アート系男性に聞く「バブル時代の恋愛事情」

男子の草食化、ひいては絶食化が叫ばれる近年ですが、80年代後半から90年代初頭、日本が好景気にわいたバブル期は、男性達もアグレッシブでした。ポジティブな言動とともに、欲望に忠実に生きていた当時の若者たち。

今回はそんな青春時代を過ごした50代の男性にバブル期の恋愛事情について伺ってきました。舞台は四谷三丁目の路地裏にお店を構えるひっそりとしたバー。インタビューさせていただくのは有名美術大学を卒業後、大手広告代理店に就職した山岡哲治さん(仮名)。

同世代であるバーのママも交えての思い出トーク。いわゆるアート系の男性から見たバブル時代とは、一体どんなものだったのでしょうか。

ジュリアナにはやっぱり行くのか?

編集T:まずは一般的な話から。やっぱり「ジュリアナ」(※1)には行かれていたんですか?

山岡(敬称略):ジュリアナはねー、正確にいうとバブル期じゃないんだよね。91年とかだから。バブルが終わりかけの頃なんだよ。

編集T:お、そうなんですね。では、行っていなかったと?

山岡:いや、行ってたよ。けど「ピテカントロプス」(※2)の方が行ってたかな。

編集T:ピテ…カンプロス…?

山岡:「ピテカントロプス」な。「ジュリアナ」とか「ゴールド」とか、六本木や浜松町にあるようなディスコは俺ら、アート系からしたら「軽薄」なわけよ。で、ちょっとカルチャー感じるのが「ピテカントロプス」。「ジュリアナ」とかはおのぼりさんのミーハーが行くところって思ってた。

ママ:ちなみに「ピテカントロプス」はホモサピエンスの祖先の名前よ。

山岡:名前からもカルチャー感じるだろ。「ピテカントロプス」には世の中がばか騒ぎしてんのを「馬鹿じゃねーの」ってちょっと斜に構えた奴が多かったな。反抗心があるっていうか。

ママ:けど、結局はジュリアナにも行くのよ。そこに行ってるような女も。

山岡:どんなにかっこつけてても結局はみんなモテたかったんだよな。

編集T:「ピテカントロプス」の女の子たちもボディコンとかは着ていたんですか?

山岡:着てる子もいたよ。ボディコンにも色々あるんだけど、「アライア」(※3)のボディコン着てる子はちょっとイカした感じだったな。

編集T:なんでですか?そんなデザインがかっこいいんですか?

山岡:高いからだよ(笑)

学生でも車が買えたバブル時代

編集T:学生でも車を持ってる人が多かったとか聞くんですけど、そんな簡単に買えたもんなんですか?

ママ:
まぁ、多かっただろうね。学生時代の方がバイトで儲かってたし。

山岡:当時はね、バイト>新入社員だったの。社会人の初任給がだいたいテレビ局でも18万とかでしょー。で、普通の企業だったら15〜16万くらい。まぁ、もちろん今と物価が違うわけだけど。「社会人になったら給料減るなー」って思ってたよ。

ママ:それが嫌で、そのままフリーターになっちゃった人もいたりね(苦笑)

山岡:俺がやってたのは、スキーの板のデザインを描くってバイトなんだけど、採用されると5万円。採用されなくても一枚5000円だったよ。アイデア料で。真っ白いボディに赤い点1個つけるだけで5000円。おいしいバイトだったわ。

編集T:すごい!美大ならではのバイトですね。週にどんくらい稼いでいたんですか?

山岡:そういうのじゃないんだよね。遊びたい分だけ。お金が欲しい分だけ描いてたよ。だからさ、例えば明後日、狙ってる女の子とデートするってなったら6枚描くわけよ。ササッと3分くらいで。で、全部不採用でも最低3万円。一枚採用されたら7万5000円。そういう働き方。いつでも稼げるって思ってたからお金を貯めるって発想がなかったね。

編集T:うわぁ、それなら確かにバイトでも車くらい買えそうですね…。

山岡:そういうこと。それにインフレだし、車買っても、ローンがあっても、5年後には給料上がってるから〜ってみんな思ってたのよ。

ママ:マルイとかから、学生でも審査なしのカードが出たのもその頃よね。借金なんかいっぱいできる!時間とともに目減りするって思ってたから、当時はマンション転がしとかが起こったのよね。

編集T:給料ってそんなに上がるもんだったんですか?

山岡:上がったねー。それにボーナスが凄かった。入社直後でも4ヶ月分とか当たり前。初任給は安かったけど、研修しかしてないのに、6月にはその5倍もらえてたもんね。給料あわせてだけど。だけど、その時競合のD社行った友達は、俺の6倍くらいもらってたよ(笑)

編集T:ひぇ〜!凄まじい金額ですね!

山岡:いい時代だったな、本当に。

アート系はあえての国産車!

編集T:やっぱり車に乗ってなきゃダメっていう感じ、あったんですか?

山岡:うん。まぁ人それぞれだけど、あったよね。そういう女の子たちの中では。最低でもソアラ(※4)、みたいな。

編集T:ソアラ?

ママ:トヨタの車よ。あと、スープラ(※5)とかね。

編集T:国産車でもよかったんですか?

山岡:いやね。その時ってニューヨークの不動産とかも日本が買い取りまくってて、「日本最高!」って時代だから、国産のもの=かっこいいって風潮もあったんだよ。

編集T:BMWとかベンツじゃなくて?

山岡:それは王道系。俺らは、ほら。アート系だからさ。ちょっとひねりたいじゃん?みんなとは違うぜって。で、価格帯が一緒のソアラを乗るわけよ。

編集T:すみません。ちょっと詳しくないんですけど、ソアラってそんな優れているんですか?

山岡:だから、値段が高いってとこがよかったの。500万くらいしたんじゃないかな。「高いものがいい」って時代だったんだよ。

ママ:私たちみたいなタイプはね、ヒネてたから。とかいって、今の中国人みたいにパリに行こうもんなら、向こうでブランドもん買いあさってその紙袋を誇らしげにかついで歩いてたんだけどね(笑)

山岡:まぁ、デザインはあっちには勝てないってことだよな(笑)

「アッシーくん」は影で泣いていた…?

編集T:当時、「アッシーくん」(※6)って呼ばれる人たちがいたと思うんですけど、そういう男性はそのことに満足してたんですかね?どういう心情だったんでしょうか?

山岡:満足はしてないだろうね。というか、自分がアッシーくんであることに気づいてなかったんじゃないかな。

編集T:え!そうなんですか!?

山岡:そりゃあそうでしょ。みんな、もう少しでイケる!あわよくば!って思ってたと思うよ。あ、でも分かんねぇな。俺には分からなかったけど、そういう奴はいわゆるダメ男だったのかも。

編集T:と、いいますと?

山岡:いや、アッシーもメッシー(※7)もダメ女のことが好きなダメ男だっただけかも。「アッシーくんなんて嫌だ!」って言ったら会ってもらえなくなるから、やってるだけで。本当は傷ついて影で泣いてたのかもな。

編集T:なるほど。名前がつけらてるだけで、今でもいそうな感じですね。「※ただしイケメンに限る」ってやつですか。

山岡:そうそう。バブルだろうが、そうじゃなかろうが関係ない。今の時代といっしょ。

いかに女の子をびっくりさせるかが重要

編集T:よく当時の話を聞くと「金夜から手ぶらでスキー」とかあるじゃないですか。あれ、本当ですか?その場で必要なものは買って車で、みたいな。

山岡:あるよね。スキーはとにかく人気あったし。車だと女の子もめんどくさくないし。男はとにかく女の子に「わーすごーい!」っていわれたかったんだよ。スキーくらいじゃ普通だったんだけど。

編集T:スキー場すごい混んでそうですよね。

山岡:混みすぎてて、越後湯沢とかは大晦日の夕方に出発したのについたのが元旦の朝とか、あったよ。お金は大丈夫!問題はセッティングだけって感じだったんだよ。とにかく「どうしたら女の子に贅沢感を味わえさせれるか」ってずっと考えてた。女の子が「ラーメン好き!」っていったら、日帰りで札幌とか連れてってたよ。ラーメンだけ食いに。

編集T:贅沢すぎるー!

ナンパするにも一工夫

山岡:その発想の貧困さ、ナンパにも現れてるよね。俺はナンパするにもだいぶ工夫していたよ。

編集T:と、いいますと?

山岡:当時の携帯電話ってさ、今に比べると相当大きかったわけじゃない?それをさ、わざとハチ公の前に置いとくわけよ。忘れたふりして。それで、近くの公衆電話から電話をかけるのよ。

編集T:…?

山岡:ベルがなって、女の子が取るのを確認したら、その女の子の顔を見るわけ。ブスがでたら無視。かわいい子がでたらゴー!「どこに落としてますか?」って会話続行。

編集T:なんという計画犯!

山岡:で、かわいい子の場合だけ携帯電話を取りに行くの。「すみません、ありがとうございます!」って。で、「お礼に食事でも…」って誘うわけよ。これなら下心も感じないし、相手もガードがゆるくなるでしょ?

編集T:すっごい考えてナンパしてるんですね…。

山岡:当たり前でしょ。女の子も今より、ロマンを求めていたからね。それを演出するのは大変よ。俺は仕事のことより、どうやって女の子をナンパするかってことをずっと考えてた。この方法を生み出したときは自分で感動したね。「女の子を選べる」なんてすごいナンパ方法じゃない?

編集T:(この人、最低だな…)今ならありえないナンパ方法ですけど、すごいですね。そんな発想の人が世の中に溢れていたかと思うと、ちょっと怖いです。

山岡:つまらない時代になったわけだよ。

若者にもの申す!

編集T:だいぶ女性に対して積極的だったということが分かりました。最後に、「絶食系」といわれる今の若い世代に伝えたいことはありますか?

山岡:そうだなぁ。まぁ、女だけでなく男も実は若いうちが華だってことを忘れないでほしいな。若いうちにもっとかっこつけろ!見栄をはれ!車くらい持っておけ!女の子は何もいわないかもしれないけど、あきらかに有利だぞ!

編集T:ごもっともです!山岡さん、ありがとうございました。

いかがでしたか。今の時代を生きる若者でも学べるところがあったのではないでしょうか。節約するのは悪いことではありませんが、自分の人生を豊かにする投資になるなら、車など大きな買い物をするのもありなのかもしれません。「絶食」だなんてもったいない!若い世代には積極的に恋愛を楽しんでもらいたいものですね。

※1 バブル期を代表するディスコ「ジュリアナ東京」の略称。1991年から1994年まで東京都港区芝浦にあった。
※2 原宿にあったで伝説のディスコ「ピテカントロプス・エレクトス」。日本におけるクラブ文化発症の地ともいわれている。
※3 ファッションブランド「アズディン・アライア」の略。同ブランドはボディコンブームの火付け役となった。
※4 トヨタ自動車が80年代に発売した高級クーペ。
※5 トヨタ自動車が1978年から2002年まで製造・販売していたスポーツカー。日本での発売は1986年にスタート。
※6 主にバブル時代の女性が使っていた造語で「女性が移動手段としている男性」のことを指す。
※7 主にバブル時代の女性が使っていた造語で「食事を女性に奢らされる男性」のこと
を指す。バブル期に複数の男性からアプローチされた、いわゆる「モテる」女性には、そのほかにも「ミツグくん(物品等を女性に贈らされる男性)」や、「テープくん(CDの曲をカセットテープにダビングする男性)などがいた。

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