【1】トトロに関する、不穏な伝説

「となりのトトロ」を、今更紹介する必要は無いだろう。1988年製作の、ものすごく有名なアニメだ。製作したのは「スタジオジブリの宮崎監督」。トトロの他にも「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」などなど、名作が数多く並ぶ。

念の為「となりのトトロ」のあらすじをザックリ紹介すると、「サツキとメイという2人姉妹が、緑豊かな村落で、トトロという不思議な生き物と触れ合う」という話だ。非常にメルヘンチックな話である。

ところが、この作品に関して「穏やかでない伝説」がアチコチで語られるという現象が起きた。その内容は「トトロは死神であり、サツキとメイは劇中で死んでいる」という話だ。アニメのストーリーを考えると、にわかには信じがたい。

【2】なぜ「死後の世界の話」と言えるのか?

「トトロは死神」とする方々の、主張と根拠を調べてみた。この都市伝説について触れたサイトも多く、主張が少しずつ違っていたりするのであるが、筆者なりにまとめてみると、以下の様な内容になる。

●トトロのモデルは、北欧に伝わる怪物「トロール」である。トロールは人を誘拐し、死の国へ連れて行く恐ろしい存在である。

●猫バスという「生きている乗り物」が出てくるが、あれは死者の魂を黄泉に連れて行く乗り物、いわば「三途の川の渡し守」である。

●「猫バス」に乗車する前後で、メイとサツキの影が消えている。これは、生きている人間では無くなったからだ。

●メイが行方不明になり、村人総出で捜索するシーンがある。そこで子供用サンダルが池から発見される。確認を求められたサツキは、メイのサンダルであるにも関わらず、「メイのサンダルじゃ無い!」と否定する。メイの死を悟ったが、認めたく無かったからだ。

●最後のシーンで、サツキとメイは「病気で入院しているお母さんのお見舞い」に行ったのだが、お母さんには直接会わなかった。なぜなら、死んでいてもう会えないからだ。

●エンディングで、お母さんとサツキとメイが一緒に過ごすシーンが流れるのだが、明らかに「過去の出来事にさかのぼっている描写」である。サツキとメイは、お母さんが退院する前に死んでいるので、どうしても昔の描写になる。

【3】各説への疑問

トトロのモデルは、北欧に伝わる怪物「トロール」で、トロールは死神である。

トロール伝承は北欧各地に残っており、地方によってかなり違う。「人を殺す」とする地方もあれば、「富をもたらす」という地方もある。「タダのイタズラ好き」とする説もある。しかし、筆者が調べた中には、「死神」という説が無かった。

出典 http://www.gettyimages.co.jp

上記画像が「トロール」で検索した結果の画像。見た目は、トトロと似ていない。ちなみに、後ろの旗はノルウェーの国旗だ。トロールは北欧ではメジャーな存在で、マグカップなどの「土産物のデザイン」によく使われるキャラクターなんだとか。

また、「トロールがモデル説」について探していくうちに、「トロールがモデルでは無い」とする説も発見した。それは、埼玉県の「所沢(ところざわ)」を小さな女の子が発音した時に、うまく発音できず「ととろざわ」と言ってしまって、それを聞いた宮崎監督がアイデアとして使ったというモノだ。これも明確な根拠を筆者が探せなかったので、死神説とどっこいどっこいなのだが、説としては面白い。

●「猫バス」に乗車する前後で、メイとサツキの影が消えている。これは、生きている人間では無くなったからだ。

影がだんだん変わっていくのはアニメから見て取れるが、完全に無くなってはいない。この場面は夕方から夜にかけてのシーンなので、影の濃さが変わるのは別におかしな表現では無い。また、物語の舞台が「昭和30年代くらいの田舎」という設定なので、街灯などの数も少なく、暗くなっても影が出来にくい状態である。

●メイが行方不明になり、村人総出で捜索するシーンがある。そこで子供用サンダルが池から発見される。確認を求められたサツキは、メイのサンダルであるにも関わらず、「メイのサンダルじゃ無い!」と否定する。メイの死を悟ったが、認めたく無かったからだ。

