数年前のことです。リーマンショックで夫の会社が閉鎖し、数ヶ月後にやっとの思いで転職を果たした会社で事件は起こりました。始めはいい会社だと思っていたのですが、何かおかしいぞ?と感じていたその会社は、実はブラックだったのです。

何かがおかしい

元々仕事が大好きな夫は、やっと転職できた会社で積極的に仕事をこなしていました。必要な商品知識もどんどん吸収し、自宅でも勉強するほど。休日には同僚の皆さんと家族ぐるみでバーベキューをするなど、周囲にも溶け込んでいきました。

週末は私と愛犬を連れてテーマパークやハイキングと出かけて行くのですが、次第にイライラするようになります。彼は、会社の上司から連日パワハラを受けていたのです。

ついに事件が!

業務開始1時間以上前の出勤を強要され、出勤後は密室でミーティングと称した怒号を繰り返される毎日。そして、業務が無くても意味のない残業で、すっかり疲労し精神はボロボロ。

そんなある日、いつもの朝のミーティングで、遂に夫は上司から暴行を受けてしまうのです。診断の結果、全治3週間。医師からは最低2週間の安静を告げられます。当然ながら当面仕事はお休み。

診断書を取り、妻の私も同行して事件の報告と休みの申請に訪れた事から、一変して珍事件へと事態は変わって行くのです。

おかしな常識

そもそも、暴行の後、一緒にいた同僚は誰一人心配していなかったのも不思議な話。勤務中のケガなのに労災もどうなっているのか全く不明なのです。つまり、夫婦で診断書を取って訪れるまで、事件は知られていなかったのです。

後で知ったのですが、この上司、以前から暴行が多いらしく、パワハラですっかり疲弊し洗脳される社員が多く、『自分が悪いから暴行されても仕方無い』という、恐ろしい思考の社員が増えていたのです。

事件の事実を初めて知った経営者が慌てて帰社し、話合いが始まるのですが、あれあれ??何やらおかしな事に発展。診断書を見た経営者、いきなりすごんで一言。「これってうちの会社を脅すってことでしょ?」

経営者(以下ボス)の言い分では、というか常識によると、診断書とは世間一般において相手を脅す為のものであり、金銭を要求する為の書類なのだそうで、それを会社に提出するということは、会社に不当な金銭を要求したいという意思表示であるのだそうです。え〜〜!!何それ??

この驚くべきボスの独特な常識にはただただ言葉を失くす私達でしたが、すっかりこちらが『多額の金銭を要求しに来た!』と思い込んでやまないボスは、こちらの休暇申請の話も全く聞き入れず、叫ぶ叫ぶ。

2時間後に解放された時には、1週間徹夜したのか?と思う程、すっかり疲弊しきって魂も抜けかけておりました。しかも、休みも取れない、労災もうやむやで全く解決に至っていないというお粗末な状況だったのです。

暴走するボス

まあ、話は長くなるので省略しますが、ボスは『ケガで休み=金銭を取られる』という独特な思考も持ち合わせており、翌日からは「会社に出て来い!」という、まるで〇〇ばりの電話攻撃まで始まる始末。

「あんな物で何がケガだ!」

「本人を出せ!」

などなど、代理で電話に出る私にも暴言を吐きまくり、まるで犯人をかくまっている共犯者のような扱いです。そして暴走するボスの口から遂に出ました!解雇発言。

さあ、ここで、労働基準監督署の登場です。

実は、『この会社はおかしいぞ』と感じた早期の段階で、労働基準監督署に相談していた私は、この解雇発言を見逃すわけがありません。すぐさま電話をし、相談。給与や労働時間などの違法性に関する相談は通常の労働基準監督署でいいのですが、私の場合、その上の労働局企画室に相談していました。

とにかく、ケガの治療もさせないばかりか出勤を強要し、挙げ句の果てには『来ないとクビ』発言。恐ろしくて夫をこれ以上働かせる事は無理です。

解雇発言の事実を相談すると「解雇発言が出たら、労働者から解雇を選択することができます」とのこと。やった〜〜!と夫と相談し、解雇を選択して早々に縁を切らせて頂くことにしました。

◎解雇について

以前は書面での通達がない限り解雇と認められませんでしたが、法改正により今は口頭でも解雇が認められるのです。つまり、『クビだ!』を発言した時点で即日解雇が成立するのです。録音などの証拠があれば尚有利です。

◎労働局企画室とは?

通常の労働相談をはじめ、雇用主と労働者の間においてトラブルが発生した場合に話合いの場をセッティングしてくれるなどの対応をしてくれます。この話合いを『あっせん』と言います。

《補足》

事件初期からこまめに労働基準監督署へ相談しておくことは意外と有利に繋がります。相談は窓口だけでなく電話も記録されているので、裁判に必要な場合は開示請求ができ、有効な証拠の一つとしてみなされるのです。

これにブログやメモなどで時系列が分かるものがあれば、照合されることでより裁判での信憑性が増し、有利になるのです。その他、タイムカードや契約書、就業規則、採用通知書などの書類は全てコピーや原本を保管しておくのが重要です。

新兵器、導入。

さてさて、ボスのおかしな発言の数々を受けて、我が家は早期にヴォイスレコーダーの導入を決めるのです。これ、安い物で全然OKです。我が家は2,000円のをフル活用しました。

通常の会話はもちろんですが、固定電話も携帯の時もハンズフリーで会話し、ダイレクトに録音。機械が苦手な人も簡単です。これで、後の裁判に必要な証拠が全て揃いましたよ。

遂に、弁護士登場〜〜〜。

結局ボスは、労働局からの指導を逃れる為、『言ってない』を繰り返し、会社での話合い、労働局内での話合い(あっせん)など重ねるのですが、あれこれ誤摩化しながら逃げ切ります。というか、正確には逃げ切っていないのですが、言い訳を始めて時間稼ぎ。

ところで、即日解雇には『解雇予告手当』なるものが発生します。我が家は即日解雇なのでこの『解雇予告手当』にケガの治療費、慰謝料などを請求。一度はボスが承諾するものの、土壇場に来て踏み倒し、結局我が家は労働局のアドバイスの元、内容証明郵便で請求するに至ったのですが、それに対する回答が、先方が用意した弁護士だったのです。

弁護士もいろいろ

さて、ここで重要なのは、何かトラブルが起こった時に、弁護士が登場すれば大概は凹むと思います。我が家も初めはそうでした。が、弁護士もいろいろです。相手が弁護士を立ててきても慌てる必要はありません。

裁判で勝ちまくっている有能でやり手な弁護士もいれば、代理費用や相談で細かく稼ぐだけの弁護士までさまざま。不安な場合はこちらも弁護士を用意し、弁護士同士で話して貰うのが一番です。

会社が用意した代理人である弁護士はややジョーカー的な弁護士。偶然にも私がいた会社に関わっていた事があり、話合いや裁判に弱い弁護士だったのです。通常であれば圧倒的に違法を重ね、証拠的にも不利な会社の弁護を受ける人はいません。そんな理由でその弁護士しかいなかったようです。
実際にこのジョーカー弁護士が加わってからはボスの世界観に更なる磨きがかかり、挙げ句の果てには、『労働局が労働者を焚き付けて会社を潰そうとしている』などという、またしても驚きの発想までする始末。つまり、似たような人が増えちゃったという、まるでコントのような展開を見せるのです。

悲願の勝訴

結局、いろいろありながらも、独特な世界観のボスと同じような弁護士により、一時はうやむやにされてしまいました。労働基準監督署は労働関係の指導はしてくれますが、実は拘束力が弱いのです。

我が家は時間を置いて、良い弁護士に出会えたのをきっかけに遂に訴訟に踏み切ります。労働審判を選び、無事勝訴!しかし、往生際の悪いボスは控訴します。次に通常の裁判へと移行し、勝訴しては控訴され、なんと高裁まで行く始末…。こんな事件でまさか最高裁まで?と不安になるも、そこでボス側は裁判官に𠮟られ、支払い命令を受け、やっと観念しました。

裁判が始まってから結審するまでの期間は約1年。数年ぶりでやっと未払賃金とケガの治療費を含む慰謝料が入ってきましたが、あのボスは何だったのか??今でも驚きの人物です。

まだ我が家に『脅し取られた』『はめられた』と思っているという、まったくもって凄い方ですが、何よりも驚きなのはその常識。診断書の他にも、『辞令』や『解雇』の意味をよく知らないなど(本気です)の事実も発覚。

そして、他にも独特な常識を披露するなど、騒動中はさまざまな関係者が驚愕の表情を浮かべる場面が多々あり、今振り返れば我が家の珍事件となっているのです。

《補足》

実際に裁判になれば、弁護士との打ち合わせが始まります。ここで重要なのは、証拠集めや音声のテープ起こしなどはしっかり自分でやること。弁護士はそれらを法的な闘いに持っていく為の材料として使う役割です。

裁判初心者だと気持ちが焦ってしまい、始めからあらゆる証拠を出したい衝動に駆られるのですが、弁護士に任せて一手一手慎重にカードを使うのが有効です。実際に、相手が二審ぐらいで出してきた嘘の証言を覆す音声録音があったことで、一気に有利になった経緯があります。

実際に勝訴で終わってみれば笑い話の事件ですが、途中経過においては、暴行の目撃者が全員会社に寝返るという、有りがちな展開や、歯がゆい想いは相当しています。私は事件当日から詳細なブログを書き、同時進行で労働基準監督署に相談してきましたが、事実をしっかり記録しておけば大丈夫です。ブラックの場合ほぼ隠蔽があるようですが、嘘は必ずつじつまが合わなくなるものです。

この記事を書いたユーザー

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音楽業界を経て、フリーのデザイナー兼ライターを生業にしております。ポジティブに解決したトラブルや実体験ネタを中心に書いています。8歳下の夫と愛犬の気ままな3人暮らし。音楽好きのゴシック好きの和服好き。オカルトも大好きでございます。好きな作家は芥川龍之介、詩人は中原中也☆

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