チョコスプレッド「Nutella(ヌテラ)」で有名な、イタリアの食品メーカーFerrero(フェレロ)社の創業者であるMichele Ferrero(ミケーレ・フェレロ)氏が、今月14日バレンタインデーに89歳で死去しました。

その死にあたっては、イタリアの大統領も声明を発表するなど、同国を代表する実業家の一人でした。何かとお騒がせだったベルルスコーニ元大統領よりも裕福で、フォーブスが選ぶ世界長者番付の常連であったりと、世界有数の富豪としても著名でした。

ココア入りヘーゼルナッツのスプレッドであるNutellaは、朝食の定番としてすっかりお馴染みです。Nutellaだけでなく、ヘーゼルナッツをチョコとウエハースで包んだ「フェレロ ロシェ」もまた、フェレロ社の看板商品のひとつです。

出典 http://www.gettyimages.co.jp

世界で最も売れている箱入りチョコレートのフェレロロシェ。

はじまりは「ジャンドゥーヤ」から

ヘーゼルナッツペーストをチョコレートに練り込んだ「ジャンドゥーヤ」は、1860年代にイタリアで生まれたチョコレート菓子です。カラフルでポップなチョコレートで今も人気のあるカフェレル社が開発しました。

イタリア発のチョコレート菓子ジャンドゥーヤを、Nutellaというスプレッドに形を変えることで、世界に愛される商品に育て上げたのが、ミケーレ・フェレロ氏とフェレロ社でした。世界のチョコレート市場におけるシェアは7.3%、イタリアでのシェアは45%というチョコレートのトップカンパニーのひとつです。

もともと菓子職人であった祖父が始めた店を、フェレロ氏の父親が法人化。その会社を、世界20カ国以上に支社や工場を持ち、従業員は全世界に2万人以上という多国籍企業にまで大きくしたのが、フェレロ氏です。

成功者だが目立つことを嫌った

世界有数の富豪でありながら、敬虔なクリスチャンでもあったフェレロ氏の日常は、華やかさとは無縁でした。同じような成功者と交友を深めるパーティの場よりも、フェレル社の工場でしょっちゅう目撃されるなど、その生活の中心には事業がありました。

通勤専用バスや無料の医療ケアといった福利厚生を充実させ、従業員の働きやすさに早くから配慮していたおかげか、ストなど労働争議とは無縁でした。ファミリービジネスから始まった会社はその社風もまた家族的で、家族的経営を貫くためか、非上場企業のままでした。

誇りに思える人と、ともに働けた。その感謝の気持ちを表すかのように、現在フェレロ社のサイトトップページには、「We are proud of you. Thank you Michele」のメッセージと、公式の場では常にサングラス着用だったMichele Ferrero氏が、素顔で微笑む姿を見ることができます。

大きな成功を収めつつも、従業員や取引先ともフェアな関係を築くことにも成功した。実業家として理想的ともいえるフェレロ氏ですが、現実的な面もあわせ持っています。

彼のように裕福な人たちをターゲットにした「赤い旅団」というテロ組織が暗躍するとともに故郷を離れ、モナコに居住地を移しました。タックスヘイブンとして知られるモナコに移住することは、自国への裏切りという面もあわせもちます。個人資産はモナコに移しても、フェレロ社という世界企業はイタリアに残した。イタリアには会社が落とす富を残したと言えます。

郷土のお菓子に過ぎなかったジャンドゥーヤにアレンジを加え、世界に通用する製品にブラッシュアップすることで富を築いた。従業員の働きやすさに配慮することで無用な労働争議を免れ、成長に専念することができた。個人としての富はキープしつつ、故国にもお金が落ちる配慮は怠らなかった。

その抜群のバランス感覚が、彼に富だけでなく、大統領や従業員といった幅広い人に支持される、名声をももたらしたと言えます。

(参考 http://www.theguardian.com/business/2015/feb/17/michele-ferrero 他)

2015年は8年ぶりに3ケタ台、100社以上の会社が上場を予定している、上場ラッシュの年となります。企業経営には様々なゴールがありますが、非上場を貫きながらも世界的企業を育て上げ、理想と現実をバランスよく体現させた故Michele Ferrero氏の生き方も、ひとつの答えになりそうです。

フェレロ氏の選択は、富を追うだけに終わらない、古くて新しい、世界に先駆けた挑戦だった。そう思えてなりません。

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とある地方都市在住の暇な人です。おかたいところとばっかり縁があった反動で、すっかりゆるふわ好きになりました。リラックスして楽しめる、そんな情報をお届けしたいと思ってます。

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