離れられない一人と一匹

7歳のアンソニー・マーチャント君は脳性まひを持ち、てんかんも患っています。二つの仕事を掛け持ちしながら女手一つで彼を育てているモニカさんは、障がいを持つ愛息アンソニー君の為にピット・ブルのスティービーを迎え入れました。

苦しい家計の中からスティービーの訓練と介助犬としての免許を取得する費用を捻出。この訓練の結果、スティービーは車椅子に座るアンソニー君の膝に乗って彼の頭の位置を直し気道を確保したり、てんかんの発作やその他アンソニー君に異常が起きた場合に周囲の人間にそれを伝えることができるようになりました。

24時間体制の介護が必要なアンソニー君ですが、スティービーのお陰で自身も周囲の人間も、以前よりも自由に行動できるようになりました。片時もアンソニー君の元を離れようとしないスティービーにモニカさんも絶対の信用を抱いているそうです。

“(Stevie) has saved Anthony’s life. I feel completely safe every time he is with the dog, because I know the dog will look for help.”

「スティービーはアンソニーの命を救ってくれたの。何かあればすぐに他の人に異変を教えてくれるから、息子がスティービーと一緒にいる時は安心していられるわ。」

出典 http://www.miamiherald.com

学校側からの拒絶

寝る時もいつも一緒のスティービーとアンソニー君。スティービーに助けられながら日々力強く成長し、ついに学校へ通う日がやってきました。しかし法的に許可されているはずの介助犬との登校に、学校側が難色を示しました。

スティービーを伴っての登校は受け入れられたものの、学校からは数々の条件が出され、モニカさんは『スティービーのハンドラー』を実費で雇うことを求められました。学校側がスティービーの世話係(リードを持つ、排泄時に外へ連れて行く等)を用意するまでの数ヶ月間、モニカさんは仕事を休んで学校へ付き添わなければなりませんでした。

しかしながら、専門的な訓練を受けたスティービーは学校にいる間はものも食べず、水も飲まず、排泄も散歩も必要とせずに過ごすことができるのです。もちろん決してリーシュを引っ張ったり勝手に走り回ったりはしないスティービーですが、学校側はスティービーのリーシュをアンソニー君の車椅子に括り付けることを許可せず、常に人間が持つことを求めました。

二年間の闘い

アメリカの法律では、公共の場での介助犬の同伴は『一般的に』受け入れられるべきである、とされています。これをもってモニカさんはスティービーを伴い、アンソニー君が単独(犬のハンドラー無しで)で学校へ通う権利を求めて訴訟を起こしました。

学校側の言い分は、「アンソニー君の世話係は既に確保されており、介助犬の同伴は要さない。」というものであり、論点はスティービーの介助犬としての特殊な働きがメインとなりました。

アンソニー君が学齢に達してから二年という長い闘いの末、先週ついに地方裁判所での判決が下り、裁判官は学校側の訴えを棄却。アンソニー君とスティービーは、晴れて一人と一匹水入らずで学校生活を送る権利が認められました。

出典 http://www.miamiherald.com

(担当の弁護士と)

ただのペットじゃない...働く犬達への理解を

24時間一緒にいるアンソニー君とスティービー。介助犬でありながらもアンソニー君のかけがえの無い親友でもあるスティービーは、忙しい、働くシングルマザーであるモニカさんにとっては救世主でした。

家にいる時は普通のペット同様に家族に愛されているスティービーですが、アンソニー君の妹にはほとんど関心を持たないそう。アンソニー君に一生仕える介助犬としての心構えは根強くスティービーの内に息づいているのです。

近年、日本でも盲導犬を始めとした働く犬達への理解は浸透していますがやはり時々耳にする入店や乗車拒否問題。もちろん世の中には動物が苦手な人もいますし、頭ごなしに批判することはできません。

しかし、動物が人間の為に働くことができるよう訓練を始めたのも他ならぬ私達人間。健常者にとっては「可愛い家族の一員」という存在の彼らは、一部の人々にとっては無くてはならない存在だということを一人ひとりが忘れずにいることで、バリアフリーな世界が広がっていくのでは無いでしょうか。

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