「と学会」の初代会長としても知られるSF作家・山本弘の著作『ニセ科学を10倍楽しむ本』。最近文庫版も出たこの本ですが、現役クリエイターが発行するメルマガ『日刊デジタルクリエイターズ』でも“面白い”と評判となってるようです。

ナントカ陰謀説が好きだ

またもや『ニセ科学を10倍楽しむ本』から。お気に入りは「アポロ11号は月に行っていない」「9.11はアメリカの自作自演」である。

もちろん、両方とも陰謀論者たちが作り上げた大ウソだが、かなりもっともらしいことを主張しているので、コロッと騙された人は少なくないようだ。

アポロに関する疑惑として、「月の空に星が写っていない」「太陽が当たっていない部分が明るく写っている」「影の向きがおかしい」「旗が風で揺れている」など13項目ある。

明らかに間違った項目もあるが、そういえばそうだなと思う疑惑もある。「なぜもう一度行けないのか」、これには同意してしまう。

この本では、中学生が本やビデオやネットで調べて「アポロ陰謀説の真相」というレポートを書くという設定で、彼女らがあまりに頭が良すぎるのはともかく、13項目すべてにしっかり答えを出している。

「なぜもう一度行けないのか」の答えは「お金がないから」である。

1960年代、アメリカがアポロに使った金は250億ドル、1ドル360円の時代、日本円でざっと9兆円、当時の物価は今より安かったから、今やるとなったら何10兆円になるかもしれない。

ソ連との宇宙開発競争という動機があったからできたことで、それに勝利したからもう月に行く意味がなくなり、20号までの予定が17号で打ち切られたのだ。

40年前に月に行けたというなら、もう一度行ってみせろ」は「400年前に大阪城を建てられたというのなら、もう一度建ててみせろ」と言っているのと同じというたとえがうまい。金があればできるが、もう誰もアポロや大阪城に金を出さないのだ。

「テレビもインターネットも、不正確な情報やウソの情報をいっぱい流している。だから、それをすぐ信じちゃだめなの。『ほんとかな?』と思ったら調べてみる。

怪しい話は信じない、それがメディア・リテラシーというものよ」中学生にいわれちゃったよ。最後にある「ニセ科学にひっかからないための10箇条」は当たり前のことながら、なかなか実践できないものだ。

2014年にアメリカの半導体メーカーINVIDEA社が、最新のCG技術を用いて、アポロ11号の月面写真が本物かどうか分析した。船長が撮影した写真(疑惑の写真)をCGで再現し、月面と同じ条件で光の強さや当たり方が同じになるか調べた結果、間違いなく真正の写真であった。

1969年にはまだCG技術はなかった。撮影しようとしたらセットで人工照明を当てるしかないが、それではCG再現写真とは光の当たり方が違ってしまう。

CGで本物そっくりの写真がつくれるようになったからこそ、逆に写真が本物であることが証明できるようになったわけだという。実におもしろい話だ。ニセモノは必ずバレるんだ。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス