飛行機づくりに青春を捧げる、ある女子大生の物語

金沢工業大学で航空システム工学を学ぶ杉田萌さん。現在3年生の彼女は、1年次より「人力飛行機プロジェクト」に携わっています。

高校までは普通科に通っていたという彼女が、なぜ男だらけの工業大学で「飛行機づくり」に携わることになったのか。杉田さんの夢への軌跡を追ってみました。

実家はロケット部品の工場

出典 http://www.gettyimages.co.jp

(※写真はイメージです)

三重県出身の杉田さんの実家は、ロケットに使う部品などを製造する工場。

彼女にとっては潜在的に「ものづくり」や「航空」というキーワードは身近だったのでしょうか。高校までは普通科の進学校で学んでいましたが、高校3年生の秋に、「ものづくり」への思いが突然わき上がってきたといいます。

杉田さんは当時のことをこのように語っています。

「アニメ映画『風の谷のナウシカ』にメーヴェというハンググライダーのような飛行機がでてくるんです。あれを実際につくって、空を飛んだ人がいるという記事を読んで、わたしもやっぱり大好きな飛行機づくりに携わりたいと思ったんです」

グローバル化が進み、航空業界はこれから伸びる産業だとも考えた杉田さんは、航空工学を実践的に学ぶことを決意。進学先として、ものづくりで有名だった金沢工業大学を目指すことに決めました。

入学してみると、そこは男子だらけの世界

杉田さんが、入学したのは金沢工業大学の航空システム工学科。「飛行機を作りたい」夢を叶えるために、彼女は「人力飛行機プロジェクト」に参加することにしました。

しかし、参加メンバー70人以上のうち、女子はたったの6人。翼の全長約30mの人力プロペラ飛行機を製作するために、プロジェクトは「翼班」「プロペラ班」「駆動系班」「コックピット班」など、6班に分かれていましたが、所属した「駆動系班」では、女子は杉田さんだけでした。

最初は戸惑いも…

高校までは、男子と話すタイプではなかったという杉田さん。男子の先輩という存在も初めてで、最初は何を話してよいか戸惑ったそうです。

しかし、先輩たちが通常の活動時間外にも親身になって指導してくれ、杉田さんもその気持ちに応えたいという想いが強くなっていったといいます。その結果、専門的知識や技術の習得に励むことができ、次第に男子と話すことへの戸惑いも減っていったそうです。また、金沢工業大学は、授業でもチーム活動が多いので、その点も抵抗が薄らいでいくきっかけとなりました。

杉田さんが所属する「駆動系班」は、主に金属を使ってプロペラの軸など、飛行機を動かす動力を伝えるパーツを作るのがミッション。1年次はひたすら金属加工を練習し、2年次からは設計にも関わるのだといいます。

平坦ではない夢への道

入学間もない1年次の杉田さんは、琵琶湖で行われた「鳥人間コンテスト」を観戦。先輩たちが作った機体が空を舞うのを間近で見て、今まで感じたことのない高揚感に包まれたといいます。「次はわたしたちも!」自分たちの代の機体に対する思い入れも強くなり、日々の活動への意欲につながりました。

「鳥人間コンテスト」2年連続の書類審査落ち

しかし、2年次の2014年大会では書類審査で不合格。翌年の2015年大会も同じく書類審査に夢を阻まれました。

2015年の機体は、杉田さんたちの代がメインで設計をした機体。関わりが大きかっただけに、審査落ちの知らせに、杉田さんは落ち込みました。

だけど、ここで夢は終わらせられない。次の機体に対する思いを胸に、杉田さんは立ち直りました。

大所帯のプロジェクトであるが故に、メンバーそれぞれも温度差は否めません。しかし、大会出場という目標への気持ちは同じ。その夢を今年は叶えることができませんでしたが、今は、7月末からのテストフライトにむけ、メンバーがそれそれの役割を果たす毎日だそうです。

夢をカタチにできる場所「金沢工業大学」

人に役立つものを創る人材育成と研究開発

杉田さんが学んでいる金沢工業大学は、技術者教育の世界標準「CDIO」を日本の大学で初めて導入したことで知られる大学。2015年には、女子の入学者数も過去最多となり、人の役に立つものを創りだす知識と技術を身につけられる大学として、注目を集めています。

授業では、ユーザーは何を必要しているのかチームで考え、解決策を試作品として具体化して検証。学生同士で学び合い、議論し、ものをつくり、実験するワークスペースも充実したクリエイティブな環境となっています。

中でも、学部・学科の垣根を越え、学生自身が企画立案から設計、制作、予算管理まで行う「夢考房プロジェクト」は、企業からの注目度も高く、生徒の自主性や創造性を高めています。

杉田さんが参加していた「人力飛行機プロジェクト」も、そんな夢考房プロジェクトのひとつです。

「夢考房ロボットプロジェクト」では、ロボコン世界大会で優勝しました。日本代表が世界大会で優勝したのは過去、東京大学と金沢工業大学の2大学だけです。

杉田さんはいいます。「成功はあるが、正解はない。根拠のない成功は嬉しくない」と。飛行機の構造解析に実直に向き合い続ける、杉田さんらしい言葉です。「大会出場は叶いませんでしたが、わたしには、大きな自信になる技術とかけがえのない仲間が残りました」

金沢工業大学は、夢へと続く技術と自信、そして卒業後も応援し、支え合える素敵な仲間に出会える場所なのかもしれません。

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