はじめに

これは私の話です。書こうか迷ったのですが、あまり現場からの記事というのはないと思いましたので書くことにしました。少しだけ変わった話ですので、読んでください。

私は高校教師です。北海道のとある高校で英語を教えています。そして、この3月1日に担任をしたクラスの卒業生を出しました。私が勤めている高校は進学校ではありません。かと言って、崩壊しているかというとそうでもありません。ほとんどが素直ないい子たちばかりです。ただ、楽な仕事は世の中にないのはご承知のとおりです。

昨年の3月まで私は海外にいました。文科省から日本語教師として2年間カナダに派遣されていたのです。そして、帰国後に教頭から「3年生の担任をやってもらえないか」と打診がありました。10秒ほど考えて私は「はい。分かりました」と言いました。「頼まれごとは試されごと」という言葉が降りてきたからです。そして、4月から担任になりました。

なぜ3年生の担任に「穴」が空いていたのか?それは、2年生のときの担任の先生が転勤でいなくなってしまったからです。その結果、2年間の空白を持つ私が担任をすることになりました。生徒の誰一人顔も名前も知りませんでした。

そうして新学期が始まりました

はじめてホームルームに担任として入った日のことは忘れません。みんな一同に呆然とした顔をしていました。当然です。今まで学校内で一度も見たことのない人間が目の前にいるのですから。私はひと通りの自己紹介と挨拶をして、教室を出ました。心臓はバクンバクンと波打ち、手汗をびっしょりかいていました。

目標は決まっていました

卒業と進路実現。これしかありません。しかし、問題はお互いに何も知らないということです。3年生の担任は、調査書や推薦書など進路上とても大切な書類を書かなければなりません。3年生の担任を受けたからには、やり遂げなければいけません。そこで、変則的ではありましたが、ほぼすべてのHRを一方的に先生から連絡するのは止めて、「個人面談」をすることにしました。人間関係が0なら、まずそれを1にすることから始めるしかありません。カナダでもやっていたことです。

紆余曲折がありました

色々ありました。葛藤もありました。しかし、結論から言えば、結果オーライでした。今年の2月中旬に全員の進路が決定し、卒業が確定しました。正直、ホッとしました。文字通り肩の荷が降りた気がして、本当に肩が軽くなりました。それでも、何か心に引っかかるものがありました。

新しいことに常に挑戦しろ

と、私は機会あるごとに生徒に言ってきました。カナダから帰国後すぐに3年生の担任を受けたのも私にとっては大きな挑戦でしたし、英検1級受験(見事に落ちましたが)やTEDの翻訳にもチャレンジしました。学校祭で生徒と一緒にウクレレも弾きました。

2月に入り3年生が家庭学習となって、ぽっかり心に穴が空いたようでした。また何かチャレンジしなくては「言ってることとやってることが違う」ということになってしまいます。

そこで見つけたのが「あったかいんだから」の動画です。そして、そのRemixに踊りをつけたプロの動画を見つけました。やるなら流行りモノがいい、そう思いました。もし私がマイケル・ジャクソンを踊ったとしたら「昔からできたんじゃないか」と思う生徒もいるでしょう。流行りモノであれば今チャレンジしたことが一目瞭然です。それに、生徒の前で踊ったことなど今まで一度もありませんでした。サプライズの舞台は「3年生を送る会」です。

そして 三年生を送る会が始まりました

生徒会の3年間のスライドの後に、サプライズが始まりました。生徒会の司会生徒が「それでは、3年生の先生方からサプライズの出し物がありますので、どうぞ」と言うと、3年生の座席は「何々何?」とざわつき始めました。

学年主任が監督した映像が流れ出しました。私だけではなく他の卒業担任の先生も「何か」をしました。オタクの先生は自慢のフィギアと共にメッセージを発し、ナイキばりのスキー映像やコントやタップダンスまでありました。私の番を待つ間、変な汗がたくさん吹き出てきました。手のひらは例のごとくベトベトです。

練習メイキングから始まりました

なぜ「あったかいんだから」なのか?というメイキングから映像が流れます。テロップは監督の学年主任の演出です。一切私からのリクエストはしませんでした。しかし、なぜかそこには私の言いたかったことが書かれていました。私の葛藤を学年主任は知っていたに違いありません。

出典しまじり

途中何度も挫けそうになりました。正直「調子にのって、担任など受けなければよかった」と思ったこともありました。

出典しまじり

まだ挑戦を止めてはいけない。どんなにくだらないように見えることだって意味があるはずだ。そう思うようにしました。

出典しまじり

ネガティブな自分ほど、何かを辞めさせる説得力に満ちていることはありません。本気になることの大切さをまずは「自分に」示さなくては。

出典しまじり

何か言われたらどうしよう。ウケなかったら?管理職に呼ばれたら?よぎる不安感。

出典しまじり

評価は他人。自己満足だと言われるかもしれない。でも、悔いは残したくない。やれることはやろう。

出典しまじり

ステージに立つことをイメージしてやろう。いつも「イメージしろ」と自分で言っているじゃないか。

出典しまじり

これは「茶番1」ですが、ただでさえテンポの早い踊りに慣れるために1.2倍の速度で踊った次の日には筋肉痛で同じ顔になりました。

出典しまじり

iPhoneを捨てる「茶番2」…。

出典しまじり

やるまえにあれこれ悩んでも仕方ない。やってから考えろ。ブルース・リーも言っています。"Don't think. Feel."(考えるな。感じろ)

「挑戦こそが人生だ」

ビデオの中の私がそう言い放った瞬間、体育館横に待機していた実際の私はステージ上に駆けていきました。踊りが始まるまで8拍しかありません。3年生の顔が見えます。ここからはライブの踊りです。約1ヶ月間の私の挑戦が試されようとしていました。

「クマムシ/あったかいんだからremix」を先生も踊ってみた

出典 YouTube

おわりに

これはリハの動画ですが、本番は3年生全員が手拍子をしていました。「しま〜」という声も聞こえました。踊りに必死で涙は出ませんでしたが、晴れ晴れとした3年生の表情を見ていて「やってよかった」と思いました。踊り終わった後に「Never Stop Challenging!」(挑戦を止めるな!)と言い放ったのですが、大歓声にかき消されました。私の挑戦はひとまず終わりました。「3年生担任リリーフ」も「あったかいんだから」も。

終了後、男子生徒が言いました。「先生、キレッキレだったね。感動したよ」と。また、女子生徒が言いました。「先生、なんでそこまで一生懸命にやってくれたの?(涙)」(まさかこの滑稽な踊りで泣くとは…)私は気の利いたことは言えませんでしたが、学年主任の一言がキラーでした。「お前らが、めんこいからだべや(北海道弁:かわいいからだよ)」言われた生徒は再度号泣していました。それを見て学年主任も泣いていました。私もあったかい気持になりました。

よい一日を。

こちらの記事もどうぞ

この記事を書いたユーザー

しまじり このユーザーの他の記事を見る

Amebaみんなの編集局公式ライター。札幌在住。三人娘の父。TED翻訳者。カナダで二年間「にほんご」を教えた経験から、北米で話題の記事や動画について紹介します。気に入ったらTwitterやFacebookでシェアしてください。Thank you.

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス