だって、ざっと計算してみたけど、どうしたって合わないんだもの」

そう言いながら、アキコさんは再び計算を始めた。どこから聞いたのか、店舗の立ち上げ費用を大まかではあるが把握しているようだった。

僕は言わなかったけれど、アキコさんの計算にはひとつ、抜けているところがあった。僕の途方もない夜遊び代だ。当時、僕は一日で三百万円ほど使うこともざらだった。(略)一日三百万円使う夜遊びを、仮に三十日間続けたら九千万円になる。

それに、自宅に帰りづらくなっていた僕はほかにもいくつか部屋を借りていて、住居費だけで月に三百万円くらいかかっていた。お金がなくなった要因のひとつは僕の無駄使いなのだ。誰かを疑うまでもない。

しかし、真実を知らないアキコさんは追及の手をゆるめなかった。

「身近にいる人は本当に信用できると?」

出典 http://www.amazon.co.jp

この人、おかしい…!

秘書・内山さんがすごい

本書の白眉は、なんといっても秘書の内山さん。読後、あなたは必ずや、内山さんのファンになっているはず。ハッシュタグまであるくらいですから!

一時期、無給で秘書をやっていたというから、面倒見のよさに驚かされます。内山さんいなかったら本当に死んじゃってたんじゃないかな…。

「そんなに無理しないで。内山さんのお給料はちゃんと払うから…」

「そうはおっしゃいますが社長、いま現在、口座にいくらあるかおわかりですか?私はすべて把握しています。把握したうえで、自分の給料が出せないという状況なんです。このことを咎める気はありません。

とにかくいまは少しでも出費を減らして、同時に回収でお金をつくることが先決です。ですから、私を疑うような寂しいことはもうおっしゃらないでください。お願いします」

もはや、何も返す言葉がなかった。

出典 http://www.amazon.co.jp

家入さんは、そんな内山さんが捻出したお金も、六本木で散財します。ダメ人間すぎる!

それからというもの、僕は日ごとに自暴自棄になっていった。内山さんが血を吐くようにして工面してくれたお金も、すぐに下ろして、すぐに使った。

六本木ではいつもどおりに大金をまき散らす僕の姿があったから、みんな僕の変化には気づかなかっただろう。

出典 http://www.amazon.co.jp

流石の内山さんも錬金術ができるわけもなく、自分自身をクビにせざるをえなくなります。

すでに内山さんは、彼女が行っていたさまざまな業務を、しかるべき人たちへと分散させ、引き継いでくれていた。さらに、この先数年分の僕の生活が保障されるような経理計画を立て、税理士事務所へ伝えてくれていた。

「私の計算では、来年には少し、暮らしが楽になると思います。それまで頑張ってくださいね」

そう言われても、僕の不安は収まらなかった。そして肝心の秘書業務だけは、引き継ぎ先が見つからなかった。

スケジュール管理とか、どうしよう

「私がいなくても大丈夫ですよ」

出典 http://www.amazon.co.jp

内山さん、逃げて!もういいよこの人は!

没落と再生の物語

ここまでが盛大なる没落部分。このあと、家入さんの人生はひとまず再生?へと向かいます。終盤では内山さんも再登場するので、乞うご期待。

続きが気になる方はぜひ本書をポチッと。Kindle版が用意されているのも嬉しいですね。2015年、一押しの作品です。

マニアックな人向けに、本書で注目すべきは「編集技術」であることも付け加えておきましょう。これ、本当に、編集者の方がすごいです。

家入さん、この本の原稿を自分では全編書いてないはずです。一読すればわかりますが、家入さんは、このようによく構成された一冊の本を、自力で仕上げることができるようなタイプではありません笑

なので、彼の作品は編集者による「聞き書き」が基本なのです。

というわけで、「編集者が家入さんの話を聞いて、見事にストーリーを書き上げた」という目線で読むと、その編集能力に感動してしまいます。平凡社、優秀な方がいらっしゃるんですねぇ。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス