記事提供:ガジェット通信

飲んでも地獄、飲まなくても地獄。漫画家のまんしゅうきつこが自身のアルコール中毒によって起った様々な出来事を綴ったコミックエッセイ『アル中ワンダーランド』が現在発売中。

「笑える」「ところどころ吹いた」など、“アル中ギャグ”という新たなジャンルを確立し、好評を博しています。

幻覚や被害妄想に記憶障害、そして公衆の面前でまさかの「ポロリ」という大失態…。

壮絶な体験を著者独特のイラストとテンポで描く本著は、これまで発表されてきた“アル中名作物”の仲間入りを果たすであろう面白さ。

ガジェット通信では、まんしゅうきつこさんにインタビューを敢行。本を出すきっかけから、禁断症状、今後の目標まで色々とお話を伺ってきました。

担当編集者さんと、以前よりまんしゅうきつこさんと交流があったガジェット通信スタッフによる証言もお見逃し無く。

(撮影:周二郎探検隊)

―『アル中ワンダーランド』大変楽しく読ませていただきました!自分の辛い体験を描くというのは、なかなかしんどかったのでは無いかと思うのですが、きっかけはどんな事だったのでしょうか?

まんしゅうきつこさん:病院でアル中と診断され直前だったかな、高石さん(本書編集担当)と会ってお話をしていて。「私アル中みたいだから病院行こうと思うんだ~」ってビールを飲みながら(笑)。

それで、案の定ベロベロに酔っぱらったのですが、高石さんはその時初めて本物の千鳥足を見たんですって。

高石さん:雨が降っている道を傘もささずにフラフラと歩いている姿がものすごく印象的だったんですよね。階段も登れないし、寒いのに外で寝ようとするし。

まんしゅうきつこさん:その後にまたお会いした時、「ネタはもう十分あるので、アル中体験記を書いてください」という話になったわけです。

―描いていて、思い出して辛くなる事はありませんでしたか?

まんしゅうきつこさん:辛くなって泣きながら書いている回もたくさんありますね。号泣しながら書いている回は呪いがこもっていると思うので、読者の方も恐いかもしれない、どうしようって思って…。

―特に辛かったエピソードはどれですか?

まんしゅうきつこさん:弟が私の死んだ目を撮ろうして「撮るな!」と叫んでいる話とか、電車のホームでただただお酒を飲んでいるシーンとか、割とほとんど泣きながら書いていましたね。

―そもそも、どうしてそんなにお酒を飲む様になってしまったのでしょうか。

まんしゅうきつこさん:精神安定剤の代わりに飲みはじめちゃったのが最初ですね。本当は精神科に行って、心を落ち着かせる薬をもらうのが正解だったんですけど、なかなか精神科に行くのってハードルが高いですよね。

それからはお酒を飲まないと精神不安定になるし、飲んでも精神不安定になるし…の繰り返しで。

―アル中の体験を描いた本やマンガって色々と出版されていますが、それを読んで共感する事はありませんでしたか?

まんしゅうきつこさん:私、それまでアル中体験記って吾妻ひでおさんのしか読んだ事無かったんです。

それで、今回マンガを書くにあたって、中島らもさんの『今夜、すべてのバーで』を読んで「お酒をツールとして使う人は危ない」という言葉に納得しましたね。

中島らもさんは文章を書く為にお酒を飲んでいて、私はブログのネタ出しの為にお酒を飲んでいた。

一番、お酒が便利だなと思ったのは、家事をした記憶が無いのに家事が全て終わっている事なんです。お酒飲んで気分が良くなっているので、普段やらない窓ふきをしたり、高圧洗浄機を引っ張り出して、千鳥足になりながら壁を掃除したりとか。

―なるほど、ツールとして飲むのは危ない。これ、思い当たる人がたくさんいると思いますね。よくアル中の人って「大五郎」や「鬼ころし」など安いお酒を大量に飲むと言いますけど、そういった事はありませんでしたか?

まんしゅうきつこさん:私は「大五郎」には行かなかったんですよ。アル中の時ははやく酔いたいから、ビール、ワイン、日本酒、ウイスキーとどんどんアルコール度数の高いお酒に行くんですけど、合成酒には手を出さなかったですね。それが体がボロボロにならなかった理由かもしれませんね。

―この本が出版されて、お友達や周りの人は「アル中だったんだ」と驚かれたのでは無いでしょうか。

まんしゅうきつこさん:「気付いてあげられなくてごめんね」と言われた事がありました。でも私は本当に明るく振る舞っていたので、気付かなくても当然なんです。

―今日撮影を担当している、ガジェット通信スタッフとも以前から交流があるという事ですが、アル中の人って外見では分からないと言いますよね。

まんしゅうきつこさん:そう、見た目では全然分からないですよね、周二郎さん。

周二郎(ガジェット通信カメラマン):ご飯を食べに行く約束をしていて、三軒茶屋のお店で待ち合わせで、まんきつさんから「三茶の駅に着いた」という連絡はもらっているのに、なかなか来なくて。

それで再度連絡したら違うバーで飲んでいたという(笑)。その後は駅のホームで横たわって寝てましたね。

まんしゅうきつこさん:シェラスコを食べに行ったのにお肉を食べた記憶が一切無いんですよね(笑)。とにかく記憶が曖昧なので、本を書く時も弟に電話してエピソードを聞きながら。

こうして、今初めて聞く話もあるので、もっと色んな人に電話したら、さらにマンガが書けるかもしれない。

後は、読者の方に「読んでいて辛かった」「泣きたくなってしまった」などと言われる事が多いのですが、私は“アル中ギャグ”をやりたかったんです。今まで無いジャンルだから。でも、読んだ方が辛くなっちゃうっていうのは申し訳無かったですね。

―「あんなに楽しいブログを書いているのに裏では…」という心配の気持ちも強かったのかもしれませんね。私はご近所トラブルの回とか爆笑しちゃいました(笑)。

まんしゅうきつこさん:笑っていただけて嬉しいです!私もあの話は書いててガッツポーズしちゃいました。

―ところで、今は全く飲みたいとは思わないんですか?禁断症状というか。

まんしゅうきつこさん:今でもずーっと飲みたいです。飲まない事を“耐久ゲーム”みたいに思っています。病院に行って治療していても隠れ飲みしている人はたくさんいます。

私がこうして飲まずにいられるのは「マンガを書かなきゃ」という気持ちが勝っているからですね。「飲んだら終わり、飲んだらもうマンガを書けない」と呪文の様に心で唱えています。

―お酒よりもマンガへの気持ちが上回っているという事ですね。ずっと昔からマンガが好きなのでしょうか?

まんしゅうきつこさん:小学生の時に『週刊少年ジャンプ』と『りぼん』を両方買っていたんです。近所の駄菓子屋に“ジャンプ早売りジジイ”ってのがいて、土曜日にはこっそりゲットしていました。

ジャンプでは『Dr.スランプ』、りぼんでは『ときめきトゥナイト』が大好きで。ずーっとマンガを読むのが大好きだったんですが、いつからか描く方が好きに。ノートの端っこに落書きしたりとか。

だからこうしてマンガが書けて、出版出来て、というのは本当に幸せなんです。

―今後、どんな話を描きたいですか?

まんしゅうきつこさん:王道のカンフーマンガを描きたいですね、少女がカンフーを通して成長していくギャグテイストな。

―それはぜひ読んでみたいです!楽しみにしています。そして、この本の出版を記念して『SPA!』誌面中に掲載されたグラビア写真も大変話題になりましたね。皆さん驚かれたのでは無いですか?

まんしゅうきつこさん:グラビアやる事は誰にも言いませんでしたね。掲載されてからも、世の中の意見を見るのが恐かったです。

あの、かかしに顔面騎乗している写真ひどすぎますよね!2ちゃんねるでもブスだブスだと書かれていましたが、それも仕方ないと思います。

―真冬に下着姿で野外ですからね、相当寒くて過酷な撮影だったんじゃないかと。

まんしゅうきつこさん:最初、ブラとって乳首をかかしで隠せって弟に言われて。「イヤだ!」と言ったら「じゃあ、かかしにまたがれ!」って言われたのがあの写真なんです。

絶対あれだけは使って欲しく無いと思っていて、お母さんも「これだけは絶対雑誌に載せちゃダメよ!」と言っていたんだけど、載りました。

号泣してお願いしてもダメでした。弟は「これが無かったら完成しない」って。でも結果的には全体的に良い写真になったから良かったです。

―今後、再びグラビアになる可能性も?

まんしゅうきつこさん:もう二度とやりたく無いですね。

―グラビアやテレビ出演で、皆さんも気になったと思うのですが、そのスタイルと美しさの為に何かしていること、秘訣ってあるのですか?

まんしゅうきつこさん:お酒を飲んでるとお腹が空かないんですよ。食べると気持ち悪くなっちゃうし、だから痩せるんです。

お酒に走る前は、60kgくらいあったこともあるんですよ。お酒を飲み始めたらどんどん痩せて、唯一良かったことですね(笑)。

本の巻末で対談させていただいた中川淳一郎さんも「アル中ダイエットって本書こうかな」って言ってましたね。

後は「ヨクイニン」という漢方を25歳の頃からずっと飲んでいます。これ、イボに効くというので飲みはじめて、その後も肌の為に飲んでいるのですが、実は肝臓の代謝を助ける働きもあるんですって。

その事を最近知って、「ああ、だから私は肝臓エリートだったんだ」とちょっと思いました。

―まんきつさん、とても美肌なので、女性の読者は「ヨクイニン」チェックですね。最後に、まんきつさんはこうして漫画家として本を出して、弟さんはカメラマンとして活躍されていて。やはりご両親も個性的な方なのかな、と思ってしまうのですがいかがですか?文化的な面で影響を受けたりだとか。

まんしゅうきつこさん:母親は本を読むのが大好きなんですが、父親は全く。母親もマンガは読みませんでしたね。

でも、母親は見世物小屋大好きなんです。小学生の頃とか、見世物小屋が近所に来ると必ず連れていかれて「ほら、オオカミに育てられた少女だよ」って。今思うと特殊な経験かもしれませんね。

―普通は見世物小屋に行くという行為をお母さんに止められそうです。やはりちょっと変わった部分があるのかもしれません。本の中には弟さんやお母さんのエピソードも出て来るので必読ですね。今日はどうもありがとうございました!

『アル中ワンダーランド』絶賛発売中!
単行本:159ページ
出版社:扶桑社
価格:1,100円(税別)

まんしゅうきつこTwitter(@kitsukomz)

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス