記事提供:カラパイア

SFではお馴染みの人体冷凍保存、コールドスリープだが、その実現がさらに一歩近づいた。研究者によれば、動物実験で、記憶をそっくり残したまま冷凍保存から無事目覚めさせることに初めて成功したというのだ。

実験に使われた線虫の脳は人間よりもいくぶんシンプルな構造だが、コールドスリープにまつわる重要な疑問に回答された形だ。

総じて冷凍保存からきちんと目覚めることができる生物は多くはないし、哺乳類に至ってはこれまで1度も成功したことがない。

しかも、仮に無事目を覚ますことができたとしても、記憶や人格が元通りのまま保たれているのかどうかも疑問視されていた。

しかし、今回の実験結果では、少なくとも線虫の脳に蓄えらえた記憶は、このプロセスを生き残ることができると判明した。

米アリゾナ州スコッツデールに拠点を構えるアルコー延命財団のナターシャ・ヴィタモア博士によれば、今回の結果は冷凍保存後も記憶を保てるという最初の証拠であるという。

将来的な医療の進歩に望みを託して死後に冷凍保存された人は、世界中でも300人ほどだ。

だが、同業界は激しい批判を浴びており、科学者からも反対の声が寄せられている。何より、SF映画では非常にポピューラーなテーマであるが、人間はおろか哺乳類での成功例すら皆無だ。

一部のカエル、北極圏の魚、昆虫は、細胞内に天然の不凍剤を有しており、これが氷から身を守ってくれるため、複数回の冷凍/解凍サイクルを生き残ることができる。

また、ヌマエラビルは-196℃の液体窒素に24時間入れられても復活でき、-90℃の低温の中で3年間近くも生きられることが知られている。

しかし、他の動物では、冷凍時にできる氷の結晶によって細胞が破裂したり、損傷を受けてしまう。これに対応するため、細胞を保護する不凍液が開発された。また、ガラス化法のような急速冷凍技術によっても、損傷を抑えることができる。

こうした努力によって、哺乳類の細胞や、さらにはウサギなどの臓器をまるごと保存できるようにはなってきた。だが、身体全体となると打つ手がないのが現状だ。

加えて、こうした技術が繊細な構造を持つ脳に与える影響も、議論の対象となってきた。ヴィタモア博士とセビリア大学のダニエル・ブランコ氏らのチームが提示したのは、こうした議論に対する回答である。

『リジュヴィネーション・リサーチ』誌に掲載された論文によれば、同チームは、シノラブディス・エレガンスという線虫を訓練し、ベンズアルデヒドを嗅いだときに特定の反応をするようにした。そして、訓練した線虫と、していない線虫を異なる方法で冷凍保存し、30分後に解凍した。

すると、緩慢冷凍法ではガラス化法の3分の1の成功率という違いはあるものの、いずれのグループでも臭いに対する反応の記憶を保持していることが確認された。研究結果では、臭い記憶テストにおいて、冷凍線虫は非冷凍線虫と同等であったことが示されている。

これについて、緩慢冷凍法およびガラス化法で利用された抗凍結剤が、嗅神経刷り込みや長期記憶の制御メカニズムに影響したり、変更してしまわないことが証明された、と研究者は述べている。

また、緩慢冷凍法もガラス化法も同メカニズムに対して影響を与えないことが明らかとなった。

今後はより複雑な神経系を持つ生物を使った研究が進められるそうだ。

●冷凍保存の世界

アリゾナ州に拠点を置く世界最大の冷凍保存企業アルコー延命財団は、一体2500万円ほどで遺体の冷凍保存を実施している。

出典 YouTube

この業界には、医療の進歩によって、いつの日か死から蘇ることができるかもしれないと望みを掛けた人たちが集まる。

アルコー延命財団の液体窒素タンクに納められた遺体の中には、“打撃の神様”の異名を取った伝説の野球選手テッド・ウィリアムズの姿もある。

生きた人間を冷凍保存することは違法であるため、依頼主が冷凍されるのはあくまで死んだ後だ。

全身をそっくり保存することを希望する顧客もいれば、脳だけを保存し、将来的に生体に移植される日を夢見る者もいる。こちらはおよそ1000万円と料金が抑えられている。

保存は、まず遺体を氷のベッドに寝かせ、さらにみぞれ状の氷の層で覆うことから始まる。心肺蘇生器という機械によって身体には血液が循環され、ここに細胞の劣化を防ぐための薬剤が投入される。

その後、血液と体液が抜かれ、代わりに不凍液とでも言うべき液体が入れられる。主要な血管は血液をさっと流した後、不凍液で満たされる。こうしておけば、氷の結晶が形成しないため、細胞の損傷を避けることができる。

この処理の後、遺体は1時間毎に0.5℃ずつ冷却され、3週間かけて-195℃まで冷却され、最終的に保管される。

出典:dailymail

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