ここ最近、「プ女子」という言葉がメディアを賑わせているのをご存知ですか?「プ女子」とは、「プロレス女子」の略、つまりプロレスファンの女性を表す言葉です。

一時期低迷していたプロレス人気がこの数年でV字回復を遂げるとともに、20代、30代の女性ファンが急増、現在では観客のおよそ3割を女性が占めているといわれています。団体によっては、観客の半分を女性が占めるところもあるとか。

実際、プロレスの聖地といわれる後楽園ホールに行くと、たくさんの女性ファンが詰めかけているのがわかります。友人同士で観戦する女性もいますが、1人で観戦する女性も少なくありません。

この、女性ファンの絶対数の増加に合わせ、女性向けの新日本プロレス公式ビジュアルガイドも登場しました。中は選手のグラビア風インタビューになっていて、人気選手のカレンダーポスターもついています。

出典主婦と生活社

「プ女子」のルーツ

この「プ女子」という言葉が広まるきっかけになったのが、昨年末に発売された、広く。さんのイラスト集『プ女子百景』です。これは、広く。さんご自身のブログ「プ女子百景《プロレス女子図鑑》」で更新されていた、女子中学生たちがプロレス技を掛け合うイラストを1冊にまとめたもの。

ポピュラーなものからマニアックなものまで、掛けも掛けたり260技のプロレス技図鑑となっています。既に重版がかかっており、メディアでも注目のイラスト集です。

広く。さんは、10年来のプロレスファン(新日本プロレスの内藤哲也選手の大ファン)で、新日本プロレスの公式モバイルサイトで「新日本学園・女子イラスト部」の連載をされているほか、激闘を学園モノとして描いた新日本プロレス公式電子コミック『HIGHER AND HIGHER!』の著者でもあります。

このように、今メディアから大注目されているプロレス女子ですが、女性がプロレスにハマる理由は何なのでしょうか。今回は、女子目線でのプロレスの魅力を、長年新日本プロレスに魅了され続けている筆者が考察してみました。

会いにいける、さわれる、魅力的なプロレスラー

女性ファンが増えた理由、それは何といっても、女性にとって魅力的なレスラーが増えたことだと思います。草食系男子、あるいは絶食系男子が登場とまで言われる昨今、強い男性に憧れをもつ女性の心を掴んでいるのが、プロレスラーだといえるのではないでしょうか。

昔は近寄りがたさがプロレスラーのイメージだったかもしれませんが、近年のプロレスラーは皆私服もおしゃれですし、ブログやツイッターなどで発信されるのは親しみやすい素顔。リングの中では鍛え上げられた肉体と精神を持って闘い、リングを下りれば気さくで穏やか、むしろ可愛いと思ってしまうくらいのギャップに、女性が惹かれないはずはありません。

会場に行けば、その肉体一つで相手と対峙する姿を見ることができ、花道でその肉体に触れることもできるかもしれません。サイン会や撮影会に行けば、握手やハグ、中にはお姫様だっこをしてくれる選手まで。

(筆者もしてもらったことがありますが、ひょいっ、と持ち上げてもらいましたよ。メロメロになりますね)

まずは、新日本プロレスのエースを超え、今やプロレス界のエースとなった、100年に1人の逸材、棚橋弘至選手。見事に鍛え上げられた肉体から繰り出される攻撃の数々、相手の攻撃を受けきった上で何度でも立ち上がる、不屈の精神。

勝利した暁にはエアギターで観客を楽しませ、リングサイドに押し寄せたファンにハイタッチ。その姿は、まさにヒーローそのもの。

新日本プロレスが混迷を極めた時代(ご本人曰く「新日本プロレスが迷子になっていた時代」)にチャンピオンとなり、溢れるプロレス愛で地道なプロモーション活動をこなし、見事に新日本プロレスのV字回復を成し遂げた立役者です。

そして、その棚橋選手の永遠のライバル、中邑真輔選手。アマチュアレスリングのバックボーンを持ち、デビューわずか1年4ヶ月でIWGPヘビーのベルトを奪取し、史上最年少王者(23歳8ヶ月)となりました。

個性的な髪型、長い手足、研ぎ澄まされたセンスが独特のクネクネした動きと相まって、見る者に強い印象を与えます。棚橋選手が太陽なら、中邑選手は月。陰と陽二つの極の闘いが、苦境の新日本プロレスを救ってきました。

ここ数年は、IWGPインターコンチネンタル王者として君臨し、その独特の世界観がさらに覚醒した感があります。

棚橋選手と中邑選手というツートップに肩を並べ、あっという間にスターの道を駆け上ったのが、金の雨を降らせる男、レインメーカーことオカダ・カズチカ選手です。

2012年2月に、大方の予想を覆し、絶対王者として君臨していた棚橋選手を破って24歳3ヵ月の若さでIWGPヘビー級王座についた後、史上最年少(24歳9ヶ月)でのG1クライマックス優勝、東京スポーツ社制定のプロレス大賞も史上最年少MVPと、まさに「規格外」。

191㎝という高い身長から繰り出されるドロップキックは、プロレスを知らない素人が見ても驚異そのものです。

さらに、スイーツ真壁でおなじみの真壁刀義選手。地方会場で最も声援が大きいのがこの真壁選手だそうで、お茶の間にその存在が浸透していることがうかがえます。

自らが「雑草魂」というように、必ずしも会社から期待される選手ではありませんでしたが、他団体との対抗戦で覚醒。現在のトップ選手としての地位を築いてきました。

いかにもプロレスラーそのものといったゴツい見た目と同様、額からの流血もものともしない荒々しいファイトスタイルと、リングを離れればスイーツ好きというギャップが、女性ファンの心をグッと掴みますね。

この4人だけではありません。DDTプロレスリングと新日本プロレスの史上初のダブル所属でもプロレス界に新たな風を呼び込んだ、爽やかイケメンかつ型破りな飯伏幸太選手。

2本指で目を見開くポーズでおなじみ、ヘビー級ながら素早い身のこなしで魅了する「スターダスト・ジーニアス」内藤哲也選手。「昇天・改」「牛殺し」といった、聞くだけで男臭い荒々しい必殺技を持つ、「荒武者」後藤洋央紀選手。

後藤選手の盟友で、総合格闘技に挑戦して現在新日本プロレスに復帰した、見た目もファイトスタイルもストイックな柴田勝頼選手。さらにさらに、永田裕志選手、中西学選手、天山広吉選手、小島聡選手といった、「第三世代」と呼ばれるベテラン選手も、見る者にプロレスのすばらしさを教えてくれます。

そのほか、ジュニアヘビー級(100㎏未満の階級)の選手、外国人選手など、魅力的な選手はたくさんいすぎて、挙げきれません。(挙げなかった選手のファンの方には申し訳ないかぎりです)

女子の心を掴むセット売り

基本的に女性は、男性が複数でわちゃわちゃ楽しくやっているのを見るのが好きな生き物。クラスの男子もそう、芸人さんやアイドルもそう。ジャニーズのアイドルが基本的に「セット売り」であり、「セット売り」のバラエティ番組が人気なのも、その女性心理をうまく利用しているからでしょう。

実は、プロレスの興行は、図らずもその「セット売り」をしているのです。当たり前のことですが、プロレスは闘い。選手が仲良しこよしをやっているわけではありません。しかし、本当に心から憎しみあっているのなら、それは殺し合いになってしまいます。

「お互いのことを憎んでいるわけではない、認めるところがないわけではない、でも、俺が勝ちたい」プロレスにはこのような、現実世界ではなかなか体験できない、男性同士の人間関係の魅力があるのです。

また、プロレスの特徴は、必ずしも1対1で闘うわけではないところにもあります。複数の選手が組むタッグの絆、ユニットの絆。そして根底にある、闘う相手ではあるけれど、興行を盛り上げようという点では志を同じくする、対戦相手との絆。その絆が見え隠れするところに、一回性の強い格闘技には見られない魅力があります。

3ヶ月より半年、半年より1年、3年、10年…と、見れば見るほど楽しみが増すのもプロレスの特徴です。かつての盟友との再会、運命のライバルとの2年ぶりの対戦、お互いに認めていなかった2人の時を超えた和解、などなど、時を超えた関係性を、選手と共に味わうことができるのです。

出典週刊プロレス

かつて新日本プロレスを退団した柴田選手と、低迷していた新日本プロレスをV字回復させた立役者の棚橋選手の、歴史的な和解の握手を表紙で報じる週刊プロレス。 棚橋「ヤングライオンの頃を思い出しますね」

柴田「(10年間)新日本プロレスを守ってくれてありがとう」2人の音声は拾われていなかったが、テレビ朝日「ワールドプロレスリング」の中継では、字幕入りでこのシーンが流れた。

伝わるプロレス愛

現実社会によくいますよね、会社批判をする男性。現状に満足していない気持ちの表れなのでしょうが、多くの女性は、男性の愚痴を聞くのが大嫌い。不満があるからといって、安易に会社批判をするような男性には、魅力を感じがたいのが正直なところ。

プロレスの低迷期は、悪いスパイラルに陥り、苦しい状況が続きました。会社批判をするレスラーもいました。打開策が見いだせない苦しい状況にあったことは事実ですが、それではファンの心が離れていくのも当然でしょう。

社会全体に閉塞感が蔓延している状況にあって、非日常を見せてくれるはずのレスラーが、日常の延長ともいえるネガティブな発言をしているのですから。でも、現在新日本プロレスのトップを張っている選手のほとんどは、低迷期に「何とか新日本プロレスを良くしよう」「何とかプロレス界全体を良くしよう」と頑張ってきた人たち。

プロレスラーは「俺が1番だ」「俺がチャンピオンだ」と、自己主張をしているように見えますが、決して自分のためにだけ闘っているのではありません。「俺がチャンピオンになって、プロレス界をもっとおもしろく、もっと盛り上げてやる」

それぞれの自己主張の先には純粋なプロレス愛と、現状に満足しない向上心があります。
純粋な思いと向上心を持った男性は、女性にとって、とても魅力的な存在。プロレスでは、闘いの中でその思いが垣間見えるのです。これが、女性の心をグッと掴んでいる大きな理由なのではないでしょうか。

出典Amazon.co.jp

著書の中で棚橋選手はこう述べている。「あのころ必要だったのは、第三者的な批判ではなくて「会社をこう変えていくんだ! 」という前向きなメッセージだったはずだ。

僕は根性でここまでやってきた。中邑も、真壁さんも、ずっと新日本プロレスで頑張ってきたレスラーはみんな「何が何でも新日本をよくしていくんだ」という強い思いを持っていた。」

「プロレス女子」という言葉が死語となる時代を目指して

いかがでしたか?プロレスの魅力が伝わったでしょうか?ところで。「プロレス男子」という言葉は耳にしません。それは、男性のプロレスファンが普通だと、世間一般に思われているからでしょう。

逆に、「プロレス女子」という言葉があるのは、その存在が珍しいものと、世間一般に思われているからですね。しかし、プロレスファン同士で「プロレス女子」という言葉はほとんど使いません。それだけ、女性のプロレスファンはさほど珍しい存在ではなかったのです。

これから、さらにプロレスファンが増え、女性ファンの絶対数が増えていけば、それが当たり前の存在になり、「プロレス女子」という言葉は死語になっていくでしょう。

しかし、プロレス界全体を考えれば、むしろその方がいいはずです。プロレスが今以上に発展するためには、「プロレスファン」というパイをどう切り分けるかに苦心するのではなく、パイ自体を大きくするべきなのですから。

今回この記事を読み、ちょっと興味は出たけれど、まだまだハードルが高いなあ、と気後れしてしまう女子のみなさん、ご安心を!初心者向けのサイトもあるんです!

さあ、あなたも、試合会場にぜひ足を運んで見てください。選手たちが繰り広げる熱いドラマがそこにあります!

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日本古典文学の研究をしながら、高校の非常勤講師(国語)の仕事をしています。
趣味は読書(年間100冊読むのが目標!)と、プロレス観戦。
アメブロでは、古典文学研究と現代文の授業の話、大ファンの新日本プロレス棚橋弘至選手のことを書いています。
http://ameblo.jp/morohi/

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