その昔、イギリスは料理がマズい、と言われていた。今でもそのように思っている人もいるだろう。だが、イギリスの料理界は変わった。もはやグダグダに煮込んだスパゲッティや、色が変わってしまったブロッコリーがレストランで出ることはない。

モダン・ブリティッシュフードの先駆けとなった人物

出典 http://cookit.e2bn.org

90年代始めの頃はイギリスで食べる料理といえば、パサパサの小麦粉がいっぱい詰まったソーセージに、くたくたに煮た野菜、アルデンテも何もわかっていない茹で過ぎのスパゲッティなどが家庭料理で出されていた。

最も、マズいと思っていたのは外部者だけでイギリス人庶民にとってはごく普通の味だったのだろうと思われるが、当時のロンドンでも外食は高かった故に「イギリスのごはんは、高くてマズい」というイメージが定着していた。

90年代後半になって、テレビで料理番組をちらほら見かけるようになった。と、同時に彗星の如く現れたのがミシュランスターシェフのギャリー・ローズである。

彼は今まで美味しくなかった(と思われていた)伝統的なイギリス料理を一歩進化させた形で料理した。これが、モダン・ブリティッシュフードの先駆けとなった。テレビで彼の奇抜なファッションやヘアスタイルに興味をそそられたイギリス庶民は彼の作る料理を見てイギリス料理をもっと楽しみたい、と思うようになった。

イギリス料理には変化や進化を受け入れる柔軟性があると悟ったイギリス人は、その変化と多様性に満ちた食体験をしたいと強く思うようになったのである。そして特に、ロンドンでは有名シェフの出番を待っていたかのように次々に新しいレストランがオープンし、セレブシェフと呼ばれるシェフもTVによく登場するようになった。

いつの間にか料理番組が増え、外食を楽しむ人が増えた。これはイギリスのレストランの水準が高くなったことの裏付けでもある。そしてその変化は家庭料理を作る人々にも表れたのだ。

ジェイミー・オリバーの登場

出典 https://sasha97.wikispaces.com

ジェイミー・オリバーはお茶の間の人気者となった。ミシュランシェフが作る、なんたらいうホテルの有名コース料理よりも、ジェイミーは家庭料理をいかに工夫して美味しく食べるか、ということを庶民に訴えかけた。更に、学校給食の革命を起こしたのも彼だ。

これまで子供に与えるべきではないような添加物いっぱいの食事や、栄養価も考えてないような献立で学校の子供たちはランチを食べていた。が、ジェイミーは各学校を回り、子供たちに料理の楽しさを教え、また、学校側に子供にとって安全で栄養のある食べ物を作ることを提案した。このジェイミーの働きがイギリス中の学校に革命を起こし、それ以降学校給食の質が大幅に改善された。

アートな作品をつくるヘストンシェフ

出典 http://www.telegraph.co.uk

ヘストンシェフもまたイギリスではセレブシェフと言われているが、イギリス料理が「美味しい」と呼ばれるものに変わったのは、味と質と、そしてアートなディスプレイを重視するようになったからだ。その代表シェフとしてこのヘストンが挙げられる。

ミシュランスターシェフである彼の作る料理はもはやアートでしかない。しかも「実験」と称して液体窒素を使った料理やスィーツを作ったりして子供たちにも人気のシェフである。

世界中の美味しい料理が食べられる国に

出典 http://www.telegraph.co.uk

今やロンドンは世界中でも、美味しい料理が楽しめる都市の一つになった。いや、イギリスがそうなったのだ。タイ、インド、イタリア、マレーシア、日本、中国、スペイン、モロッコ、レバノン・・・世界各地の最高級の料理が楽しめるレストランが多数揃っている。そしてその料理を楽しむイギリス人の感性も進化したということだ。


もちろんパリでも美味しいものは食べられる。だがパリにあるのはほとんどがフランス料理を出す店だ。フランス料理は伝統の中に入り浸っていて変化が見られない。それに比べてイギリス料理は、「マズい」レベルから「美味しい」という究極のレベルに発展した。

今や料理番組は一番人気

出典 http://www.theguardian.com

今、イギリスでは年に1度素人が料理の腕を競い合う「master chef」というテレビ番組が非常に人気だ。見事トップに輝いた者にはレストランオープン、そしてヘッドシェフという輝かしい未来が待っている。

料理好きな者が集まって、それぞれの料理を競い合うなんてことは20年前のイギリスでは考えられなかったことだ。それだけ「食」に執着している者も少なかった。今は素人料理でももはやアートの世界である。そしてその番組をみなイギリス人は食い入るように見ているのである。これも20年前には考えられなかった光景だ。

これからも更なる進化を

出典 https://secrettkitchen.wordpress.com

イギリスを訪れた人ならわかるだろう。イギリス料理はもはやマズいものではない。外食するのは高いが、「高くて美味しい料理」へと進化したのだ。

昔から食文化である日本は人と食の繋がりが非常に深かった。イギリスも今はそのように変化しつつある。もう大量のチップスはいらない、パサパサのソーセージも食べない、揚げ物は抑える、等徐々にヘルシー志向になりつつある。

そして日本食もイギリスではヘルシーな食事ナンバー1として大々的に取り上げられている。それほど、イギリス国民が食に関心を持つようになったのは果たしていいことだと言えよう。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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