子供にとって父親と母親と一緒に暮らすことは何より幸せなことだと思う。しかし、夫婦間が上手くいかないことにより、離婚や別居を余儀なくされる時もある。残念なことに、イギリスでは籍を入れた夫婦も、そうでないカップルも、子供がいても別居・離婚の確率は日本よりはるかに高い。

今、イギリスでは、親権を巡って争った挙句、裁判で負けた母親が3歳の息子を連れて行方不明になるというショッキングな事件が起こっている。母子は一体どこへ行ってしまったのかー。

今も行方不明中

出典 http://www.dailymail.co.uk

イギリスのサマーセット州、ハイブリッジに住むレベッカ・ミノック(35歳)は2012年にイーサン(3歳)を出産するも、2013年にイーサンの父親であるロジャー・ウイリアムと別れてしまう。

両親が別れて以来、イーサンはレベッカと二人暮らしだった。そしてこの2年間、親権を巡っての争いが、度々裁判所で行われていたのだ。

イギリスでは、離婚する場合、日本のように紙切れ1枚というわけにはいかない。イギリス人同士でも1年以上様々な手続きに時間がかかってしまうのだ。家や車、家財道具など、イギリスでは財産分与の手続きが複雑なのだ。

子供がいない夫婦の場合はその期間がほんの少し短くなるが、それでも正式に離婚するまで、長時間かかってしまうとストレスが貯まるし、結果的にはエネルギーも何もかも使い果たして、疲れしか残らない場合が多い。

複雑極まりない環境で育つ子供

出典 http://www.groundworkcounseling.com

筆者の周りにも、正式離婚するまで何年もかかっているイギリス人夫婦がいる。この夫婦には子供がいるので更にやっかいだ。そして結婚と同時に2人で新居も購入したのでその財産分与の件がある。

しかし、家が売れなければ財産分与はできない。家がなかなか売れないので、どちらも出ていけないのである。もし片方が出て行けば、当然不利になる。しかし、複雑なのはこの元夫婦に、既にお互い新しいパートナーがいるということだ。

一緒にこそ寝ていないが、同じ一つ屋根の下で生活し、子供の面倒も今までと変わらず見ているのである。子供が小さければまだ理解できないだろうが、ある程度の年齢に達してると精神的に影響が出ないか心配である。

イギリス人は、新しいパートナーができるとオープンだ。だから家の中でお互い新しいパートナーと顔を合わせるということもじゅうぶんあり得るのである。こういう複雑極まりない状況で育つ子供は大丈夫なのか、また、お互いの新しいパートナーの気持ちはどうなのだろうか、と色々考えるが、日本人の筆者には理解の範疇を超えている。

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更に、裁判での親権の争いは神経をすり減らす。日本では、よほどのことが無い限り、親権は母親にいくものであるが、イギリスはそうはいかない。別れた夫側が拒否しない限り、親権争いは平等に行われる。

今、世間を騒がせているこの事件も、まさに親権を巡っての争いが行われていた。そして今から2週間前に母親のレベッカは親権争いで負けたのだ。判決により親権は父親側に、しかも今後、息子と父親に連絡を取ることは禁止されたのだ。

当然レベッカは裁判で、親権の申し立てをした。しかし却下されてしまったのだ。それだけでなく、今後愛する息子に接見もできないとは。あなたならどうするだろうか。愛する子供と離れ離れになって、会えなくなるなんて…きっと足元から崩れ落ちそうになるに違いない。

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レベッカは一人息子のイーサンを育てながら生活保護を受けていた。仕事を持っていなかったのである。裁判では、仕事を持っていて子供の面倒を難なく見られる親側に、親権が行くことが多い。きっとレベッカの場合もそうだったのだろう。

しかし、レベッカにしてみれば、夫と別れて子供が支えだったはずだ。一緒に暮らして、共に支え合ってきたに違いない。レベッカに新しいパートナーがいたかどうかは、情報としては不明だが、子供を失ってしまうことにかなりのショックを受けたのだろう。

判決後、母は息子と一緒に逃げた

出典 http://www.dailymail.co.uk

裁判での判決当日、レベッカは「父親に息子の親権を取られた。」と母親に電話をしたという。母は「それでもしっかりしなきゃだめよ。」と励ましたが、かなりショックな様子が伝わってきたそうだ。

そしてその翌日、母子は姿を消したのだ。レベッカとイーサンの行方不明に、レベッカの家族が関わっていると警察が疑い、レベッカの母と、兄妹を逮捕した。しかし三人とも「レベッカとイーサンの居場所は知らない」と話している。

心配するレベッカの家族

出典 http://news.nationalpost.com

今回、裁判所で異例の措置が取られた。普通なら事情はプライバシーもあるので公にはしないのだが、1日も早くイーサンを見つけ出すという目的で、裁判所は、メディアに情報を公開した。

更に、レベッカの家族に対し「正直に話さないとあなたたちも罪を問われる」と諭した。しかし、「本当に知らないんです。レベッカとイーサンが行方不明になる1日前に電話をしてきて以来、連絡がないんです。心配で心配でしょうがないし、とにかく連絡がほしい。」と母は語る。

だが、レベッカの兄は「これまで、3回非通知でレベッカから連絡があった。」と話したという。だが「心配しないで、イーサンも私も大丈夫、元気だから。」と言っただけで、どこにいるのか聞いても答えなかったと裁判官に話した。

出典 https://maxlucado.com

「妹は、自分の子供を危険にさらすような人間ではない。だから2人は安全だと信じている。しかし一生こうやって逃げ続けることはできない。いずれ見つかるだろう。でもその時には全てを失ってしまうかもしれない。」

レベッカの兄は、今回の親権争いの判決は不公平だとして、インターネットで1431人もの署名を集め、facebookで妹をサポートするように呼びかけた。そしてレベッカの元夫に対し怒りを露わにした。

「裁判でも発言してあるように、レベッカは精神疾患を患ってなんかいない。それは社会福祉団体も、精神科医も証明している。きちんと子育てをしていた。なぜ、彼女に親権が与えられなかったのかそれが理解できない。」

どうやって生活してるのか

出典 http://buzzkenya.com

レベッカが子供を連れて行方不明になってる以上、生活保護は受けられない。受け取ると居場所がわかってしまうからだ。しかし、3歳の子供を抱えて、生活保護受給者であるレベッカはどうやって逃げ続けるのだろうか。

出典 https://thestatuswoe.wordpress.com

レベッカの家族は祈る気持ちで日々過ごしている。5月27日からこれまで行方不明になっているレベッカとイーサン。

レベッカの母は言う。「仕事をしていないから親権で不利になることはわかってはいたようです。でも、まさか連絡まで禁止されるとは思ってなかったと思います。どんなにショックだったか…。」

「とにかく2人とも無事で、1日も早く出てきて欲しい。」レベッカの家族はそれだけを祈っている。今、レベッカとイーサンはどこにいるのだろうか。レベッカが、27日にATMでお金を引き出した姿がCCTVに記録されていた。

母親として親権を奪われたこと、息子への接見を禁止されたこと、恐らく気が狂いそうだったに違いない。きっと後先考えずに「この子といっそどこかへ逃げてしまおう」と思ったのだろう。しかし現実は、それをすると全てを失う可能性が高くなるだけだ。

時に、裁判は不公平だ。裁く者も1人の人間であるから、判決はその人の裁量でしかない。殺人と違い、イギリスではこういった親権の争いには陪審員は介入しない。それゆえ、これまでの弁護士からの資料と裁判官次第で判決が下されるのだ。

同じ母親として強く思う。どうか、この親子を引き裂かないであげてほしい。どうか、署名した人達、レベッカをサポートする人達の気持ちが報われてほしい。せめて、レベッカが今後息子に会えるように。レベッカにとって、これ以上最悪な結末とならないように、1日も早く姿を見せてほしい。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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