場面緘黙(かもく)症という言葉を聞いたことがあるだろうか。世間一般には聞き慣れない言葉だが、言語障害の一種である。ここに一人のイギリス人の少女がいる。彼女は24歳になった時、ビューティコンテストでミス・イングランドの座を勝ち取った。だが彼女は幼少の頃、場面緘黙症を患い、苦しんでいた時期があったのだ。

外では全く話さない子供だった

出典 http://www.dailymail.co.uk

イギリスのハートフォードシャー州に住むカースティ・ヘーゼルウッドは家の中では普通に喋るが一旦外に出ると言葉を全く発しない「場面緘黙症(selective mutism)」に苦しんでいた。

4歳になって保育園に入ったカースティ。その頃を振り返って言う。「今でも覚えてるわ。全く泣かなかったのよ。でもママの足をしっかり掴んで放そうとしなかった。ママに置いてかれて、一人で保育園にいるのがたまらなく嫌だったのね」

「保育園のスタッフは私の気持ちを解そうと一生懸命になってくれたわ。でも、私、とてもシャイで怖がりな子供だったの。話そうとしても口から言葉が出て来なかったのよ」


カースティは保育園では一度も喋らなかった。そして小学校に上がっても、クラスメートが話しかけても答えず、担任が出席を取る時でさえ返事をしない少女だった。しかし、言葉を発する代わりに手でジェスチャーをしたり、頷いたりすることはできた。


「話さない子」として噂されるように

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やがてカースティは学校では「話さない子」として知られ、噂されるようになった。担任は何とか彼女に話させようと試みたができなかった。中には、カースティが「話をしない子」として仕方なく受け入れている教師もいたが、叱りつける教師もいたという。

「いるかいないか返事をしないと、学校が万が一火事にでもなったりしたらあなたが出席してたかどうかわからなくなるでしょ!!」その言葉にカースティはただ泣くだけだったという。

「学校は私のどこが悪いのか何も理解しようとしてくれなかったわ。みんな、私が話せないのは私が引っ込み思案だからだと思ってた。その時は誰も場面緘黙症なんていう病気を知らなかったのよ」

場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)、選択性緘黙症(Selective Mutism)とは、家庭などでは話すことができるのに、社会不安(社会的状況における不安)のために、学校や幼稚園といったある特定の場面、状況では全く話すことができなくなる現象を言う。幼児期に発症するケースが多い。(中略)

単なる人見知りや恥ずかしがり屋との大きな違いは、症状が大変強く、何年たっても自然には症状が改善せずに長く続く場合があるという点である。(中略)場面緘黙症は、必ずしも年齢とともに自然に改善されていくわけではない。そのため、低年齢のうちに治療を受けることがとても重要である。

そのままにしておくと、周りの人はその子は話さない子と考えるため、緘黙症状そのものが強化されてしまい、話すことがますます難しくなってしまう。

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イギリスではこの場面緘黙症に苦しんでいる子供は150人に1人の割合で存在すると言われている。原因は様々だが、強迫観念や、恐怖観念から引き起こされるケースもある。また、遺伝性により発症する場合や、その子供が、視覚や聴覚などの五感のバランスが上手くコントロールできない時にも起こりうることもあり、更には虐待やそのトラウマなどによっても発症するケースもある。

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カースティの場合、保育園が始まった途端、彼女の社会恐怖症が発症した。小学校に上がってそれを克服したいと思ってはいても「話さない、話せない」という習慣をもはや壊すことはできなくなってしまっていたのだ。

「小学校に行くようになって、私本当にみんなと話せるようになりたいって思ったわ。でも心では思ってても言葉が全く出て来なかったの。たった一言口から発するっていうその勇気を持つのが、とんでもなく苦しいことに思えたわ」

カースティの母、ケリーは、なぜ自分の娘が外では自信を失くし、全く話せなくなってしまうのか理解に苦しんだ。小学校の担任と何度も相談しあった。そしてある日、母はカースティが家で普通に喋っている映像をホームビデオに録画し、それを学校へ持って行ったのだ。

カースティ本人の前でそのホームビデオは見せられた。教室には、クラスメイトや校長先生、担任の先生を始め食堂のスタッフまでいた。みんなが見つめるスクリーンには楽しそうに話しているカースティの姿があったのだ。

「とにかくみんなびっくりしてたわ。カースティは口がきけるんだ、って言った子もいた。自分が実は話せるんだっていう秘密をみんなの前でとうとうばらしちゃった、って気持ちになったわ」それはカースティが7歳の時であった。

そして沈黙は破られた

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高校に上がってからも内向的な性格だったカースティ。普通に話せるようになるまで時間はかかったが、Aレベル(イギリスでは大学に入るための優秀な成績)を取ったこと、そしてモデル事務所に登録したことがきっかけで、人と話すこと、接することにだんだん自信がわいてきたという。

ミス・イングランドの座を見事勝利

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2013年にはなんとカースティはビューティーコンテストで、ミス・イングランドに選ばれた。場面緘黙症という苦しい時期を克服して晴れやかな笑顔を見せる彼女はインタビューで言った。

「今ではこの私が外では全く話せなかったなんて信じられないぐらいよ。あれは本当に私だったの!?って思うぐらい。最近は自分にとても自信がつくようになったわ。要するに、何事も決心して、自分を励ましてやっていけば何でもできるってことね!」

自分に更なる自信をつけるためにと応募したこのコンテスト。見事優勝し、ミス・イングランドの座に輝いたカースティ。「自分を見返してやったわ。夢がかなったもの」と言う彼女の笑顔は、ミス・イングランドの王冠に負けないほど輝いていた。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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