温かい家庭を築きたい独身女性

写真家として成功しているクレア・パターソンさんは30代半ば。仕事一筋で生きていた彼女は周囲が家族を育んでいる現実に、自分自身の将来について考えました。経済的には恵まれている彼女の欲しいもの。それは、子供。しかしパートナーのいない独身の彼女は養子縁組を希望します。

クレアさんが未来の息子の姿を見たのは映像を通してでしたが、その愛くるしさに一目惚れ。数々の審査を通り、彼を養子として迎え入れる許可が下りた時は天にも上る気持ちだったそうです。

「やや発達が遅れている」とされた当時18ヶ月の息子ですが、ハイハイや寝返りをしない、なかなか歩かないといった他の子供との違いも気にせずクレアさんはあらん限りの愛情を注いで彼を育てました。しかし彼を迎え入れてから一年後、恐ろしい出来事が起こります。

出典 http://www.dailymail.co.uk

*クレアさんと息子

一日に36回ひきつけを起こす子ども

発達の遅れ以外は健康優良児と聞いていた息子を連れてある日ガソリンスタンドへ行ったクレアさん。車を停めて後部座席にいる彼を確認すると、なんとひきつけを起こしていました。すぐに病院に駆け込みましたが、そこで彼は生まれつき脳に障害があることが発覚。その後症状は悪化の一途を辿り、酷い時には一日に36回もの発作を起こす息子のためにクレアさんは常に病院へ行けるよう入院に必要なものを一式つめたバッグを寝室に常備する日々でした。

育児はおろか息子の介護を頼めるパートナーのいない彼女の体力も精神状態も限界に達した時、クレアさんは難しい決断を下しました。それは、息子を手放すこと。彼女一人では息子に十分なケアをしてあげられない、そして彼女自身の生活も崩壊してしまうという厳しい現実を受け入れた上での判断でした。

世間の批判と障がいのある養子を育て上げたある母親の告白

元々シングルマザーとなる自分の許容範囲を考えた上で、特別なケアが必要な子供を受け入れることはできないと養子を求める際にはっきりと告げていたクレアさん。しかしその決断は方々から批判を浴びています。

そんなクレアさんの話を耳にしたある女性、三人の養子を育て上げたメグ・ヘンダーソンさんはこう告白しています。

”I wish I had given back my adopted daughter.”

「できることなら、私も養子に迎えた娘を手放すべきだったわ。」

出典 http://www.dailymail.co.uk

メグさんと夫ロバートさんは二人の子供を持つことができない現実を受け入れ、養子を迎え入れる決断をしました。当時4ヶ月だった長男ユアンは陽気で健康な赤ちゃんで、夫婦は彼を我が子として愛情いっぱいに育てました。3人家族として幸せな四年間を過ごした後、夫婦は更に二人の姉妹を迎え入れます。

当時二歳半のマリオンと18ヶ月のルイーズは半分血の繋がった姉妹であり、この二人の養子縁組は姉妹一緒にというのが条件でした。次女のルイーズは「初期の情緒障害」の疑いがあると報告されていましたが、夫婦はこの愛らしい姉妹の養父母になる決心をしました。

なかなか眠らず叫び声をあげる子ども

マリオンとルイーズは日常的に虐待を受けるという不幸な家庭から救い出された姉妹でした。ルイーズの情緒不安定は親の愛情不足故であり、新しい家族のもとで安定した生活をすればいずれ落ち着くだろうと夫婦は伝えられていました。しかし日に日に悪化するルイーズの奇行は徐々に家族のバランスを崩していきます。

会話は成立せず、突然叫び声をあげ、一時も大人しく座っていることのできないルイーズ。食事も常に手づかみで、時には何度も何度も壁に頭を打ちつける彼女からメグさんは四六時中目を離せませんでした。そして常に注目を浴びているルイーズに嫉妬したマリオンも次第に不安定になり、両親の関心を求めて様々な問題を起こすようになってしまったのです。

長男のユアンは手がかからない子でしたが、幼い姉妹の世話に明け暮れる両親を想ってか急速に大人びた態度をとるようになりました。

明かされたルイーズの暗い過去

他人に興味を示さず、家族の繋がりを認識しないルイーズに夫婦は自閉症を疑いますが養子縁組を手配した団体はその疑問を一笑に付しました。毎日ルイーズの世話に追われ疲れ果てたメグさんとロバートさんはその日一日をやり過ごすことに精一杯で、ルイーズを施設に戻すという考えが浮かんでも実行する気力も体力も残っていませんでした。

たくさん愛情を与えればきっといつか心が通い合いルイーズの問題も解決するはず。そうしたら、残りの二人の子供達へも失われた時間の分までかまってあげられる。そんな淡い期待を抱きながら必死に家族のために努力し続けたメグさんは、「二人一緒に」という条件で迎え入れた姉妹の一方を手放すことは二人共失うことになるという不安も抱えていました。

その凶暴とすらいえるルイーズの動向ゆえに家族旅行もできぬまま年月は経ち、ある日成長しても一向に家族の愛情に応えることのないルイーズの悲惨な過去がついに明らかになりました。ルイーズが10ヶ月の時、「パパと呼ばないから」という理由で母親の恋人に三日間に渡る凄まじい身体的な虐待を受けていたのです。その後ルイーズの壁に頭を打ち付けるという奇行が始まり、病院での検査が手配されましたが実の母親はルイーズに診察を受けさせることはありませんでした。

家族の苦悩

現在36歳のルイーズは障がい者向けの施設で暮らしています。精神病性の診断を受けた彼女ですが年齢と共にその動向は穏やかになり、日常生活を過ごすことに困難は無いようです。しかし頻繁に訪れる両親にも興味を示さず、その心は独自の世界に閉じこもったまま開かれることはありません。

姉のマリオンは絶縁状態ですが、それは嫌悪からでは無く諦めでした。半分とはいえ血の繋がった姉妹であるマリオンですら、ルイーズは姉として認識することができないのです。長男のユアンは兄として変わらず姉妹を愛し、両親に何かがあった時のことを考えてルイーズの保護責任者となる為の手続きを進めているそうです。

メグさんは自身の経験を振り返り、養子を手放したクレアさんに同情的な意見を示しています。

”We can’t make up to Euan and Marion for those lost years — that time has gone, sadly.

And now I have two great regrets. One is that I wasn’t with my mother when she died — but she knew I loved her, so that is only my second regret. Adopting Louise and keeping her is my greatest regret. And that is the honest truth.”

「ユアンとマリオンの失った時間を取り戻すことはできないわ。悲しいけれど、もう遅すぎる。

私は人生において二つ後悔していることがあるの。一つは母が亡くなった時傍にいてあげられなかったこと。でも、母は私が母を愛していることを分かってくれていたはずだからそれはいいの。

二つ目は後悔してもしきれない。それは、ルイーズを養子として迎えてそのまま育て上げたこと。これが本音なのよ。」

出典 http://www.dailymail.co.uk

出典 http://www.theguardian.com

*メグさんと夫ロバートさん

子育ての理想と現実

シングルマザーを望んだクレアさんが手放した息子は、現在4人での24時間体制の介護を受けています。

近年では出産前に様々な検査が可能になり、その是非については意見が分かれています。血の繋がった子供ならばどんな状態でも育てるべきだという言葉は、実際問題に直面している家族にとって軽はずみに受け入れることは難しいのかもしれません。

自分達の子供を授かることのできない人々にとって、どんな子供でもいるだけでありがたい。その考えも、この夫婦のお話の前では理想論でしか無いようにも思えます。親は子のために全てを犠牲にするものですが、その犠牲が他の子供達や自分達の日々の生活を脅かすものであったら...。

子供には罪がありません。しかし、外から批判するのは簡単なこと。大切なのは、問題を抱えた家族や子供達のためにできることを世間が考え、理解する心を持つことなのではないでしょうか。

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