アメリカでは5月末から6月にかけてが卒業式のシーズンです。
南カリフォルニアのタスティン高校で、今年の卒業生と共に卒業証書を授与された老夫婦がいました。

ジョージさん&ミコさんのカイハラさんご夫婦はともに90歳

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1941年12月の真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まった時、お2人は同じタスティン高校に通う11年生、日本で言う高校2年生でした。

義務教育の小学校から高校までを通しで1年生〜12年生とするアメリカでは、小学校入学時点から高校卒業年次をもって「クラス・オブ・◯◯◯◯年」と呼ばれるのですが、「クラス・オブ・1943年」であるはずのお2人は、他の日系人家族達とともに1942年の5月にアリゾナ州のポストン収容所へ送られ、友人達とともに卒業することが適わなかったのです。

当時、ジョージさんはバスケ部に所属していました

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部活の集合写真として1942年の卒業アルバムに写真が残っています。ジョージさんは40番です。

その1942年の卒業アルバムに載っているジョージさん

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旧姓ナカムラさんだったミコさんの写真もあります

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卒業アルバムには卒業生の写真だけでなく、在校生全員の顔写真を載せるのが、現在も変わらない通例となっています。卒業式は6月、収容されたのが5月ですから原本が印刷所にまわっており、いなくなった日系の学生達の写真を抜く時間はもう無かったのでしょう。

でも、1943年の卒業式のプログラムには2人の名前はもうありませんでした

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他にあと2人、収容所に入った日系人学生がいたそうで、その人達の名前もありません。高校受験がありませんから、公立校なら幼稚園からずっと一緒に育って来た仲間のうち4人も欠けたのは大変なことだったに違いありません。

2人が住んでいたオレンジ郡の人達が送られた、アリゾナ州ポストン収容所

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まわりに何もなく、建てかけのバラックもありますから、本当に初期のころの写真だと思います。

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こちらになると、植え込みや植木もあり、一つの町の様相を呈しています。筆者は住んでいるシアトルという土地柄、収容所経験のあるお年寄りの話を聞く機会も多いのですが、将来の見えない絶望を感じながら、子供達には悲しい思いや寂しい思いをさせないよう、なるべく普通に生活するよう大人達が心をくだいたそうで、町並みを整えることもその心配りのひとつだったのだそうです。

戦時中の1943年6月に、ジョージさんとミコさんは卒業を迎えます。にわか造りで先生もろくにおらず、授業もままならなかったポストン高校の卒業証書には、何の感慨もなかったことでしょう。

そして翌1944年にジョージさんは兵役の年を迎え陸軍に入隊しますが、配属が決まらないうちに1945年9月の終戦を迎えます。先に従軍していたジョージさんのお兄さんは、アメリカ史上もっとも危険な任務についたので有名な第442連隊にいたそうです。

1950年6月に、お2人は結婚しました

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小学校だけは違ったものの、日本語学校で知合い、中学からはずっと一緒の学校だった2人でした。ミコさんはジョージさんの妹さんと連絡を取り合っていたので、除隊後に会いに行き、結婚にこぎ着けたそうです。

まだ日系人に対する差別等も残っていましたが、安定した職も得て家族も増え、話はそこで終わるはずでした。

昨年のある日、老弁護士が生まれ故郷のタスティンのサロンに散髪に行きました

髪を刈ってもらっている間のとりとめも無い世間話で、スタイリストの友人のカイハラ夫妻が自分と同じく1943年の卒業生であることを聞かされて驚き、その場で連絡をとってもらい、それがジョージさんとミコさんであることを確認しました。

デニス・ヘイデンさんはジョージさんの幼馴染みでした

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1942年、日系人達が強制収容されてほどなく、17歳で海軍志願兵となったヘイデンさんは他の同級生達より一足早く卒業する形になり、実情を知らないまま、ジョージさんとは全く連絡が取れていなかったのです。

取るものも取りあえず車に飛び乗って夫妻に会いに行き、旧交を温めるうちに、2人が思い出深いタスティン高校の卒業証書を受けていないことを知って、すぐさま市の教育委員会に働きかけたのでした。

そして2015年6月18日、大勢の若者に混じって卒業証書を受ける2人の姿がありました

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式典にはお子さんやお孫さん達が、遠くはDCから17人が駆けつけました

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やっと母校の卒業証書を手にした気持ちを聞かれ、イイネしてみせるミコさん

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自宅のどこに卒業証書を飾るか考えなければならない、なぜなら「私ね、目立つところに架けたいのよ」とミコさんが答えたのだそうです。

嬉しさが伝わって来ますね!

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