作品を見ればハッキリするが、メイが履いているサンダルと、村人が捜索した結果見つかったサンダルを実際に見比べてみると、明らかにデザインが違う。そもそも、サンダルはエンディングまでちゃんと両方揃っており、メイが履き続けている。

仮に、サンダル発見時点でメイが死んでいるのであれば、エンディングでの「メイと村のおばあちゃんが抱き合って泣くシーン」の説明が付かない。都市伝説肯定派は、そのシーンについて触れていない。

●エンディングで、お母さんとサツキとメイが一緒に過ごすシーンが流れるのだが、明らかに「過去の出来事にさかのぼっている描写」である。サツキとメイは、お母さんが退院する前に死んでいるので、どうしても昔の描写になる。

エンディングでは、お母さんとサツキとメイが、一緒の布団に寝るシーンなどがある。よく見ると、劇中とはデザインや色合いが若干違う気はする。サツキやメイはやや小さいし、お母さんの肌艶も良い。しかし、村のおばあちゃんと一緒に、すり鉢で何かを作っているという描写もある。過去の話と考えると、時系列が合わないので、「お母さんの退院後」とする方が自然。つまり、さかのぼった描写では無い。

上記の様な理由から、この都市伝説の根拠には疑わしい点が多く、信じられるモノでは無い…と筆者は結論付ける。

【4】そもそも、何で都市伝説化したのか?

なんでそうなったのか?と言われれば、筆者が思うに「人気の裏返しである」という事だろう。マイナーな作品では、ここまで話が広がらない。「となりのトトロ」が多くの人の感動を呼ぶ名作だったからこそ、その反動で恐ろしげな都市伝説が発生するのではないだろうか。

しかし、他に理由があるとすれば、それは宮崎監督の製作姿勢にあるのではないか?と思ってしまう。筆者がそう思う理由となったのは、スタジオジブリの広報戦略を担当した重鎮、鈴木敏夫さんがテレビで語った話だ。

出典 http://www.gettyimages.co.jp

鈴木敏夫さんは、スタジオジブリの代表取締役も務めた敏腕プロデューサー。この方が、2013年11月26日放送の「100秒博士アカデミー」というテレビ番組の中で、ジブリの裏側について語っていた。

上記番組で、鈴木氏が語ったところによれば、宮崎監督は「宣伝などにあまり興味が無い」「作品を作りながら話を考えるので、最初から全て決まってはいない」「オチが監督自身の中に無いまま製作が進んで行くので、それに合わせる周囲は結構しんどい」などの特徴があるそうだ。

天才アニメ作家ならではの特徴とも思えるが、それ故にどこかでズレが生じ、それが材料となって都市伝説が出来上がるのかも?と思えてしまう。

【5】なんと、公式声明まで出た

この都市伝説騒ぎ、かなり大規模になった模様だ。恐らく、ジブリにも問い合わせが殺到したのだろう。その結果からなのか、ジブリの広報担当が、公式HPで以下の文章を掲載している。

「トトロは死神なんですか?」という一般の方からの問い合わせばかり。みなさん、ご心配なく。トトロが死神だとか、メイちゃんは死んでるという事実や設定は、「となりのトトロ」には全くありませんよ。

最近はやりの都市伝説のひとつです。誰かが、面白がって言い出したことが、あっという間にネットを通じて広がってしまったみたいなんです。

出典 http://www.ghibli.jp

スタジオジブリ公式サイトのブログ「いつものジブリ日誌」2007年5月1日の記事より。明確に否定されている。製作サイドが公式に否定した以上、「この都市伝説はウソ」と解釈するのが自然だ。

【6】トトロには、後日談があった

さらに付け加えるならば、トトロには後日談と思われる作品がある。「めいとこねこバス」という作品。メイが死んでいるならば、後日談として成り立たない。

【7】終わりに

「となりのトトロ」は、DVDやブルーレイで売られているし、レンタルサービスでも見る事ができる。定期的にテレビ放映もしている作品だ。公開から30年近く経過した今でも、目にする機会は多い名作だと思う。「そんなに怖い裏設定は無い」とジブリの広報さんが断言しているので、安心して楽しんで欲しい。

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