先進国との貿易で、不利な立場に立たされがちな途上国。商品が不当に安い値段で買われ働く人が貧しい状態のままおかれ、先進国向けの商品を作るために現地の人の健康や自然、伝統産業が破壊されることもあります。

今までの貿易のあり方を見直し、労働環境や自然を守り、伝統的な文化や技術を大切にする貿易「フェアトレード」や、それによって得られた商品に対する関心が日本でも高まりつつあります。

藤原 響子さん 1973年生まれ

会社員などを経て、大阪府枚方市のフェアトレードショップPunchi Lamai(プンチラマイ)を経営。

フェアトレードブランドの商品を店舗で扱うだけではなく、オーガニックコットン等の自然な風合いを生かしたスカーフやシャツ、スカート、パンツなどの商品を企画し、スリランカの北西部の村で製造を行う。Punchi Lamaiとはスリランカ語で【ちいさな子どもたち】という意味。

◆フェアトレードを始めるまで -アジアとの長いおつきあいー

若い時からアジアが好きで、28才の時にスリランカへの旅をきっかけに、1年ほど暮らしました。その頃のスリランカは長く続く内戦によって、今のように観光が盛んではありませんでした。

スリランカは北海道より小さな島国ですが、8つもの世界遺産があり、海や森、自然豊かな美しい島です。なんといっても好きになったのはスリランカの人々でした。おそらくスリランカを旅した人が感じる最大の魅力は多くは「人」ではないかと思います。

◆2009年、フェアトレードを始めた節目の年

帰国後は結婚や出産、子育てをへて、社会復帰。そして36才のころ、大きな転機がありました。節目の年だったのだと思います。それはちょうどスリランカの内戦が終了した2009年。

長いスリランカとの関わりや若い頃からアジアの女性たちと仕事をしたいという自分の根幹に流れていた気持ちを、何か形にするために1歩を踏み出す時期がきたように感じました。

母親になった自分の目線もごく自然に、スリランカの子育て中の女性たちに向けられていました。子育てをしながらでも、村で何かしらの収入となる手仕事がつくれないだろうか、誇りをもって楽しく生きることができる仕事をいっしょにできないだろうか、そんな気持ちになりました。

現地の友人をコーディネーターとして、あらためてスリランカでのフェアトレードによるものづくりの可能性を探るべく、リサーチの旅を繰り返し、素材や、生産者を探すことなど、スリランカとの関わりを生かしつつじっくりと時間をかけて進めていこうと考えました。

自分自身もフェアトレードの勉強や経験をするためにフェアトレードショップで働き学ばせてもらいました。そしてその経験を生かして、2012年2月に小さなフェアトレードショップを持つことができました。

◆お店を開いてからの展望

しかし、お店をもったことでスリランカへの渡航もままならなくなり、現地とのやり取りはもっぱら電話ばかり。肝心の制作にあたっての縫製指導などのボランティアとの出会いを待ちつつ、簡単な縫製で作れる雑貨などの制作を依頼し、お店で販売していました。

そして2013年10月に、運命的にスリランカでのボランティアを希望する女性との出会いに恵まれたのです。フェアトレードとの関わりややる気はもとより、何よりもこのプロジェクトの現地コーディネーターの知人であったことなど、偶然とは思えない不思議なご縁に導かれて、2014年5月に現地へと渡航してくれたのです。

縫製の指導を無料で行っている様子

◆スリランカで進むプロジェクト

最初に彼女が村の幼稚園に集まった、たくさんの希望者との面接をしてくれました。仕事を求め、技術を教えて欲しい方々はたくさんおられます。

最初はいくつかのグループにわかれてもらい、無料の縫製指導に回りました。最終的にはその中から適正を見極めて4名の方しか選ぶことができませんしたが、とにかく少人数からのスタートという堅実な道を選びました。

その4名中、1名は縫製技術がしっかりしたティロマさん。彼女だけがプロジェクト当初からのメンバーです。あとはまず、ミシンの技術をイチから教えるために、ティロマさんによる3ヶ月24回コースの縫製教室が始まりました。

3ヶ月後、私たちは再びスリランカを訪れ、ミシンその他の備品をそろえ、ティロマさんの自宅の一室に、ソーイングセンターを整えました。2014年6月、プロジェクト5年にしてやっと、小さな生産者グループが誕生。

ソーイングセンターは「アトリエ・イラータ」と名づけました。また、別の染工房とのご縁もでき、草木染めの商品を作ることをコンセプトに、草木染、縫製指導を繰り返しました。

◆ひとつの成果、さらなる目標

この2015年の春夏のcollectionとして、「Punchi Lamaiの服」が関西のショップさんを中心として展示販売していただいています。まだまだ試行錯誤の途上ではありつつも、お客様に手に取ってみていただけるものづくりの一歩を踏み出すことができました。

このプロジェクトの目的は、あくまでも生産者団体を作り、将来的にはスリランカ人だけでも運営企画制作が可能となるよう、育成していくことです。即ち、こだわりのモノづくりをしたいお客様からの外注オーダーにお答えできるアトリエになるために、品質を向上させていくことです。

その一歩として小さなオーダーを企画してくださるお客さまをスリランカでの制作現場を視察しサンプルづくりなどをする旅を予定しています。環境に配慮した染色や、地球環境にやさしいオーガニックコットンなどを素材に使い、手仕事の温かみや、人と人とのつながりを生み出すことができる、そういうモノづくりをテーマに、これからも広げていきたいと思っています。

◆品質を保つこと、働きやすい職場をつくること

現地でのやりとりで一番苦労するのは、やはり「言葉」です。いまは少しずつ現地の言葉を覚えて、通訳なしで直接コミュニケーションをとり、仕事を受発注し、さまざまなやりとりをスムーズにしていく努力をしています。

そして次は「時間」です。南国の島、そして農村部の女性たちはゆったりとした時の流れの中で生きてきました。ですから、時間の約束を守るという事に時間をかけて繰り返し伝え、慣れてもらうしかありません。

そしてどうしても仕事への責任感、真面目さ、などを求めます。それも含めてスリランカの女性は理解できないわけではありませんが、じっくりと信頼関係を築いていく中でお互いに成長して行っていると思います。

聞こえてきた不満も、改善のチャンス。できるだけ、女性たちの子育てのリズムを中心に就業時間なども決めました。楽しく継続できるよう可能な配慮をしていきたいと思います。技術はまあまあできても、日本で買っていただける品質、ということは繰り返し教えなければいけません。「きれい」であるか、その感覚は微妙に国民性の違いがでてきます。

焦らず、丁寧に制作すること、それを繰り返し伝えます。発注やリクエスト、現地からの質問や報告は、LINEを使っています。村でいまスマホをつかって仕事をしている人はおそらく多くはありません。経費をさくためにも電話よりLINEが本当にありがたいのです。

やはり、コミニケーションが取りやすくなってからは、いろいろなことがスムーズに進みやすくなり、女性たちも安心して制作できているようです。

◆文化や習慣のちがいで困ったこと

時間に対する観念は、仕事になると困ることもありますが、基本的に70%が仏教徒であるスリランカの方々との大きな感覚の違いを感じることはないようです。困る…というほどではないですが、休日祝日が多いのが驚きます。

◆お買い物は生き方の選択

私たちが当たり前にしている「何を買うか選べること」。これは世界中の人々ができるわけではありません。自分がどんな生き方をしたいか、ということがはっきり現れやすいのが、ものを買うという時ではないでしょうか。

ものが溢れている時代だからこそ、時々は立ち止まってみて、作り手やその暮らしに心を寄せてみてもらえたと思います。ちょっとしたお買い物の中にも、世界の誰かの為に自分にできることはあります。

この記事を書いたユーザー

谷町邦子 このユーザーの他の記事を見る

関西在住のおもしろがり。
なんでもかんでも面白がるため、まっすぐ歩けない!
街で見つけた、めずらしい・新しい試みをとりあげます。
https://www.facebook.com/people/Qunico-Tanimachi/100008394784932

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス