波の音と人の声と鈴の音しかしない島

バリ島のお隣ロンボク島の沖合に浮かぶ小さな3つの島ギリ・アイランドは、"エンジン音"のしない島。そこでは観光客だけでなく島民さえも、自動車とオートバイの使用が禁止されています。

近年バリ島では自動車とオートバイの台数が爆発的に増え、排気ガスだけでなく騒音も問題になってきているほど。そんな喧噪から逃れ、ここへやってくる人たちが後を絶ちません。

バリからギリへ航路

ギリへ行くには二つの手段があります。一つは海路。バリの空港がある中心部に近い港スランガンからバリ東部の港パダンバイまで75分。パダンバイからさらに75分ほどでギリに到着です。もう一つは空路。

まずロンボクまで飛び、そこから車でギリに近い港まで移動。そこから船でギリに行くことになります。今回は海路で行くことにしました。船酔いの心配のない方には断然お勧めです。

ギリ三島

出典Masayuki Oka

ギリは3つの島からなります。ギリトラワンガンは一番大きな島で、別名"パーティーアイランド"と呼ばれています。繁華街がある東地域やサーフスポットのある南地域、また夕日が美しい西地区では、連日朝までパーティー三昧。

静かにのんびりしたい方は、北地区がお勧めです。ギリメノは別名"ハネムーン・アイランド"。3つの島の中で最も静かな島で、なにもせずただゆっくりしたい方にはお勧めの島です。

ギリアイルは別名"バックパッカー・アイランド"。最もローカル色が強い島で、リゾート施設はあまりないですが、何と言っても安宿が豊富です。

出典Masayuki Oka

トラワンガンの港の風景は、まさにのどか。大きな埠頭があるわけでもなく、ビーチに船が直接着岸しています。島には大きな建物もなく、木々がうっそうと生い茂っている感じ。

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いよいよ上陸です。島のメインゲートも実にあっさりとしたもの。

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海岸沿いの木立を抜けると、島一番の繁華街があるメインストリートに出ます。観光客を待ち受けるのはタクシーの群れではなく、馬車の群れ。噂には聞いていましたが、実際にこの雰囲気を生で体験すると感動的です。

馬の息遣いとリズミカルな蹄の音、馬車に付けられた装飾品や鈴の音、そして人々が交わす声…。エンジン音の無い雑踏は、想像以上に心地いいものです。日本だと明治期、東南アジアの多くの地域では数十年前はこんな感じだったのでしょう。

異国旅情にあふれたノスタルジックな気分が味わえること間違いなしです。

出典Masayuki Oka

メインストリートの建物もほとんどが二階建てまでのもので、周囲の森にすっぽりと入っているような町です。さながら、映画のセットのような雰囲気。マッチョな男たちもスポーツカーやハーレーではなく、みんな自転車にまたがっています。

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行き交う者もみんなハッピー。「イエーイ!」ってHigh-Five(和名ハイタッチ)をしながらすれ違います。連日連夜パーティーが行われる島ですから、昼間のノリもこんな感じです。

ギリ・トラワンガンのメインストリートを馬車でゆく

出典 YouTube

この島で許される交通手段は、馬車、自転車、そしてもちろん馬。自転車でも1周およそ1時間ほどの小さな島です。島内には32台の馬車があるそうですが、ピーク時にはなかなか捕まらないことも。港から各ホテルまで歩いて移動している人も大勢いました。

ホテルまでのんびり歩くのもいいかもしれません。交通量の多いバリ島ではなかなかできないことですから。

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馬だと海岸も移動できるので、一番自由度があります。馬上で浴びる海風は格別でしょうね。

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島を一周するように道があるのですが、ホテルの少ない北エリアでは所々がビーチとつながった砂の道となります。

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砂の道を馬車は軽快に駆け抜けていくのですが、自転車は一苦労。特に2人乗り自転車などは大変みたいでした。まあ、この島ではのんびり行きましょう。

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この島にはトラックもないので、さまざまな作業にも馬は大活躍です。ギリのゴミ回収車ももちろん馬車。

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生活資材を運ぶのももちろん馬車です。ちなみにホテルなどの建築資材はどうするんだろう…?島の人に聞いてみたところ、大きな資材は船で近くの海岸まで持ってきて、そこから人海戦術で運搬するそうです。

もちろん重機などもないですから、大きな建物も全て人の手だけによって建設されます。

出典Masayuki Oka

馬車を運転しながらの携帯電話の使用はOKみたいです。

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島内にはたくさんの動物であふれています。牛、ブタ、ヤギ、鶏、アヒル、七面鳥…。いずれも貴重な食材です。ヤギ肉は地元民が好んで食べるとのこと。

出典Masayuki Oka

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ここが今回の宿GILI ECO VILLAS。ひなびた感じが何とも言えない味わいを醸し出しているヴィラです。広大な敷地内に7つしか部屋がなく、部屋の目の前まで馬車が入れるようになっています。

出典Masayuki Oka

中はまるで大きな公園か熱帯植物園のよう。子供には堪らない雰囲気です。そのまま映画の撮影もできちゃいそう。

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各ホテルでは自転車を借りることができます。もちろん無料。ここはチャイルドシートもたくさんありますので、小さな子供がいても安心。ただ、ヘルメットはありません。というより、この島では見たことがありませんでした。

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馬を希望すれば、すぐにやって来てくれます。

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このヴィラに居付いている黒ヤギさん。シャイな彼は、最初のうちは物陰から様子をうかがっていますが、すぐに慣れて近寄ってきます。

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このホテルのマスコット、猫のスシ嬢。さて、この島には人間にとって最もポピュラーな"あの"動物が一匹もいません。そう、「犬」です。ギリはエンジンが禁止なだけでなく、犬も禁止されています。

野犬化して人間を含め他の動物に被害が及ぶことを避けてのことだといいます。

出典Masayuki Oka

ちなみにお隣のバリ島には本当に多くの犬がいて、ほとんどが放し飼いになっています。野犬と飼い犬の区別もなく、歩行者が路上で犬たちに囲まれてしまうことも。

夜どおし(特に満月近く)外で吠え続けていることもあり、オートバイと犬の吠える声が全く聞こえないギリの夜の静けさは、バリ島在住の僕にとって、とても新鮮な体験となりました。

ただ、猫が増えすぎて、野良猫が島では問題になってきています。レストランで食事をしていると、どこからともなく猫たちがやってきて、テーブルや椅子の下に潜り込み、食べ物を催促します。その都度その都度スタッフがつまみだすのですが、いずれ猫も禁止されるのかもしれないとのこと。

出典Masayuki Oka

やっぱりギリの醍醐味といえば、海の美しさ。ウミガメもたくさんいるとのことなので、見に行くことにしました。美しいサンゴと色とりどりの魚たち…。

そして本当にウミガメがあちこちにいます。シュノーケリングでもウミガメと一緒に泳ぐことができました。

出典 YouTube

ギリは夕日の美しさでも有名。夕方近くになると、たくさんの人たちが夕日を見に西エリアにやってきます。沈む夕日が神々の島バリを照らし出す姿は、まさに神々しいの一言。

出典Masayuki Oka

バリの霊峰アグン山も、鮮やかに浮かび上がります。

出典Masayuki Oka

ところで、建物が少ない北エリアと西エリアでは、夜には注意が必要です。ホテルがある場所だけは明るいのですが、それ以外の場所は真っ暗になります。

自転車で夕日を見に行く場合は、念のため懐中電灯などを持参しましょう。

出典Masayuki Oka

さて、馬車と自転車の島ギリにも、ハイテクの波が押し寄せてきています。ついに電動バイクが登場し始めました。まだ台数は少ないので黙認されてますが、増えてきたら使用の是非を巡って議論になることでしょう。

出典Masayuki Oka

おまけ ~ギリの見過ごすことのできない現実~

ノスタルジックな情緒あふれる極上の"スロー・リゾート"ギリアイランドですが、避けては通れない大きな問題を抱えています。それは、ゴミ問題。

バリやジャワなどから多くの漂流ゴミがギリの海岸に流れ着いていて、これを除去するのは実に大変な作業なのです。(厳密にいうと漂着ゴミだけではありません。ちゃんと回収されるのはホテルなど商業施設からのゴミだけで、地元民の多くはゴミを島の至る所に捨ててしまいます。)

ホテルやレストランのあるビーチは毎日清掃されますが、それ以外の場所はゴミが放置されていて、美しいビーチと汚いビーチのコントラストがなんとも言えない残念な印象を与えます。

出典Masayuki Oka

ビンやプラスチック、ビーチサンダルなど漂着ゴミで作られた"アート"作品が、西海岸には多く見られます。インドネシアは洋上投棄ゴミ排出量が中国に次いで世界第2位。このままの状態が続くと、10年後には流れ着くゴミの量が2倍になると言われています。

出典Masayuki Oka

バリとギリを結ぶ船の上から。潮目に沿って、何キロも"ゴミの道"が続きます。

出典Masayuki Oka

しかし、この島が美しいことには違いありません。排気ガスとエンジン音と犬の鳴き声を避けるためにここを訪れる人は、これからも増え続けることでしょう。キュートな動物たちも訪問者を歓迎してくれます。ギリ・アイランドより、愛をこめて。

出典Masayuki Oka

今回の宿。料理も美味しく、スタッフも親切。お勧め度五つ星です!

今回利用した高速艇。バリとギリを結ぶ船はいくつかありますが、ここは日本語対応もあり、快的な船旅を約束してくれます。

最後に、世界にある他の"エンジン禁止"地域の紹介です。

この記事を書いたユーザー

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父子で世界を旅するライター。インドネシア・バリ島在住。すべてが竹で作られている究極のエコ学校"グリーンスクール"内のファミリービレッジにて息子と生活し、執筆活動中。
http://nge.jp/author/oka

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