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2014年6月、当時「脱法ハーブ」と呼ばれていたドラッグを吸った男が運転する車が次々と歩行者をはね、死者1名を出してしまった池袋での事故。

よだれを垂らした容疑者の映像が繰り返し流され、列島に衝撃を与えました。そんな男の裁判をジャーナリストの今井亮一さんが傍聴しました。

危険ドラッグ、薬理効果で記憶がないだけ

『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』 第1468号より一部抜粋

以下は昨年6月25日付けのJCASTニュース。テレビで「これでもか!」というほど報道されたんで、ご記憶の方も多いかと。

脱法ハーブ吸引しながら暴走!目撃者「ハンドル握ってなかった」池袋・繁華街

東京・JR池袋駅西口で24日(2014年6月)夜、脱法ハーブを吸ってラリった男の車が歩道を暴走、20代の女性が死亡し、6人が重軽傷を負った。

「とくダネ!」は事故直後に運転席にいた男が駆けつけた警察官に現行犯逮捕されるまでの一部始終を撮った映像を入手し伝えた。

出典 http://www.mag2.com

逮捕時もよだれダラダラ

現場は仕事を終え帰宅途中の人たちや飲み客たちで混雑していた。歩道に乗り上げた車は猛スピードで40メートルも暴走し、次々と人をはねて電話ボックスに激突し止まった。

目撃した男性によると、「ヤバいと思ってよけた。その時、運転していた男はハンドルを握っていなかった」という。

入手した映像には、口からよだれをたらし、仰向け状態で運転席に座っている男を、駆けつけた警察官が外に出そうとしている。男が抵抗しているのか、警察官は再三「暴れるな」と押さえつけようとする。

男は飲食店経営と話す名倉容疑者(37)で、「脱法ハーブという薬物を吸った。人をはね怪我させたのは間違いない」と供述しているという。車の中には脱法ハーブが置いてあり吸引しながら運転していた可能性がある。

出典 http://www.mag2.com

この事件をきっかけに、脱法ハーブが「危険ドラッグ」と呼ばれるようになったのだ。

危険ドラッグ関係の裁判では「6月の池袋の事件」としてよく言及される。

2月10日の第1回公判は傍聴できず、これが第2回公判だ。

3月26日(木)13時30分~16時、東京地裁813号法廷(52席、安東章裁判長、合議)で「危険運転致死傷」の審理。

被告人は身柄、拘置所だったかな。ワイシャツのボタンを上までとめ、黒ズボン。

大柄で、長めの黒い髪をべったぁ~っとオールバックにして、非常に個性的な顔立ち。全体に存在感があるっ。

裁判長「3月24日付けで訴因変更請求が…」

「毎時約10キロメートルの速度で進行するに当たり…」を、「横断歩道の手前で一旦停止し、さらに発進進行するに当たり…」に変更したんだそうだ。

改めての被告人の認否は…。

被告人「一点だけ…意識の中では横断歩道で停止したまで…その後、発進した意識がないですし…」

弁護人「停止中に意識を失ったと…」

ありゃ~?本誌第1409号で教授の証人尋問を、同第1427号で被告人質問を、同第1461号で判決をレポートした赤羽の危険ドラッグ暴走事件、あれと同じ主張なのか?

あっちはもう、要するに「意識はあったが薬理効果で記憶できてないだけ。効き始めた時点で運転を中止すべきだった」と、あっさり決着してる。同じ争いを、こっちでまたやるのか?

すぐに証人尋問が始まった。

検察官側の傍聴席から、長身でスーツの中年男性が、アルミの杖をついてバーの中へ。被害者かなぁ。

裁判長「検察官から1時間程度…」

被害者を1時間って、あり得ね~っ!

検察官が証人を「カネコ先生」と呼んだ。ここで俺は「な、なぬうっ?」となった。

そう、この証人は本誌第1409号の証人と同じ、京都大学・大学院・薬学研究科の教授、金子周司さんなのだった。

今回もアルミの杖をついてるってことは、たまたま足をケガしたとかではないのかも。

今回の尋問は、証人が作成してきた文書やグラフ等を、法廷内のモニター(傍聴人から見える壁の大型モニター2台を含む)に写し出して証言する、というスタイルがとられた。

モニターの画面切り替えは、100円ライターのような小さなリモコンを証人自身が操作して行った。

ほとんど教授の授業を聴講するようなもんだ。前回よりずっと分かりやすく勉強になった。

まずは証人の経歴がモニターに映し出された。

1980年、京大の薬学部卒…1985年、薬学博士に…1988年、京大の助手に…1992年、助教に…2004年、教授に…。

2004年~2006年、MDMAが流行した。2012年から危険ドラッグ(当時は脱法ハーブ)が流行し、その関連で約80件、専門家としての意見を書いた。法廷で証言するのは、東京、名古屋、大阪、高松…今回が8回目。

そのうち俺は2回を傍聴してるわけだ。えっへん。←威張る意味が分かんね(笑)。

モニター画面を切り替えつつ、講義は流れるように続く。

証人「大麻はカンナビス…危険ドラッグは合成カンナビノイド…外国ではニセ大麻…植物片は無害なもの…そこに薬物を…水には溶けない…アルコールやアセトンに溶かして…」

証人「ダウナー系…中枢神経を抑制する…アルコールが似た薬理効果を…脳の判断力を低下させ…自動車運転に対する影響が大きい…。もうひとつ、リキッド、アロマ…これは水に溶ける…アッパー系…ニセの覚せい剤…煙草も同じ…」

証人「(危険ドラッグは)お風呂の中に1滴でも十分…中枢神経を…モルヒネ以上…ヘロインと肩を並べるくらい強い…今まで歴史上ないようなもの…(最強のものは)覚せい剤の100倍強い…」

大麻が1%のアルコール飲料だとすれば、危険ドラッグは40~50%のジンやウォッカに相当する、それくらい強力で危険なんだとも言ってた。

証人「物性として近いのは煙草…5分の間にニコチンの血中濃度はどんどん上がる…吸うのをやめると1時間で濃度が下がり、次が吸いたくなる」

え~、そうなんだ~。

合成カンナビノイドは水に溶けにくく、尿にはまず出ない。ところが被告人の尿からは、本件とは異なる成分の合成カンナビノイドが検出されてるんだという。

証人「尿から見つかるのは珍しい。記憶を失わずに(そのような体験なしに)尿から出ることはほぼあり得ない。以前から薬効や危険性を認識していたと推測される」

そして本件時…。

証人「異常を感じて運転を止めることは可能…ぼーっとなったり目が回ったり、普段となんか違うぞと感じていたはず…」

以前の摂取で危険の予知ができた、本件時、体調に異変を感じて運転中止が可能だった、とまとめさせて14時17分、検察官からの主尋問は終了。

弁護人は2人。危険ドラッグについて下調べしてきたようだったが、「当時、意識はあった。薬効のひとつ、前向性健忘により記憶できてないだけ」という肝心な部分は、まったく崩せなかったと思う。

次回は4月28日(火)10時~11時30分、別の証人を尋問すると決め、15時閉廷。

次回の証人は「召喚で」と検察官が言ってた。てぇことは警察官なのかな。※勤務簿作成の関係で裁判所からの召喚状が必要なのか、と俺は想像してる。

判決は有罪で決まりなのに、無駄な手続きのために被告人は勾留され続けることになる…という考え方は病んでるか。

逆に言えば、実刑なら未決勾留日数がかなり算入(刑期から引かれる)わけで、やっぱ拘置所暮らしは刑務所より楽だろうから、被告人としてはラッキーかもしれない…。

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