店の扉には「中華そばのみは、お断りしております」の貼り出し。それほどラーメンを求めて訪れる客が引きも切らない。

武蔵小山駅から歩いて約5分、ひっそりとした住宅街にあるこの店は、実は焼鳥店。控えめな佇まいながら、昨年度末には『ミシュランガイド東京2015』のビブグルマン和食部門の焼鳥カテゴリーに掲載され、そのクオリティにお墨付きを得た。

そして、そのミシュランもまた、『中華そばはもう一つの名物』と高く評価したのだが、この店のラーメンを知るなら、やはり焼鳥抜きには語れないだろう。

出典 http://prestige.smt.docomo.ne.jp

イラストは店主、児玉さんの同級生であり、イラストレーターのソリマチアキラ氏

店主の児玉昌彦さんの確かな焼きの技術によって、肉のうま味がしっかり閉じ込められた焼鳥は、ひと串約60gと大振りで食べ応えも十分。

ひと口いただけば至福に包まれる、申し分のない焼鳥なのだが、うわさ通りかといえば、そうではない。うわさでは知り得なかったのが、なんともたまらない香りだ。『まさ吉』の焼鳥は、まず香りで食べさせるのである。

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良質の脂たっぷりの肩ロース部分も入った「せせり(270円・左)」と、やげん軟骨や皮などのごろっとした食感と、柚子の風味も楽しめる自家挽きの「つくね(250円・右)」

肉は、新潟の越の鶏と千葉の地養鶏。部位によって使い分け、それに最高級の紀州備長炭の燻香をたっぷりとまとわせる。

細丸でしか得られないという、このふくいくとした燻香が素晴らしい。その香りと肉のうま味だけで十分勝負できるからこそ、ここではレバー以外は基本、塩で供される。

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せせりなどから滴り落ちる上質の脂が燻香と交わり、さらにふくよかな香りを生む

そこで中華そばだ。鶏ガラは、せせり部分を取り除いた上半身のみを使う。臭みのある下半身部分は使用しないため、スープ作りにおいて薬味などは一切なし。

ただし、大量の手羽先を一緒に煮込み、良質のコラーゲンを抽出する。こうしてとろみを出すことで、ストレート麺によくスープがからむのだ。

麺は、あのラーメンの鬼と謳われた佐野実氏の『支那そばや麺工房』のものだという。

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煮立たせる一歩手前の97度でキープし、えぐみが出る前に鶏ガラは引き出す

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『支那そばや麺工房』から週2回仕入れる麺。細いストレート麺は見た目も美しい

「焼鳥店だからこそできる清湯スープには、やはり臭みのない内モンゴルのかんすいを使った『支那そばや』の麺がベストだと思ったんです」。

幾度も断られた末に、直々に教えを乞うた佐野実氏には、その熱意と探求心を見込まれ、スープに使う羅臼昆布や醤油も佐野氏ゆかりのものを使っている。

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店主の児玉昌彦さん。「佐野さんとの出会いが運命の分かれ道でした」

具材は、鶏チャーシュー、小松菜、玉子、海苔、ナルト、ネギ、柚子の皮少々。鶏チャーシューは、越の鶏のモモ肉をじっくり炭火で火入れし、醤油ダレに漬け込む。

こうして燻香の溶け出したタレには、次に半熟卵を漬け、香りを移す。ちなみにこの卵も、濃厚でコクがありながら卵独特の臭みのない豊和養鶏場の『とよんちのたまご』だ。

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ラーメンに使う醤油は、和歌山県野尻醤油

端整に盛り付けられたラーメンからは、ふわっと醤油の香ばしい香りが一面に漂う。醤油は店で加熱処理を施し、ラーメン鉢の中で熱い鶏スープと合わせた瞬間に、香りを立たせるようにしているのだ。

そこでひとすすりすると、今度はしっかりとしたコクとうま味のあるスープに、ほんのりとした燻香と柚子の香りも加わる。麺を引き上げれば、確かにスープも上がってきて、きちんと深い味わいを残す。あとはもう完食まで一直線だ。

焼鳥店ゆえのうま味と香りに満ちたこの一杯を、ぜひ一度。ただし、焼鳥の〆でどうぞ。

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鶏中華そば(780円)。満腹の人向けに(小)もある(580円)

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